ティー・ワイ・オーは調整一巡して底放れの動き、AOI.Proと17年1月経営統合

 ティー・ワイ・オー<4358>(東1)はTV-CM制作の大手である。16年7月期は低利益案件の影響などで減益予想だったが、受注は拡大基調である。AOI.Pro<9607>と経営統合して、共同持株会社AOI TYO Holdingsが17年1月4日上場予定である。株価は調整一巡して底放れの動きを強めている。反発展開が期待される。

■TV-CM制作の大手

 TV-CM制作の大手である。広告事業(広告代理店向けTV-CM企画・制作およびポスト・プロダクション業務、広告主向けWEB広告およびプロモーションメディア広告の企画・制作、クロスメディア広告業務)を主力として、映像関連事業(アニメーションおよびミュージックビデオなどの企画・制作)も展開している。

 9月29日には第57回クリオ賞(CLIO Awards 2016)で、当社が制作に携わった広告がSilver賞を受賞したと発表している。

 また16年6月には新規事業としてPR事業を開始(16年10月予定)すると発表している。広報コンサルティング関連業務、メディアリレーションズ関連業務、危機管理広報関連業務、ステークホルダー向け業務などのPR業務を事業化し、広告・広報全般のコミュニケーション領域をワンストップで包括提供する。休眠中だった子会社リン・フィルムズの商号をTYOパブリック・リレーションズ(TYO PR)に変更して展開する。中期的に売上高30億円、営業利益3億円程度を目指す。

■戦略的M&Aを積極推進

 中期成長戦略として、ブランディングやセールスプロモーションなどの分野を中心に、一定規模以上の企業を対象として戦略的M&Aを積極推進する方針を打ち出している。民事再生中のスカイマークに対しては、投融資は行わないが、ブランド再生に関する業務支援を行う。

 15年3月海外事業統括管理会社としてシンガポールにTYO-ASIA設立、15年7月インドネシアの広告会社The First Editionの代表Uli氏と合弁会社TYO FIRST EDITION(TYO-FE)設立、15年8月ケー・アンド・エル(K&L社)の第三者割当増資を引き受けて連結子会社化、15年9月三浦武彦氏を代表とする100%子会社ミウラ・アンド・カンパニーを設立、15年11月サニーサイドアップのスピンオフベンチャー企業ENGAWA社(えんがわ社)の第三者割当増資を引き受け、15年12月K&L社がシンガポールに子会社K&L CREATIVE ASIAを設立、16年7月タイの有力デジタル・クリエイティブ・エージェンシーであるラビッツ・テール社の増資を引き受けた。

 10月19日には、インタラクティブコンテンツやスマートフォンアプリの企画制作部門のID事業部と、WEB広告制作を手掛けるグループ会社のコムが統合し、11月1日からデジタル・クロダクション「TYOデジタル・ワークス」として始動すると発表した。

■AOI.Proと経営統合、共同持株会社17年1月4日上場予定

 7月11日にAOI.Pro<9607>との経営統合(株式移転による共同持株会社設立)に関する基本合意書締結を発表、7月29日に統合契約書締結と株式移転計画書を発表した。株式移転比率はTYO1株に対して共同持株会社0.18株、AOI.Pro1株に対して共同持株会社1株を割り当て交付する。

 株式移転スケジュールは16年9月27日株式移転計画承認臨時株主総会、16年12月28日(予定)東京証券取引所上場廃止、17年1月4日(予定)共同持株会社AOI TYO Holdings設立および東証1部上場としている。持株会社新設に伴って当社の決算期を変更し、第36期は16年8月~12月の5ヶ月決算とする。

 経営統合によって、業界をリードする新たなグループ企業として先進的なビジネスモデルを構築するとともに、アジアNO.1の映像を主とする広告関連サービス企業を目指す。統合効果として動画広告映像制作事業の強化、戦略的事業領域の推進、海外領域の加速化を掲げている。

 両社のコア事業である動画広告映像制作事業については、従来のブランドを活用しつつ、効率化と新技術の共同開発に取り組む。両社が独自に強化する戦略的事業領域については、当社の広告主直接取引とAOI.Proの動画コンテンツマーケティング事業とのシナジー効果を高める。海外領域については、両社の海外展開に機能重複がないため、アジアでの両社拠点の相互活用などで両社のアジア戦略を加速する。

■案件ごとの採算性が影響、受注は拡大基調で規模も拡大

 15年7月期の四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期52億99百万円、第2四半期72億97百万円、第3四半期69億11百万円、第4四半期88億86百万円、営業利益は3億38百万円、3億83百万円、6億65百万円、4億98百万円だった。

 案件ごとの採算性が影響する収益構造である。受注は電気・情報通信、自動車、飲料、衣料などの分野を中心として拡大基調である。また広告主直接取引の受注が大幅増加して、案件規模も拡大しているようだ。

 15年7月期の売上総利益率は17.5%で14年7月期比0.2ポイント低下した。販管費比率は10.9%で同0.3ポイント低下した。ROEは21.6%で同8.3ポイント上昇、自己資本比率は38.2%で同0.8ポイント上昇した。配当性向は27.8%だった。

■16年7月期は低利益案件の影響などで減益だが、受注は拡大基調

 前期(16年7月期)連結業績は、売上高が前々期(15年7月期)比5.3%増の298億98百万円、営業利益が同22.3%減の14億64百万円、経常利益が同28.3%減の12億96百万円、純利益が同53.9%減の5億16百万円だった。売上高、利益とも計画をやや下回って着地した。第1四半期に発生した低利益案件の影響、M&A関連費用、新規連結子会社費用、連結子会社の業績不振、役員退職慰労金制度廃止に伴う特別損失計上などで減益だったが、受注は拡大基調である。

 売上総利益は同1.9%増加したが、売上総利益率は16.9%で同0.6ポイント低下した。なお四半期別の売上総利益率は、低利益案件が影響した第1四半期が14.1%だったが、第2四半期は15.7%、第3四半期は17.2%、第4四半期は16.3%だった。販管費は同16.7%増加し、販管費比率は12.0%で同1.1ポイント上昇した。期末人員は同89人増加の891人となった。広告主直接取引部門の人員増強や新規連結などで大幅に増加した。

 営業外費用では為替差損75百万円を計上した。特別利益では前々期計上の受取保険金1億03百万円が一巡し、特別損失では減損損失62百万円、役員退職慰労金引当繰入額1億94百万円を計上した。ROEは9.2%で同12.4ポイント低下、自己資本比率は38.4%で同0.2ポイント上昇した。配当は前々期と同額の年間5円(期末一括)で配当性向は60.4%だった。

 セグメント別に見ると、広告事業は売上高が同6.3%増の286億02百万円、営業利益(連結調整前)が同5.9%減の33億01百万円だった。広告代理店経由取引の受注は電気・情報通信、飲料、車両・交通器具・工業機械、娯楽・エンターテインメント、衣料を中心に好調だった。広告主直接取引は新規連結子会社も寄与して増収だった。利益面では第1四半期の低利益案件が影響したが、第2四半期以降の売上総利益率は改善傾向である。

 取引形態別に見ると、広告代理店取引は売上高が同2.6%増の209億84百万円で営業利益が同3.8%増の34億68百万円だった。広告主直接取引は売上高が同18.2%増の76億17百万円で営業利益が同52.2%減の1億47百万円だった。利益面では、広告代理店取引は第1四半期の低利益案件の影響を第2四半期以降に挽回した。広告主直接取引はインドネシアにおける子会社の不振が影響した。主要顧客別売上高は電通グループ向けが同10.8%増の94億83百万円、博報堂グループ向けが同4.6%増の81億58百万円だった。

 映像関連事業は、売上高が同12.9%減の12億95百万円で、営業利益が同46.6%減の80百万円だった。アニメーション制作における一部案件の受注規模縮小に加えて、企業向け映像案件やライブ映像案件の受注が低調だった。利益面では前期の高利益率の大型ライブ映像案件の反動も影響した。なおアニメーション制作では低利益案件の作業が終了して利益改善傾向としている。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期54億54百万円、第2四半期83億37百万円、第3四半期76億53百万円、第4四半期84億54百万円、営業利益は92百万円の赤字、5億円、6億40百万円、4億16百万円だった。営業損益は低利益案件の発生が影響した第1四半期をボトムとして改善基調である。

■経営統合に伴って今期は16年8月~12月の5ヶ月決算、配当2円予定

 AOI.Proとの経営統合(17年1月4日共同持株会社AOI TYO Holdings設立・東証1部上場予定)に伴って当社の決算期を変更するため、今期は16年8月~12月の5ヶ月決算となる。連結業績予想は未公表だが、配当については5ヶ月分の期末配当2円を実施する予定だ。

 広告市場は拡大基調であり、国内TV-CM制作業界では当社を含む大手制作3社による寡占化傾向を強めている。国内景気回復や20年東京夏季五輪開催も追い風となるため、事業環境は中期的に良好だろう。AOI.Proとの経営統合も寄与して収益拡大が期待される。

■株価は調整一巡して底放れの動き、反発期待

 株価の動きを見ると、安値圏140円台でもみ合う展開だが、10月26日には149円まで上伸して底放れの動きを強めている。10月26日の終値149円を指標面で見ると、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS91円48銭で算出)は1.6倍近辺である。時価総額は約93億円である。

 日足チャートで見ると戻りを押さえていた25日移動平均線を突破した。また週足チャートで見ると13週移動平均線突破の動きを強めている。調整一巡して底放れの動きだ。反発展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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