キーウェアソリューションズは売り一巡して反発期待、17年3月期増益予想で医療関連・農業ICT関連

 キーウェアソリューションズ<3799>(東2)はシステム開発事業やSI事業を展開している。17年3月期第2四半期累計は赤字が縮小した。通期は売上総利益率改善や販管費抑制で大幅増益・増配予想である。株価は第2四半期累計業績を嫌気する形で戻り高値圏から急反落したが、医療関連や農業ICT関連というテーマ性もあり、目先的な売りが一巡して反発が期待される。

■NEC向け主力にシステム開発事業やSI事業を展開

 筆頭株主のNEC<6701>グループ向けが主力のシステム開発企業である。16年3月期の事業別売上高構成比はシステム開発事業(システム構築・ソフトウェア受託開発)が67%、SI事業(ERPパッケージ等によるシステムインテグレーション)が12%、プラットフォーム事業(サーバ仮想化などシステム基盤構築)が11%、その他(運用・保守・機器販売、新規事業)が10%だった。

 主要顧客はNECグループが約4割を占め、NTT<9432>グループ、JR東日本<9020>グループ、三菱商事<8058>グループ、日本ヒューレット・パッカードなどが続いている。

■中期経営計画でポートフォリオ多様化などを推進

 中期経営計画2015(16年3月期~18年3月期)では、基本方針に既存事業の収益性向上と安定化、ポートフォリオの多様化、経営基盤の整備・改革、目標値に18年3月期売上高190億円、営業利益10億円、売上高営業利益率5.3%を掲げている。

 既存のシステム開発事業では、特定業種に強みを持つ高付加価値事業の展開、収益性の高い案件へのリソースシフト、SI事業ではERP(統合業務パッケージ)事業の売上高・利益拡大に向けたSAPビジネスの強化、コンサルティングファームや他企業との連携などを推進する。ポートフォリオ多様化ではNECとも連携して、フロンティア事業(新規事業)のスマートアグリ分野やヘルスケア・医療分野における新たなビジネスチャンス創出を推進する。経営基盤の整備・改革では、プロジェクト横断機能のさらなる強化や社員の活力アップに向けた施策を推進する。

■医療分野を強化

 15年1月、経済産業省「平成26年度健康寿命延伸産業創出推進事業」の「職場における健康投資に関する効果指標および投資環境整備(健康データのオープン化・小規模事業所)」に、職域健康投資コンソーシアムとして参画した。また総務省「新たなワークスタイルの実現に資するテレワークモデルの実証」プロジェクトにモデル企業として選ばれ、15年1月から実証を開始している。

 15年10月には東北福祉大学健康科学部の関田康慶教授(東北大学名誉教授)の医療安全研究グループ、およびアウトカム・マネジメント(福島県相馬郡)と共同で医療安全管理モニタリング情報システム「HoSLM(ホスルム)」を開発し、医療機関向けに販売開始した。

■農業のICT化サービスも提供

 15年3月、自治体向けに農作物の品質・生産性向上や栽培技能の継承を支援する農業ICTサービス「OGAL(オーガル)」シリーズの提供を開始した。圃場に設置した各種センサーから収集した環境情報を遠隔からリアルタイムでモニタリングできるクラウド型サービスである。14年6月に宮城県亘理町いちごファームが導入して研究利用している。

 また慶応義塾大学SFC研究所が農業ICTの普及と農業情報標準化に向けて設立したアグリプラットフォームコンソーシアムに参画した。政府が取り組む農業分野IT施策方針「農業情報創成・流通促進戦略」などを踏まえて、産学連携により国の農業IT施策の実地検証を行うとしている。

 15年7月には地方創生に向けた新規就農者育成を支援するため、農業ICTサービス「OGAL(オーガル)」にNECソリューションイノベータの「NEC営農指導支援システム」との連携機能を実装し、自治体・JA・農業法人に対して提供開始した。

■第4四半期の構成比が高い収益構造

 四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期33億34百万円、第2四半期39億19百万円、第3四半期40億67百万円、第4四半期50億62百万円、営業利益が3億24百万円の赤字、1億95百万円の赤字、70百万円の黒字、4億51百万円の黒字、16年3月期は売上高が32億31百万円、41億85百万円、37億23百万円、48億49百万円、営業利益が2億91百万円の赤字、13百万円の黒字、49百万円の赤字、3億90百万円の黒字だった。システム開発関連で年度末にあたる第4四半期の構成比が高い収益構造である。

 16年3月期は官庁系・運輸系既存顧客のシステム更新需要端境期のため減収だが、不採算・低採算プロジェクトに係るコストが縮小して15年3月期比大幅増益だった。受注高は同2.4%増の163億68百万円だった。売上総利益は同6.4%増加し、売上総利益率は16.7%で同1.4ポイント上昇した。販管費は3.9%増加し、販管費比率は16.3%で同1.0ポイント上昇した。ROEは1.1%で同2.5ポイント上昇、自己資本比率は58.6%で同1.9ポイント低下した。配当は復配で年間5円(期末一括)とした。配当性向は62.0%だった。配当については最終利益と連動した業績連動型配当を基本方針としている。

 システム開発事業は受注高が15年3月期比1.4%減の109億62百万円、売上高が同6.7%減の107億16百万円、営業利益(連結調整前)が2億17百万円(15年3月期は7百万円)で、SI事業は受注高が同8.0%減の18億96百万円、売上高が同7.7%減の19億26百万円、営業利益が同7.2%増の1億43百万円、プラットフォーム事業は受注高が同2.1倍の20億51百万円、売上高が同78.7%増の17億24百万円、営業利益が1億11百万円の赤字(同1億42百万円の赤字)、その他事業は受注高が同20.9%減の14億58百万円、売上高が同12.0%減の16億20百万円、営業利益が86百万円の赤字(同8百万円の赤字)だった。

■17年3月期第2四半期累計は赤字縮小

 10月31日発表した今期(17年3月期)第2四半期累計(4~9月)連結業績は、売上高が前年同期比6.7%減の69億17百万円、営業利益が2億46百万円の赤字(前年同期は2億78百万円の赤字)、経常利益が2億46百万円の赤字(同2億67百万円の赤字)、純利益が2億61百万円の赤字(同3億08百万円の赤字)だった。受注高は同16.2%減の68億87百万円だった。

 前年同期に機器販売主体のインフラ構築系大型案件を計上した反動で減収だが、販管費抑制などで赤字が縮小した。なお営業利益増減分析は、減益要因が売上高減少による利益減70百万円、売上総利益率低下による利益減36百万円、増益要因が販管費圧縮による利益増1億37百万円としている。

 売上総利益は同10.1%減少し、売上総利益率は13.6%で同0.5ポイント低下した。販管費は同10.4%減少し、販管費比率は17.1%で同0.7ポイント低下した。営業外収益では持分法投資利益が減少(前期13百万円、今期8百万円)したが、補助金収入が増加(前期4百万円、今期9百万円)増加した。営業外費用では支払手数料が減少(前期25百万円、今期7百万円)した。

 セグメント別動向を見ると、システム開発事業は受注高が同10.7%減の44億99百万円、売上高が同5.1%減の45億16百万円、営業利益(連結調整前)が73百万円の赤字(同9百万円の赤字)だった。金融系、メディア系、医療系の新規案件を獲得したが、官庁系、公共系、運輸系で既存案件終了後の代替案件が不足した。

 SI事業は受注高が同36.9%減の15億57百万円、売上高が同10.5%減の16億28百万円、営業利益が20百万円の赤字(同31百万円の赤字)だった。独立行政法人国際協力機構の新規案件を獲得し、ERP系や流通系が堅調だったが、前期計上した機器販売主体のインフラ構築系大型案件の反動で減収だった。利益面では販管費抑制で赤字が縮小した。

 その他は受注高が同15.6%増の8億30百万円、売上高が同7.6%減の7億71百万円、営業利益が36百万円の赤字(同1億80百万円の赤字)だった。受注面では運用・保守等のサポートサービスが増加し、新規事業の農業ICT関連も寄与した。利益面では販売費抑制が寄与して赤字が縮小した。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期32億42百万円、第2四半期36億75百万円、営業利益は1億57百万円の赤字、89百万円の赤字だった。

■17年3月期通期は大幅増益・増配予想で収益改善基調

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想は前回予想(4月28日公表)を据え置いて、売上高が前期(16年3月期)比10.7%増の177億円、営業利益が同7.9倍の5億円、経常利益が同3.3倍の4億20百万円、純利益が同5.5倍の3億70百万円としている。配当予想は同5円増配の年間10円(期末一括)で予想配当性向は22.5%となる。

 運輸系既存顧客からのシステム更新需要端境期だが、受注拡大に向けた営業体制再構築の効果、プラットフォーム事業の戦略的活用などで、大型・継続案件の受注拡大や戦略的受注を推進する。さらにプロジェクト管理の徹底により不採算プロジェクトの発生抑制、製造原価のさらなる低減を推進する。農業ICTやヘルスケア・医療領域の新事業育成も推進して収益改善基調が期待される。

■株価は目先的な売り一巡して反発期待

 株価の動きを見ると、第2四半期累計業績を嫌気する形で戻り高値圏600円近辺から急反落した。その後は450円近辺で推移している。目先的な売りが一巡したようだ。

 11月17日の終値472円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS44円50銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は2.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS702円84銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約43億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺で下げ渋る動きだ。医療関連や農業ICT関連というテーマ性もあり、売り一巡して反発が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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