【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本BS放送は上場来高値更新、収益力の高さや中期成長力を評価して上値追い

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 日本BS放送<9414>(東2)の株価は、安値圏850円~900円近辺でのモミ合い展開から、1月13日の上場来高値1132円まで一本調子に上伸した。その後は目先的な過熱感で上げ一服の形だが、大きく下押す動きは見られない。収益力の高さや中期的な成長力に対して、依然として評価不足の印象が強く、自律調整が一巡して上値追いの展開だろう。

 07年12月放送開始した全国無料のBSデジタルハイビジョン放送「BS11」チャンネルを運営するBSデジタル放送事業者である。企業理念として「心に響くBS11」を掲げて「ゆったり」見られる上質な教養・娯楽番組と「じっくり」掘り下げる報道・情報番組を発信することにより、視聴者に「価値ある時間」を提供することを経営方針としている。

 収益構造は、広告主に番組の放送時間枠を販売するタイム収入、広告主に番組と番組の間の時間枠を秒単位で販売するスポット収入を柱としている。前期(14年8月期)の売上構成比はタイム収入75%、スポット収入24%、その他1%である。また前期末の自己資本比率は91.6%で財務面の健全性も高い。

 地上波放送を主力とする競合他社との比較でみると、圧倒的に高い営業利益率を達成していることが特徴だ。地上波放送では在京キー局から全国系列局に電波を送信するためのネットワーク維持費がコスト面で大きな負担となるのに対して、BS放送では地上からアップリンクした電波を衛星から日本全国に送信するためネットワーク構築が不要という強みがある。このため損益分岐点を超えると利益率が一段と上昇する特徴があり、地上波放送とは異なるコスト構造によって低価格・高効率の広告ビジネスを実現している。

 民放BS放送は50代以上の高齢者が中心視聴者層のため、番組面ではテレビショッピング、韓国ドラマ、アニメ、競馬などの番組の比重が高いことを特徴としている。さらに「ゆったり・じっくり」見られる番組制作の基本方針を深化させ、レギュラー放送番組のラインナップ充実、報道番組や地方自治体と連携した特別番組など自社制作番組のラインナップ充実、BS初登場の韓国ドラマの放送、アニメやインドア系スポーツ番組の増枠なども推進している。

 収益拡大のキーワードは「広告単価×広告数」であり、中期戦略として質の高い自社制作番組による広告枠の付加価値向上、積極的な広報・IR活動によるチャンネル認知度の向上、新たな成長の柱となるコンテンツの育成を推進している。本社内にはイベントスペースや公開収録が可能なホールを増設する方針だ。無料BSデジタル放送事業者としての強みを発揮しながら、当面の経営目標値として売上高100億円、売上高営業利益率25%を掲げている。

 1月7日に発表した今期(15年8月期)第1四半期(9月~11月)の業績(非連結)は売上高が前年同期比15.4%増の21億21百万円、営業利益が同45.3%増の5億65百万円、経常利益が同40.4%増の5億58百万円で、純利益は繰越欠損金解消に伴う法人税等の増加で同1.4%減の3億57百万円だった。

 通販番組の単価上昇、アニメ番組の放送時間枠増加、高品質な自社制作番組による広告枠の付加価値向上などが寄与してタイム収入が同10.2%増収、スポット収入が同33.8%増収と好調に推移し、売上高、利益とも計画を上回った。売上総利益率は54.2%で同6.4ポイント上昇した。

 通期の業績(非連結)見通しは前回予想(10月8日公表)を据え置いて売上高が前期比11.8%増の88億円、営業利益が同8.7%増の18億40百万円、経常利益が同7.4%増の18億円、純利益が同11.3%減の11億円としている。

 純利益は繰越欠損金解消に伴って税負担が増加するため減益だが、広告媒体価値向上に伴って増収、営業増益、経常増益見込みだ。局認知度や番組接触率(調査方法などは異なるが地上波放送の視聴率に近い指標)の向上に伴って広告媒体価値が高まり、タイム収入、スポット収入とも好調に推移する。単価の上昇基調も寄与する。

 配当予想(10月8日公表)は前期比1円増配の年間13円50銭(期末一括)としている。前期は東証2部上場記念配当2円50銭を含んでいるため、普通配当ベースでは前期比3円50銭の増配となる。配当性向については当面の目標を30%として、業績を反映した利益還元を実施していく方針だ。

 通期見通しに対する第1四半期の進捗率は売上高が24.1%、営業利益が30.7%、経常利益が31.0%、純利益が32.5%と高水準である。今期の方針として局認知度や番組接触率の一段の向上、今後の成長に向けて柱となる高品質な自社番組制作を優先課題としているため、コスト面では番組制作費や広告宣伝費が増加し、調査方法機械化に伴って接触率調査費用も増加するとして通期見通しを据え置いているが、通販系スポットCMなどの引き合いが想定以上であり、売上総利益率も上昇基調だ。通期会社見通しは増額の可能性が高いだろう。

 中期的な事業環境も明るい。11年の地上波テレビ放送完全デジタル化を契機として、BSチューナー搭載テレビの累計出荷台数が1.3億台に達し、パラボラアンテナやケーブルTVを利用したBS放送視聴可能世帯も約4000万世帯(世帯普及率約70%)まで増加している。地上波放送の広告市場が成熟感を強めているのに対して、衛星メディアの広告市場は視聴可能世帯の増加に伴って年率11%成長となり、このうちBS放送に関しては年率15%程度で成長している。

 さらに15年のデジアナ変換終了や20年東京夏季五輪に向けて、BSデジタル放送視聴可能世帯はさらに増加することが予想される。番組面では20年東京夏季五輪に関して、地上波で放送しきれないため一部の種目をBSが放送する可能性も指摘されている。こうした状況を背景として、BS放送の広告媒体価値も一段と向上することが期待される。中期的に収益拡大基調だろう。

 株価の動き(14年8月1日付で株式2分割)を見ると、14年12月下旬に動意付き、安値圏850円~900円近辺でのモミ合い展開から、1月13日の上場来高値1132円までほぼ一本調子に上伸した。その後は目先的な過熱感を強めて上げ一服の形だが、大きく下押す動きは見られない。自律調整の範囲だろう。

 1月27日の終値1057円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS61円79銭で算出)は17~18倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円50銭円で算出)は1.3%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS679円29銭で算出)は1.6倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を突破して上伸し、13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いた。強基調を確認した形だ。また日足チャートで見ると25日移動平均線が接近して目先的な過熱感が解消した。収益力の高さや中期的な成長力に対して、依然として評価不足の印象が強く、自律調整が一巡して上値追いの展開だろう。

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