インソースはITを活用した研修サービスに強み、事業環境も良好で収益拡大基調

 インソース<6200>(東マ)は社会人向け研修サービスの大手である。ITを活用した研修サービスを特徴・強みとして高利益率を達成している。16年9月期は想定を上回る増収増益予想である。良好な事業環境も背景として中期的に収益拡大基調が期待される。株価は16年7月IPO後の目先的な売りが一巡して戻り歩調だろう。なお11月11日に16年9月期決算発表を予定している。

■社会人向け研修・教育サービスを展開

 社会人(企業・官公庁・自治体の社員・職員など)向け研修・教育サービスを展開している。02年11月社会人教育ベンチャーとして設立、03年1月事業開始、16年7月東証マザーズに新規上場した。

 研修事業は講師派遣型研修(企業内研修)と公開講座を主力として、研修一括受託、ダイバーシティ・グローバル推進支援などのサービスも提供している。その他事業では、システム販売のITサービス事業(HRテック)、eラーニング・映像制作のインナープロモーション事業、就労移行支援の福祉事業、各種コンサルティングサービス(人事評価制度構築、人財育成体系構築、CS調査など)などを展開している。

 15年9月期の売上高構成比は研修事業96%(講師派遣型研修76%、公開講座20%)、その他事業4%だった。また03年6月~16年3月累計の総取引社数は1万5323社に達している。

■ITを活用した自社開発の多様な研修コンテンツなどが特徴・強み

 100万件を超える働く人の悩みを蓄積したデータベースを基に、16年5月末時点で講師派遣型研修1600種類以上、公開講座991種類の研修コンテンツを自社開発し、階層別研修、年代別研修、部門別研修、業界業種別研修、スキル・テーマ別(グローバル化対応、メンタルヘルス対策、ダイバーシティ推進など)研修、さらに外国人向け研修など、多様な研修ニーズに対応した研修コンテンツを特徴・強みとしている。なお16年8月にはシニア世代向けストレスマネジメントなど15本、9月には高ストレス社会における相談力向上や復職者の迎え方など21本の新作研修をリリースしている。

 講師派遣型研修は、顧客の課題に応えるオーダーメード型研修である。1600種類以上の自社開発研修コンテンツを顧客専用にカスタマイズして提供し、個別指導(15名以上が基本)から最大数千名の集合研修まで対応できる運営ノウハウを有している。公開講座は、1名から受講できるオープンセミナー型研修である。全国各地で年間3110回(15年4月~16年3月実績)開催しているため、991種類以上の研修ラインナップの中から受講者にとって興味のある研修を、都合の良い日程・手軽な価格でピンポイントに受講できる。

 15年4月~16年3月の実績で、年間研修実施回数は1万2964回(講師派遣型研修が9854回、公開講座が3110回)、合計受講者数は約33.4万人(講師派遣型研修が約30.7万人、公開講座が約2.6万人)となった。また10月6日には、16年9月度(速報値)の講師派遣型研修実施回数が前年比27.5%増の1028回、公開講座受講者数が同48.0%増の3342人になったと発表している。

 研修サービスのクオリティの高さも特徴・強みとしている。受講者の悩みに応える内容の研修を、実戦経験豊富で鍛え抜かれた講師が登壇して運営する。15年4月~16年3月集計の受講者アンケートでは、内容評価で「大変理解できた」「理解できた」合計94.7%、講師評価で「大変良かった」「良かった」合計94.0%に達している。

 ITサービス事業の人事サポートシステム「Leaf」は、研修担当者が研修業務を一元的に管理でき、プライバシーに配慮したストレスチェックが唯一できるシステム(特許出願中)である。14年4月販売開始後の利用社数210社・利用人数6万人(16年5月末時点)に達している。なお10月7日には「Leaf」を利用した16年9月度(速報値)のストレスチェック運用代行サービス導入取引先数が13社、受注金額が16百万円、16年9月期の合計導入取引先数が39社、受注金額が33百万円になったと発表している。

 インナープロモーション事業は子会社ミテモが展開している。定額制eラーニングシステム「STUDIO」は教育や理念などの社内浸透を支援するもので、利用者数は0.5万人(16年5月末時点)である。映像制作先実績は180社以上(16年5月末時点)である。福祉事業は障がい者の就労支援を目的として15年2月、就労移行支援事業所「Bizstage」を開設した。

 12年1月大幅リニューアルした「WEBinsource」は、公開講座への申込、提携する各社の研修申込や書籍購入などがネット上で簡単に利用できる研修担当者向けWEBサービスである。人事サポートシステム「Leaf」と連携させることによって従業員一人ひとりの人材育成管理が行えるなど、ITを活用した人材活用促進(HRテックの推進)の基盤となるシステムである。社員教育インフラとして導入顧客先が増加基調であり、公開講座受講者数の大幅伸長にも繋がっている。10月12日には16年9月度(速報値)の「WEBinsource」新規登録先数が前年比76.3%増の97社、そして累計登録先数が15年9月末に比べて1252社増加の3312社になったと発表している。

 なお16年8月には、43ヶ国の語学講師を派遣する国際ビジネスサポートと業務提携、アドベンチャー教育の普及に取り組んでいる学校法人玉川学園と業務提携している。

■ITを活用したサービスで高利益率

 ITを活用した研修コンテンツや人事サポートシステムの自社開発、登壇業務に特化した講師の採用、WEB活用による問い合わせ対応主体の営業活動、営業活動から研修実施までのプロセス管理など、研修に関わる業務の分業化を図っている。このため1研修あたりの原価率が低減し、多様な研修ニーズへの対応や廉価な研修サービスの提供を可能としている。さらに収益性の高いコンテンツ開発やナレッジ蓄積・活用でも収益を上げるビジネスモデルだ。

 営業面では顧客自動創出ソリューション「Plants」によって営業効率を高めている。WEB上で詳細なカリキュラム・受講者評価を比較検討可能にして、Google検索「研修+キーワード」で1位に表示される研修紹介ページが174ページ(当社調べ、16年5月末時点)に達している。そして新規取引件数の約5割がWEB経由となり、公開講座はWEBからの申込が中心である。

 このようにITを積極活用し、豊富なノウハウに基づいて多様な研修ニーズに応える研修サービスが特徴・強みであり、ITサービスと組み合わせた事業展開によって、15年9月期の売上高営業利益率16.5%と、競合他社との比較で高い利益率を達成している。15年9月期の連結業績は売上高24億23百万円、営業利益4億円、経常利益3億98百万円、純利益2億38百万円だった。

 なお収益変動の季節要因として、新入社員研修が集中する4~6月にあたる第3四半期(4~6月)の構成比が高いという特性がある。

■16年9月期は想定超の増収増益予想

 前期(16年9月期)第3四半期累計(10~6月)連結業績は売上高が20億97百万円、営業利益が3億59百万円、経常利益が3億57百万円、純利益が2億24百万円だった。

 そして通期連結業績予想は8月19日に増額修正して、売上高が前々期(15年9月期)比20.9%増の29億30百万円、営業利益が同15.0%増の4億60百万円、経常利益が同14.8%増の4億57百万円、純利益が同17.7%増の2億80百万円としている。研修事業における民間企業向け講師派遣型研修および公開講座の受注件数が想定以上に伸長している。

 配当予想も8月19日に増額修正して同1円50銭増配の年間5円50銭(期末一括)としている。予想配当性向は15.1%となる。利益配分については、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としている。

■研修・教育サービスは成長産業、17年9月期以降も収益拡大基調

 日本では、労働力人口減少を補うための多様な人材の活躍推進、国際競争力回復のための労働生産性の向上が課題とされ、政府もアベノミクス成長戦略で「1億総活躍社会」の実現を掲げている。こうした事業環境を背景として、社会人向け研修・教育サービスは成長産業と考えられる。

 中期成長戦略として、営業人員の増強、成長分野研修コンテンツの拡大、新サービスの開発、デジタルマーケティングの強化、公開講座常設セミナールームの拡充などを推進する。さらに市場開拓余地の大きい教育(学校、保育園)や医療・福祉(病院・介護施設)といった業界の開拓にも注力する方針だ。

 企業の人財育成意欲は一時的な景気変動に左右され難く、むしろ企業の競争力強化や成長に向けて、社員のスキルアップや戦略的キャリア育成の重要性が一段と高まっている。このため企業・官公庁・自治体の研修需要は高水準で推移することが予想され、事業環境は中期的に良好である。自社開発研修コンテンツなどの強みを発揮して、今期(17年9月期)以降も収益拡大基調だろう。

■株価はIPO後の目先的な売りが一巡して戻り歩調

 株価の動きを見ると、16年7月IPO直後の高値1092円から反落したが、9月の安値圏650円近辺から切り返しの動きを強めている。10月6日には810円まで上伸する場面があった。

 10月12日の終値751円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS36円56銭で算出)は20~21倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間5円50銭で算出)は0.7%近辺、時価総額は約62億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を突破し、さらに25日移動平均線が上向きに転じた。IPO後の目先的な売りが一巡して戻り歩調の展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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