ベステラはプラント解体に特化したオンリーワン企業、立会外分売で東証1部への市場変更期待

 ベステラ<1433>(東マ)はプラント解体に特化したオンリーワン企業である。次世代プラント解体工法「3D解体」実現に向けたロボット開発を推進し、パーフェクト3Dの地域・観光用途への応用も実証している。10月3日発表の株式立会外分売に対して東証1部への市場変更期待が高まり、株価はモミ合い上放れの動きを強めている。17年1月期増益予想や株主優待制度導入も評価して5月の年初来高値を目指す展開だろう。

■鋼構造プラント設備解体のオンリーワン企業

 製鉄所・発電所・ガスホルダー・石油精製設備など鋼構造プラント設備の解体工事に特化したオンリーワン企業である。

 製鉄・電力・ガス・石油・石油化学業界(製鉄所・発電所・石油精製・石油化学設備など)向けを主力とするプラント解体工事、および特定化学物質・アスベスト・ダイオキシン・土壌汚染などの環境関連対策工事を展開している。実際の解体工事は外注先が行い、当社は施工管理を行う。主要顧客はJFEグループ、新日鐵住金グループ、戸田建設、東京エネシス、IHIグループなどである。

 関連事業として建設技能労働者不足に対応した人材派遣・紹介・育成サービス、プラント解体事業における事前調査等の強化を目的とした3D計測・データサービスも展開している。16年1月期事業別売上高構成比はプラント解体事業98%、その他(人材サービス含む)2%だった。

 大手企業のエンジニアリング子会社を中心とした優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的な解体マネジメント、解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有(特許取得14件、特許申請中5件)を強みとしている。04年球形ガスホルダー解体「リンゴ皮むき工法」の特許を取得、07年火力発電所等の「ボイラ解体方法」の特許を取得、10年遠隔操作による溶断ロボット「りんご☆スター」を開発した。

■プラント解体需要は中期的に増加予想

 17年1月期~19年1月期の「中期経営計画2018」では、環境ソリューション、3D計測、HRソリューション(人材サービス)などを含めたプラント解体周辺分野へのサービスも拡大して、プラント解体トータルマネジメントを強化する方針を打ち出している。そして経営目標数値には売上高70億円以上、営業利益6.5億円以上、ROE17%以上の早期達成を掲げている。

 企業の事業再編や設備集約、さらに産業競争力強化法やエネルギー供給構造高度化法など余剰設備の再編に向けた国の政策も背景として、1960年代の高度成長期に建造されたプラントの老朽化に伴う解体工事が増加すると予想されている。また国土交通省が43年ぶりに許可業種区分を見直し、専門業種として「解体工事」を新設(16年6月から3ヶ年で順次移行)した。1件5百万円以上の解体工事を実施する場合は許可取得が必要になる。

 こうした設備解体需要や制度見直しに対応した重点戦略として、専門性の高い技術を提供していくとともに、工法(プラント解体戦略)の充実、事業領域3本柱(工事・3D・人材)の確立、パーフェクト3Dおよび3D解体、プラント3Dマスターを中核とした新しい社会価値の創出、内部管理体制の拡充と機能向上、人材の確保と育成などを推進する。

■次世代解体工法「3D解体」実現に向けてロボット開発を推進

 ロボット工法については、遠隔操作による溶断ロボット「りんご☆スター」を開発して工事実績を積み上げ、新アタッチメント開発による用途拡大を進めている。また東京工業大学との産学連携による群移動体型ロボット「群龍」や、京都大学および山口大学との共同研究による監視ロボットを開発している。さらに次世代プラント解体工法「3D解体」実現に向けたロボット開発を推進する。

 16年6月には京都大学、山口大学、特定非営利活動法人国際レスキューシステム研究機構と、それぞれ「点群3D Map利用ロボット開発」を研究題目とした共同研究契約を締結した。IOTを活用し、自律作業ロボットによる自動運転(プラント監視・管理)および自動施工の実現を目指す。なお今回契約期間は17年3月31日までだが、開発全体は3ヶ年を予定している。

 また16年6月、トヨタ自動車の子会社である朝日航洋と共同で、東京スカイツリーから墨田区役所周辺区域における大規模エリア(計測面積74万1522平方メートル)の3次元点群データ化を実現した。今回の成果により、大規模プラントへのサービス提供に加えて、地域・観光用途においてもパーフェクト3Dの提供が可能であることが実証された。

■第1・第4四半期の構成比が高く、完成工事によって四半期業績が変動

 完成工事高の四半期別の推移を見ると、15年1月期は第1四半期6億64百万円、第2四半期2億49百万円、第3四半期6億32百万円、第4四半期14億56百万円、16年1月期は12億69百万円、5億64百万円、5億47百万円、13億99百万円だった。

 顧客の設備投資計画に応じた季節性があり、第1四半期と第4四半期の構成比が高い収益構造である。また工事完成時期や完成工事利益率によって、四半期業績が大きく変動する可能性がある。収益認識は工事進行基準と工事完成基準があり、工事進行基準の適用要件は請負金額50百万円以上、工事期間3ヶ月超、スクラップ等の有価物売却予想額が請負金額の10%以下としている。当社がスクラップ等の有価物(売却予想額1百万円超)を引き取る契約の解体工事については、工事の収益が最終のスクラップ売却時まで確定しないため、請負金額や工事期間にかかわらず工事完成基準を採用している。

 16年1月期の受注工事高は15年1月期比82.3%増の55億00百万円、完成工事高は同25.9%増の37億80百万円で、繰越工事高は同2.0倍の33億62百万円だった。また売上総利益率は22.6%で同0.8ポイント低下(完成工事総利益率が22.3%で同1.1ポイント低下、兼業事業総利益率が35.5%で同12.1ポイント上昇)した。販管費比率は10.9%で同0.1ポイント上昇した。ROEは18.4%で同3.5ポイント低下、自己資本比率は63.6%で同18.3ポイント上昇した。配当は年間90円(期末一括、普通配当70円+上場記念配当20円)で配当性向は35.0%だった。利益還元は配当性向40%を目安としている。

■17年1月期第2四半期累計は先行投資負担で減益

 今期(17年1月期)第2四半期累計(2~7月)の非連結業績は、売上高が前年同期比2.0%増の19億06百万円、営業利益が同13.3%減の2億31百万円、経常利益が同18.3%減の2億33百万円、そして純利益が同16.1%減の1億53百万円だった。

 工事完成が堅調に推移して増収だが、人材採用、広告宣伝、3D設備投資など先行投資負担で減益だった。受注高は同57.6%減の14億03百万円、完成工事高は同2.0%増の18億71百万円、受注残高は同7.2%減の28億94百万円となった。前年同期の長期大型工事(受注額22億20百万円)の反動で受注高が減少したが、今期は多くの案件に分散して受注している。兼業事業売上高は同3.3%増の35百万円だった。

 売上総利益は同3.0%増加し、売上総利益率は23.9%で同0.2ポイント上昇(完成工事総利益率が23.5%で同0.1ポイント上昇、兼業事業総利益率が45.5%で同5.5ポイント上昇)した。販管費は同27.8%増加し、販管費比率は11.0%で同1.6ポイント上昇した。営業外収益では前期計上の補助金収入20百万円が一巡、営業外費用では前期計上の株式公開費用4百万円が一巡した。

 なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期8億95百万円、第2四半期10億11百万円、営業利益は90百万円、1億41百万円だった。

■17年1月期通期は増収増益予想、繰越工事高が高水準

 今期(17年1月期)通期の非連結業績予想(3月16日公表)は売上高が前期(16年1月期)比22.2%増の47億円、営業利益が同8.4%増の4億85百万円、経常利益が同5.1%増の4億88百万円、純利益が同7.0%増の3億13百万円としている。

 事業拡大に伴う人員増や、3D計測事業への研究開発費などで販管費が増加するが、高水準の受注高および繰越工事高を背景に増収増益予想である。四半期業績は工事完成基準を採用している工事の完成時期によって大きく変動するが、通期ベースで増収増益基調に変化はないだろう。

 なお配当予想は年間40円(第2四半期末10円、期末30円)で予想配当性向は35.0%である。16年2月1日付の株式2分割を考慮して、前期の年間90円(普通配当70円+上場記念配当20円)を年間45円(普通配当35円+上場記念配当10円)に換算すると、合計では実質的に5円減配となるが、普通配当ベースでは5円増配となる。

■株主優待制度を導入

 9月9日に株主優待制度の導入を発表した。毎年1月31日現在で100株(1単元)以上保有株主に対してクオカード2000円分を贈呈する。17年1月期末から開始する。

■株価は立会外分売を好感してモミ合い上放れ

 なお10月3日に株式立会外分売を発表した。分売予定株式数は6万株、分売予定期間は10月21日~10月27日としている。東証1部への市場変更における形式要件の充足のために、株式の流動性向上、株主数の増加、株式分布状況の改善を図るとしている。

 株価の動きを見ると、3000円台前半でモミ合う展開だったが、10月3日発表の株式立会外分売に対して東証1部への市場変更期待が高まり、モミ合い上放れの動きを強めている。10月13日には3785円まで上伸した。

 10月14日の終値3715円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS114円17銭で算出)は32~33倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間40円で算出)は1.1%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS751円40銭で算出)は4.9倍近辺である。時価総額は約102億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線が上向きに転じた。また週足チャートで見ると26週移動平均線を突破した。そして13週移動平均線が上向きに転じた。モミ合い上放れて5月の年初来高値4860円を目指す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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