エスプールは好業績評価して8月高値試す、16年11月期業績予想を増額修正

 エスプール<2471>(JQ)は人材サービス事業を展開している。9月27日、16年11月期通期連結業績予想の増額修正を発表した。コールセンター業務などの好調に加えて、電力スマートメーター設置業務の売上総利益率改善などが寄与する。そして17年11月期も収益拡大基調が期待される。株価は自律調整一巡感を強めている。好業績を評価して8月の年初来高値を試す展開だろう。なお10月4日に第3四半期累計の業績発表を予定している。

■ロジスティクス、障がい者雇用支援、コールセンターなど人材サービス事業

 ビジネスソリューション事業(ロジスティクスアウトソーシング、障がい者雇用支援・就労移行支援サービス、フィールドマーケティングサービス、マーチャンダイジングサービス、販売促進支援業務、顧問派遣サービス)、および人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、携帯電話販売員派遣、ストアスタッフ派遣)を展開している。

 15年11月期のセグメント別(連結調整前)売上高構成比はビジネスソリューション事業41%、人材ソリューション事業59%、営業利益構成比はビジネスソリューション事業31%、人材ソリューション事業69%だった。

 成長分野への集中投資で事業拡大を図るとともに、低採算案件の見直しなど低収益事業の改善にも取り組んでいる。継続的な収益の確保が期待できるストック型サービスの構成比を高めることで収益構造の抜本的な改善を推進する方針だ。

■ロジスティクス分野は低採算案件見直しで収益改善推進

 ロジスティクスアウトソーシングサービスは、子会社エスプールロジスティクスがECサイト出店企業などの物流センター運営・発送代行サービスを展開している。

 ネット通販市場の拡大やインバウンド需要の増加を背景として物流センターの需要は高水準だが、物流センター運営代行業務では低採算案件の取引見直しを進めている。当面の売上高は減少するが、高単価の健康食品・化粧品などへの取扱品目シフトや業務効率化などで収益改善を推進する。

■障がい者雇用支援サービスは事業規模拡大目指す

 障がい者雇用支援サービスは、障がい者雇用促進法に基づいて大企業の障がい者雇用をサポートしている。子会社エスプールプラスが運営する企業向け貸し農園「わーくはぴねす農園」の栽培設備販売収入と農園運営管理収入を収益柱としている。

 高付加価値サービスとして千葉県中心に事業規模拡大を目指し、早期の全国展開も視野に入れて行政との連携強化に取り組んでいる。

■電力会社スマートメーター関連業務を拡大

 フィールドマーケティングサービスでは、子会社エスプールエンジニアリングが電力分野のスマートメーター関連業務を拡大している。

 15年5月にエスプールエンジニアリングが東京電力<9501>からスマートメーター設置業務を受注した。東京電力は20年度までに約2700万台のスマートメーター設置を予定しており、このうち約540万台分の入札で約24億円分の業務(工事履行期間15年7月1日~17年3月20日)を受注した。実績を積み上げて全国各地域での受注を目指す。

■グループのセールスサポート関連を集約

 14年11月には販売促進支援業務に特化した子会社エスプールセールスサポートを設立した。マーチャンダイジング業務、クレジットカードなどの会員獲得業務、販売イベントブースの運営業務などの販売促進支援業務を集約(ビジネスソリューション事業)し、事業拡大と収益性向上を目指す。

■人材ソリューション事業はコールセンター業務向け人材派遣が主力

 人材ソリューション事業は子会社エスプールヒューマンソリューションズが展開し、コールセンター業務や携帯電話販売業務向け人材派遣を主力としている。16年4月にはエスプールヒューマンソリューションズが、優良派遣事業者認証委員会が指定した審査認定機関より「優良派遣事業者」として認定された。15年6月にはフルキャストホールディングス<4848>と業務提携した。

 新規事業として15年12月、小売・飲食・サービス業などアルバイトを多く採用する企業を対象に求人応募受付代行サービス「Omusubi」を開始した。16年11月期上期28社受注し、通期80社の受注を目指している。16年6月には業務拡大に合わせて北海道北見市の自社コールセンターを拡張すると発表した。

■売上総利益率上昇傾向

 15年11月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期16億61百万円、第2四半期17億77百万円、第3四半期18億円、第4四半期20億29百万円、営業利益は22百万円の赤字、53百万円、90百万円の赤字、1億18百万円だった。

 15年11月期は電力スマートメーター設置業務関連費用先行などで14年11月期比大幅減益、最終赤字だったが、売上総利益率は25.3%で同0.5ポイント上昇した。販管費比率は24.5%で同2.8ポイント上昇した。ROEはマイナス9.7%で同44.9ポイント低下、自己資本比率は24.7%で同10.4ポイント低下した。配当は14年11月期と同額の年間10円(期末一括)だった。配当の基本方針は、中長期的な企業価値の向上と継続的・安定的な配当の両立を目指し、連結ベースでの株主資本配当率(DOE)5%を目安としている。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は売上高が同10.9%増の30億円で営業利益が同41.7%減の1億63百万円だった。スマートメーター設置業務は営業利益2億63百万円押し下げ要因だった。人材ソリューション事業は売上高が同8.1%増の43億02百万円で営業利益が同16.3%増の3億60百万円だった。コールセンター業務向け人材派遣(前々期比45.4%増収)が好調だった。

■16年11月期第2四半期累計は計画超の大幅増益

 今期(16年11月期)第2四半期累計(12~5月)の連結業績は、前年同期比25.0%増収、7.8倍営業増益、8.8倍経常増益で、純利益は黒字化した。期初計画に対して売上高が3億76百万円、営業利益が1億86百万円、経常利益が1億85百万円、純利益が1億65百万円上回る大幅増収増益だった。売上高、利益とも第2四半期累計として過去最高だった。

 売上面では、人材ソリューション事業におけるグループ型派遣の推進によって、主力のコールセンター業務と店頭支援業務が好調に推移した。利益面では、人材ソリューション事業の増収効果に加えて、高付加価値化、生産性改善、業務効率化などでビジネスソリューション事業の営業損益が大幅に改善した。

 売上総利益は同51.8%増加し、売上総利益率は29.2%で同5.1ポイント上昇した。販管費は同26.7%増加し、販管費比率は23.5%で同0.4ポイント上昇した。なお期初計画との比較では売上総利益率は5.0ポイント上回り、販管費比率は2.5ポイント下回った。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は売上高が同17.8%増の16億52百万円で、営業利益が同3.2倍の2億80百万円だった。ロジスティクスアウトソーシングは低採算案件見直しで減収だが、障がい者雇用支援サービスが好調に推移し、スマートメーター設置業務は第2四半期に単月黒字化した。人材ソリューション事業は売上高が同29.9%増の26億69百万円で、営業利益が同55.5%増の2億51百万円だった。コールセンター業務ではグループ型派遣が拡大し、店頭販売支援業務も家電販売領域に業務を拡大した。好採算案件へのシフトも寄与した。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期20億38百万円、第2四半期22億60百万円、営業利益は1百万円、2億46百万円だった。

■16年11月期通期連結業績予想を増額修正

 今期(16年11月期)通期の連結業績予想については、9月27日に増額修正を発表した。前回予想(1月13日公表)に対して、売上高が9億26百万円増額して前期(15年11月期)比25.9%増の91億46百万円、営業利益が2億15百万円増額して同8.2倍の4億86百万円、経常利益が2億15百万円増額して同9.7倍の4億74百万円、純利益が1億98百万円増額して3億82百万円の黒字(前期は68百万円の赤字)とした。

 売上面では人材ソリューション事業において、グループ型派遣の強化などで主力のコールセンター業務と店頭支援業務が好調に推移している。利益面では増収効果に加えて、ビジネスソリューション事業の障がい者雇用支援サービスにおいて相対的に収益率の高い農園設備販売が計画超だったことや、スマートメーター設置業務において生産性向上や臨時業務受託で売上総利益率が大幅改善した。売上高・利益とも過去最高更新予想だ。

 なお配当予想は据え置いて前期と同額の年間10円(期末一括)としている。配当性向は7.9%となる。配当増額の可能性もありそうだ。

 ビジネスソリューション事業のロジスティクスアウトソーシングは低採算の物流センター運営代行業務を縮小するため減収だが、低採算案件減少や業務効率化で売上総利益率が改善する。障がい者雇用支援サービスは、愛知県豊明市からの誘致で今期中の開設を目指し、全国展開を本格スタートする。スマートメーター設置業務は来年度の継続受注を目指す。16年10月予定の社会保険適用拡大などのコストアップ要因もあるが、売上総利益率改善傾向で来期(17年11月期)も収益拡大基調が期待される。

■中期経営計画で「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」目指す

 15年1月策定の新中期経営計画「Next2020-変化への挑戦」では、中期ビジョンとして「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」を掲げている。社会貢献性が高い分野、景気変化に強い分野、参入障壁が高い分野でバランスの取れたポートフォリオ経営を推進し、ストック型ビジネスの強化、低収益事業の改善、新たな収益柱の構築を目指す方針だ。

 経営目標値は、営業利益率5%の早期達成と20年度までに業界最高水準10%の達成、安定的かつ継続的な配当の実施、ROE最低5%堅持としている。人材確保が課題だが、アウトソーシング需要は高水準であり、高付加価値サービスが牽引して中期的に収益拡大基調が期待される。

■株価は自律調整一巡して上値試す

 株価の動きを見ると、8月17日の年初来高値1594円から利益確定売りで一旦反落したが、8月22日の直近安値1145円から下値を切り上げている。自律調整が一巡したようだ。

 9月27日の終値1350円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS127円20銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は0.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS218円74銭で算出)は6.2倍近辺である。時価総額は約41億円である。

 週足チャートで見ると、13週移動平均線がサポートラインとなって上昇トレンドの形だ。好業績を評価して上値を試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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