パイプドHDは戻り歩調で4月の年初来高値目指す、17年2月期大幅増益・連続増配予想

 パイプドHD<3919>(東1)は情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業、広告事業、ソリューション事業を展開している。17年2月期は情報資産プラットフォーム事業が牽引し、新規サービスの収益化も寄与して大幅増収増益・連続増配予想である。株価は8月安値から切り返して戻り歩調だ。好業績を評価して4月の年初来高値を目指す展開だろう。

■旧パイプドビッツが株式移転で設立した持株会社

 15年9月パイプドビッツが純粋持株会社パイプドHDを設立して東証1部に上場した。なお10月12日には、16年9月30日付で一般社団法人日本個人情報管理協会からJAPiCOマーク付与を認定されたと発表している。

 国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業(情報資産プラットフォーム「スパイラル」によるデータ管理などのクラウドサービス提供)、広告事業(アフィリエイトASP一括管理サービス「スパイラルアフィリエイト」など)、ソリューション事業(インターネット広告制作やWebシステム開発の請負、アパレル・ファッションに特化したECサイト構築・運営受託、BIMコンサルティング、デジタルCRM)を展開している。16年2月期の売上構成比は情報資産プラットフォーム事業76%、広告事業6%、ソリューション事業18%だった。

 16年2月期の連結子会社は、パイプドビッツ(情報資産プラットフォーム・広告・ソリューション事業)、ペーパーレススタジオジャパン(建築プロデュース&マネジメント・BIMコンサルタント事業)、アズベイス(コールセンタープラットフォームサービス「BizBase」事業)、パブリカ(オープンデータサービス事業)、ウェアハート(アパレル・雑貨品ECサイト構築・運営受託事業)、カレン(デジタルCRM事業)である。また持分法適用関連会社はMAKE HOUSE(住宅業界向けBIM事業)で、持分法を適用しない関連会社はSprinklr Japan(ソーシャルマネジメントプラットフォーム事業)である。

 16年3月新設した事業承継会社は、ゴンドラ(情報資産プラットフォーム・広告・Webソリューション・ソーシャルマネジメント事業)、フレンディット(ECプロデュース・情報資産プラットフォーム・ソリューション事業)、美歴(美容室向け電子カルテ「美歴」を中心とするプラットフォーム構築)である。

 16年10月には連結子会社ブルームノーツを設立した。中小企業が抱える人材育成に関する課題解決のため、企業独自のノウハウをプログラムとして体系化し、運用を支援する人材育成代行事業を推進する。

■情報資産プラットフォーム「スパイラル」は国内最大規模

 主力の情報資産プラットフォーム事業は、国内最大規模の情報資産プラットフォームである「スパイラル」を基盤として、アパレル特化型ECプラットフォーム「スパイラルEC」、会計クラウド「ネットde会計」「ネットde青色申告」、クラウド型グループウェア×CMS×SNS連携プラットフォーム「スパイラルプレース」などを展開している。

 また薬剤・医療材料共同購入プラットフォーム「JoyPla」、美容関連ヘアカルテ共有サービス「美歴」、地域密着型SNS「I LOVE 下北沢」、政治・選挙プラットフォーム「政治山」、BIM建築情報プラットフォーム「ArchiSymphony」、コールセンタープラットフォームサービス「BizBase」、自治体向け広報紙オープン化・活用サービス「マイ広報紙」、ソーシャルマネジメントプラットフォーム「Sprinklr」なども展開している。AKB48「選抜総選挙」の総選挙集計事務局も運営している。

 15年7月マイナンバー運用体制整備をサポートする「スパイラル・マイナンバートータルソリューション」を開始した。またオムニチャネル対応で顧客情報統一管理を担う「スパイラル・オムニチャネルソリューション」を開始した。

 15年9月クラウド型ストレスチェックサービス「こころの診断センター」が、TAC<4319>の改正労働安全衛生法(ストレスチェック義務化)対応サービス「ストレスチェック義務化トータルソリューション」に採用された。15年12月施行の改正労働安全衛生法は従業員50人以上の全事業所にストレスチェック実施を義務付けている。

 16年5月「スパイラル マイナンバー収集代行サービス」を開始した。収集対象者への案内書類発送から対象者の申請受付、不備チェック、データ化、管理、取扱報告書までワンストップで提供する。

 16年7月には、公益社団法人企業情報化協会(IT協会)主催の「平成28年度第3回サービス・ホスピタリティ・アワード」において、情報資産プラットフォーム「スパイラル」の業界特化型サポートサービス「ユーザーズデスク」が優秀賞を受賞した。

■M&A・アライアンス戦略も積極活用

 M&A・アライアンス戦略も積極活用している。15年2月世界有数のソフトウェアベンダーである米国Sprinklr(スプリンクラー)の日本法人Sprinklr Japanに出資(A種優先株式)し、15年3月米国Sprinklrに純投資目的で総額約4百万米ドル(4億78百万円)出資した。15年4月ペーパーレススタジオジャパンとエヌ・シーエヌが住宅業界向けBIM事業を展開する合弁会社MAKE HOUSEを設立した。またソフトブレーン<4779>と業務提携した。

 16年3月SBIインベストメントが運営するFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合(FinTechファンド)に1億円出資した。またベトナムのMQ社と共同で、ベトナムにおけるC2Cマーケットプレース事業(フリマ事業)およびEC事業等を目的とする新会社MOKI(当社出資比率25%)設立に関する基本合意書を締結した。16年4月ゴンドラ、ジェイアール東日本企画、TWENTY FOUR、ビーマップ<4316>の4社共同出資で、インタラクティブ(双方向)コミュニケーション業務を展開する新会社(ゴンドラ出資比率10%)を設立した。

■契約数増加に伴うストック型収益構造

 四半期別の推移(16年2月期第3四半期からパイプドビッツHD)をみると、15年2月期は売上高が第1四半期7億14百万円、第2四半期7億98百万円、第3四半期8億00百万円、第4四半期8億61百万円、営業利益が1億40百万円、1億65百万円、1億71百万円、1億49百万円で、16年2月期は売上高が9億35百万円、9億46百万円、9億64百万円、11億60百万円、営業利益が1億64百万円、1億78百万円、86百万円、1億51百万円だった。

 契約数増加に伴って月額サービス収入が拡大するストック型の収益構造である。16年2月期は主力事業が好調に推移して16期連続増収だが、人員増加などの先行投資負担やソリューション売上増加に伴う外注加工費の増加などで減益だった。期末人員は同62名増加の322名だった。売上総利益率は71.3%で15年2月期比4.8ポイント低下、販管費比率は56.8%で同0.3ポイント上昇した。ROEは11.1%で同4.8ポイント低下した。配当性向は56.8%、純資産配当率は6.3%だった。

 16年2月期末の有効アカウント数(全事業合計)は1万734件で同23件減少(獲得数2632件、解約数2655件)した。「ネットde青色申告」フリーミアム化に伴って443件減少し、第3四半期に「スパイラルプレース」の中型・大型解約が発生したため一時的に解約率が上昇した。

 セグメント別に見ると、情報資産プラットフォーム事業は売上高が同15.8%増の30億41百万円、営業利益(連結調整前)が同7.3%減の5億52百万円だった。有効アカウント数は1万390件(「スパイラル」3300件、「スパイラルEC」55件、「ネットde会計」「ネットde青色申告」1285件、「スパイラルプレース」5507件など)だった。

 広告事業は顧客基盤拡大で売上高が同51.6%増の2億22百万円、営業利益が同3.0倍の53百万円だった。有効アカウント数は202件だった。なお売上高は広告枠の仕入高を売上高から控除する純額表示(ネット表示)で、広告枠仕入高控除前の総額表示(グロス表示)では20億35百万円だった。ソリューション事業は売上高が同85.7%増の7億43百万円、営業利益が25百万円の赤字(15年2月期は11百万円の黒字)だった。有効アカウント数は142件だった。

■17年2月期第2四半期累計は大幅増収・営業増益

 今期(17年2月期)第2四半期累計の連結業績は、旧パイプドビッツの前年同期との比較で売上高が24.8%増の23億48百万円、営業利益が19.3%増の4億08百万円、経常利益が24.6%増の4億15百万円、純利益が3.8%増の1億86百万円だった。営業利益は第2四半期累計として過去最高を更新した。有効アカウント数(全事業合計)は1万784件で同215件(2.0%)増加した。

 売上総利益は同18.4%増加したが売上総利益率は70.0%で同3.9ポイント低下した。販管費は同18.1%増加したが販管費比率は52.7%で同3.0ポイント低下した。期末人員は同43名増加の325名だった。

 セグメント別に見ると、情報資産プラットフォーム事業は売上高が同9.1%増の16億35百万円、営業利益(連結調整前)が同33.1%増の4億04百万円だった。有効アカウント数は1万374件(スパイラルが3344件、スパイラルECが54件、ネットde会計・ネットde青色申告が1270件、スパイラルプレースが5410件など)となった。

 広告事業は売上高が同11.1%増の1億22百万円、営業利益が同24.9%増の34百万円だった。有効アカウント数は217件だった。なお売上高は広告枠の仕入高を売上高から控除する純額表示(ネット表示)で、広告枠仕入高控除前の総額表示(グロス表示)では10億97百万円だった。ソリューション事業は売上高が同2.2倍の5億90百万円、営業利益が30百万円の赤字(前年同期は11百万円の黒字)だった。有効アカウント数は193件だった。新規連結も寄与して大幅増収だがコストが先行した。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期11億62百万円、第2四半期11億86百万円、営業利益は2億16百万円、1億92百万円だった。

■17年2月期通期も大幅増収増益で連続増配予想

 今期(17年2月期)通期連結業績予想は前回予想(4月1日公表)を据え置き売上高が前期(16年2月期)比34.8%増の54億円、営業利益が同72.2%増の10億円、経常利益が同76.5%増の9億90百万円、純利益が同2.3倍の5億80百万円としている。配当予想は実質的に前期比3円増配の年間21円(第2四半期末9円、期末12円)で、予想配当性向は27.5%となる。

 情報資産プラットフォーム事業が牽引し、新規サービスの収益化も寄与して大幅増収増益・連続増配予想である。今期は従業員の積極採用は控える方針としている。Sprinklr Japanおよび米国Sprinklrの投資損益については織り込んでいない。通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高43.5%、営業利益40.9%、経常利益42.0%、純利益32.2%とやや低水準の形だが、契約数増加に伴って月額サービス収入が拡大するストック型の収益構造であり、通期も好業績が期待される。

 なおアパレル特化型ECプラットフォーム「スパイラルEC」における不正アクセスによる個人情報流出に関して、セキュリティ強化によって再発防止に取り組むとしている。通期業績への影響は軽微の見込みとしている。

■株価は戻り歩調で4月の年初来高値目指す

 株価の動きを見ると8月の年初来安値910円から切り返して戻り歩調だ。10月21日には1261円まで上伸する場面があった。

 10月31日の終値1184円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS76円50銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間21円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS240円98銭で算出)は4.9倍近辺である。時価総額は約96億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形だ。また週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を突破した。基調転換を確認して4月の年初来高値1390円を目指す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る