【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アールテック・ウエノは調整一巡、中期成長力を評価してモミ合い上放れ

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 創薬ベンチャーのアールテック・ウエノ<4573>(JQS)の株価は、1400円~1600円近辺のレンジでモミ合う展開だが、徐々に下値を切り上げている。調整が一巡した形であり、中期成長力を評価してモミ合い上放れの展開だろう。なお2月12日に第3四半期累計(4月~12月)の業績発表を予定している。

 緑内障・高眼圧症治療レスキュラ点眼薬の製造販売、および米スキャンポ社の便秘症治療薬AMITIZA(アミティーザ)カプセル受託製造を主力としている。

 当社はAMITIZAカプセルの全世界における独占的製造供給権を保有して、米スキャンポ社はAMITIZAカプセルの日本と欧州での販売承認取得や米国での追加新薬承認取得、さらにレスキュラ点眼薬の米国上市など販売地域や適応の拡大戦略を推進している。

 中期経営目標値としては16年3月期のROE10%以上を目指し、新薬開発は網膜色素変性、重症ドライアイ、アトピー性皮膚炎関連を中心に進めている。

 日本発・世界初の網膜色素変性治療薬を目指す開発コードUF-021(一般名ウノプロストン)については日本で第3相臨床試験を実施している。14年8月にはウノプロストン点眼液へのトロメタモール配合に関する日本特許が成立し、11月にはウノプロストンが厚生労働省から網膜色素変性を対象とするオーファンドラッグに指定された。海外におけるウノプロストンの開発・商業化権については米スキャンポ社にライセンスし、当社はウノプロストン製品の独占的製造供給権を保有している。

 日本発・世界初の生物製剤による重症ドライアイ治療薬を目指す遺伝子組み換え人血清アルブミン(RU-101)点眼液については14年11月、米国での第1相および第2相を合わせた臨床試験を完了した。

 抗炎症作用や免疫調節作用を有するVAP-1阻害剤である新規化合物RTU-1096については、経口内服薬として14年10月に第1相臨床試験を開始した。候補疾患としてはアトピー性皮膚炎などの皮膚化疾患がある。また皮膚疾患領域では男性型脱毛症関連(RK-023)が第2相臨床試験を開始している。

 14年10月には米国で係属していたAMITIZAカプセルの特許侵害訴訟に関して和解・ライセンス契約を締結した。当社および米スキャンポ社は、AMITIZAカプセルの特定の適応症について後発医薬品(許諾製品)をPar社が米国内で販売することを、21年1月1日を開始日として非独占的に許諾する。Par社は21年1月1日から契約期間中の許諾製品の粗利益を、米スキャンポ社の各特許が失効するまでの期間において米スキャンポ社と分割する。Par社がオーソライズドジェネリックを販売することを選択した場合は、製造供給契約に従って米スキャンポ社はPar社に同製品を別途協議して決められる価格で供給するとしている。

 14年11月には米スキャンポ社、当社、および武田薬品工業<4502>が、AMITIZAカプセルの後発品を販売するため米国食品医薬品局(FDA)に後発品申請を行ったDr.Reddys社に対して特許侵害訴訟を提起した。米スキャンポ社と武田薬品工業はAMITIZAカプセルに関するグローバルライセンス契約を締結している。

 14年12月には、当社と上野製薬との間で係属していた土地賃貸借契約に関する訴訟について和解が成立した。和解の主な内容は、上野製薬が本件土地に関して当社の継続使用を認め、当社が上野製薬に対して和解金30百万円を支払うとしている。なお今回の和解が業績に与える影響は軽微としている。

 今期(15年3月期)の業績(非連結)見通し(5月14日公表)は、売上高が前期比2.6%増の57億63百万円、営業利益が同0.8%増の14億31百万円、経常利益が同2.9%減の14億34百万円、そして純利益が同5.5%減の10億03百万円としている。配当予想は前期と同額の年間25円(期末一括)としている。

 レスキュラ点眼薬については、日本市場が数量減少や薬価改定の影響で減収となり、北米市場は再上市に係るSAG社からの受注分の出荷が完了しているため今期業績見通しに織り込んでいないとしている。AMITIZAカプセルについては、北米市場で競合品の影響を受けるが、日本市場が引き続き好調に推移する見通しとしている。利益面では研究開発費の増加などが影響して、営業利益は微増にとどまる見通しだ。

 第2四半期累計(4月~9月)は前年同期比2.4%減収、同42.3%営業減益、同38.8%経常減益、同33.3%最終減益で計画を下回り、通期見通しに対する進捗率は売上高が47.3%、営業利益が28.8%、経常利益が32.3%、純利益が35.5%と低水準だった。

 ただし四半期別業績を見ると第2四半期(7月~9月)は、第1四半期(4月~6月)比38.0%増収、同97.1%営業増益、同2.4倍経常増益、同2.1倍最終増益であり、第1四半期をボトムとして収益改善基調だ。通期ベースでは挽回が期待される。

 株価の動きを見ると、第2四半期累計の低進捗率が嫌気された形で反落し、14年11月中旬以降は概ね1400円~1600円近辺のレンジでモミ合う展開だ。ただし徐々に下値を切り上げて調整一巡感を強めている。

 1月27日の終値1496円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS52円01銭で算出)は28~29倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間25円で算出)は1.7%近辺、実績PBR(前期実績のBPS473円61銭で算出)は3.2倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、日足チャートで見ると上向きに転じた25日移動平均線がサポートラインとなった。調整が一巡した形であり、中期成長力を評価してモミ合い上放れの展開だろう。

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