プロダクトマネージャー寺尾悠氏とチーフフィッシュオフィサー松井良輔氏に聞く
日本エンタープライズ<4829>(東1)の子会社いなせりは、当初の計画では、11月に電子商取引サービス『いなせり』をスタートする予定であったが、豊洲移転が延期されたことから、状況が変わってきている。そこで、現況を教えてもらうために、「いなせり」のプロダクトマネージャー寺尾悠氏とチーフフィッシュオフィサー松井良輔氏にインタビューを行った。「写真=プロダクトマネージャー寺尾悠氏(左)、チーフフィッシュオフィサー松井良輔氏(右)」
――豊洲移転が延期されたので、「いなせり」の開始時期も大幅に遅れるのかな、とこちらで勝手な推測をしていたのですが、御社に問い合わせたところ、ほぼ計画通りにスタートするということでしたので、取材しようということになったわけです。
当初は、豊洲移転が11月の計画でしたので、その後に「いなせり」をスタートする予定でした。ところが移転が11月ではなくなりましたので、築地でサービスをスタートさせるということで、仲卸業者様とも近々スタートできるよう段取りをしています。サービス日が確定次第、改めてWEBサイト等でお知らせいたします。
――豊洲移転延期で、仲卸業者様も戸惑っていらっしゃるだろうと思いますが。
周りは騒いでいますが、仲卸業者の人達はいつも通りに毎日仕事をしていらっしゃいます。仲卸業者様にとっても「いなせり」は販路拡大のツールになりますので、そういう意味では、大変好感を持っていただいていると感じています。
――分かりました、では、初めに「いなせり」のビジネスモデルについて教えていただけますか。
「いなせり」は、インターネット上のマーケットプレイスという水産物の
売買の場を提供することになります。買い手は、飲食事業者様でございます。寿司屋をはじめとした飲食事業者様です。これらの飲食事業者様がインターネット上で、「いなせり」を見て、商品を購入する。では、誰が商品を出品するのかというと、市場にいらっしゃる仲卸業者様です。500から600いる仲卸業者様が参加して、それぞれが得意とする商品をインターネット上の「いなせり」に出品するという形になります。我々はあくまで、その取引の場を提供します。周辺のサービスでは、決済周りとして、ソニーペイメントサービス株式会社様とアライアンスを結んでいます。集荷、物流周りは、地域毎に最適な物流会社様に振り分けていく形となっています。築地で、生鮮食品を扱っていますので、飲食事業者様には、その日に品物が届くということをサービスの肝としております。そういう意味から、サービスはまずは関東エリアからスタートすることになります。
――午前2時が注文の締め切り時間ということですが、少し早いのではと思ったのですが。これは、市場関係者の方々から見れば、普通のお時間という感覚でよろしいのでしょうか。
そうですね、ちょうどセリが始まる時間で、物が並びだす時間です。それまでに注文が来ていれば、それを基に仕入れられるので、仲卸業者様も在庫リスクの軽減となります。
――なるほど、そうですね。
飲食事業者様から見ても、深夜まで営業されていたり、片付けが終わった後で注文するというのはメリットがあるのかなと思っています。午前2時が締め切り時間というのは、買方からもタイミングの良い時間といえます。
――仲卸業者様は何社ほど参加されるのでしょうか。
前回8月に説明会を行ったのですが、100社ほどは参加されました。次は今月11月に行う予定ですが、同じ数の仲卸業者様がお集まりいただけると見込んでいます。参加を表明されている仲卸業者様は1社、2社ではありませんので、十分な商品が揃うだけの仲卸業者様がスタート時から参加されると見ています。
――これまでの顧客というと、築地まで買い付けに出かけてこられましたが、それ以外の方も御社のツールを使って、仕入れることが出来ますね。
我々は、仲卸業者様に「いなせり」を使っていただくうえで、月額費用は全く徴収しません。売れれば手数料を一部いただくというビジネスモデルになっています。つまり、仲卸業者様からしても、サイトにアップ(出品)するのは無料ですので、売れるまでは、費用は発生しません。仲卸業者様にとっては、売れるというチャンスしかありません。売掛についても、アライアンス企業によって保証しますので、新規の顧客の与信を気にする必要もありません。そのため回収リスクもありません。
――新規の顧客という話が出ましたが、現在、築地市場の取引高は少なくなっていますね。
はい、そうです。そのため、仲卸業者様の中でも、何とかして新規の取引を増やしていかなければならないと意識していらっしゃる人達は多いといえます。
――では、最も大切な、「いなせり」のシステム自体は既に完成しているのでしょうか。
ほぼ完成しています。こちらが買う側(飲食事業者様)が見る画面です(タブレットを見せてもらう)。
――きれいに見えていますね。
こういった形で出品していただきます。写真の下に仲卸業者様が説明文を入れたりします。項目も、天然、養殖といったり、出荷時の温度帯であったり、刺身用であったり、煮つけ用であったり、色んな用途から絞り込むことが出来ます。
――では、もうすぐスタートするのですか。
「いなせり」の開始時期については、現在、築地の仲卸業者様が所属する東京魚市場卸協同組合様と協議しています。先ほど申し上げたとおり、豊洲移転延期を受け、築地でサービスをスタートさせるべく粛々と準備を進めておりますので、同組合様のご承認をいただき次第、早々に開始したいと考えております。
――正月を控えて、スタート時期としては絶好の時機ですね。
商品は、本当に良いものが揃うと思っています。「いなせり」のサイトは誰でも見ることが出来ます。ただ、買う際には、会員登録をしていただくことになります。競合他社の場合は、会員登録しないと、商品を見ることが出来ないということがありますが、当社の場合は商品が良ければ買ってもらおうと思っていますので、誰でも見ることが出来るようにしています。
――そうすると、まずは関東圏ということですが、サイト自体は全国で見ることが出来るということですから、販売エリアも全国規模になる可能性もありますね。
そうですが、現在、登録は関東の方に限られています。商品の閲覧は、全国どこでも、海外でもできます。
――全国から問い合わせが多くなると。
そうなりますと、早急に全国に対応していくことになります。
――システムの特徴といったらどのようなところがありますか。
現在、全国でお魚をネット販売していらっしゃる業者様は沢山いらっしゃいます。しかし、1社でしか販売しないので、その会社が持っている種類しか販売できません。ところが、飲食事業者様にとっては、もっと他の種類も欲しいということになります。「いなせり」には、いろんな仲卸業者様が出品していますので、同じサバでも何十種類、何十社が出していますので、マッチングがうまくいくというところが最大の特徴です。
――それだけ種類が多いと、「いなせり」のサイトにアップするのに人手と時間が掛かるのではないでしょうか。
商品の登録は、仲卸業者の方が、スマホを使って、簡単にアップでき、時間がかからないよう配慮しています。
――飲食事業者様の登録はまだ始まっていないのですね。
いえ、すでに事前登録という形で開始しています。予想以上に登録していただいています。プロモーションをかけていないのに、多くの方々からのお問い合わせがあります。なかなか築地へ行けない関東の方も多く、そういう方々に買っていただければ長いお付き合いが出来るのではないかと思っています。
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