三洋貿易は17年9月期増収増益・増配予想で15年の上場来高値も視野

 三洋貿易<3176>(東1)は自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品を主力とする専門商社である。業容拡大に向けてM&A戦略も加速している。16年9月期連結業績は計画水準の営業増益で着地し、期末配当を増額した。そして17年9月期は増収増益・増配予想である。株価は基調転換して3月の年初来高値に接近している。指標面の割安感も見直して上値を試す展開だろう。15年8月の上場来高値も視野に入りそうだ。

■自動車業界向けゴム・化学関連製品やシート部品が主力の専門商社

 ゴム関連商品、化学品関連商品、産業資材関連商品、科学機器関連商品、機械・資材関連商品の5分野に展開する専門商社である。メーカー並みの技術サポート力に加えて、財務面で実質無借金経営であることも特徴だ。

 15年9月期セグメント別(連結調整前)売上高構成比は、化成品(ゴム・化学品を16年9月期から名称変更)41%、機械資材27%、海外現地法人22%、国内子会社10%、その他0%で、営業利益構成比は化成品30%、機械資材42%、海外現地法人10%、国内子会社14%、その他4%だった。

 業界別売上構成(単体ベース)で見ると、自動車が過半を占め、OA・家電、塗料・インキ、その他化学などが続いている。自動車関連は各種合成ゴム・添加剤、タイヤ用特殊クレー、防振ゴム・ホース原料、自動車用シート部品(レザーシート、シートヒーター、ランバーサポート、シートセンサー)といった高付加価値品を中心に展開している。シートヒーターはカーボンファイバー仕様市場を独占し、ランバーサポートは世界市場6割を占有している。

 飼料・エネルギー・リサイクル関連では飼料や固定燃料などを製造するペレットミルが高シェアだ。国内子会社のコスモス商事は地熱・海洋資源開発関連分野で掘削用機材の輸入販売・レンタルを手掛けている。

■M&Aも活用した業容拡大戦略を推進

 グループとして重点志向する事業領域への経営資源集中を進めるとともに、国内外でM&Aも活用して業容拡大戦略を推進している。15年3月エレクトロニクス関連商品卸売の連結子会社アロマンの株式をタクミ商事に譲渡、15年9月連結子会社ケムインターが工業用洗剤輸入販売のコムスタージャパンを子会社化、16年2月工業化学薬品輸入販売のソートを子会社化した。

 16年6月洸陽電機(兵庫県)と業務提携した。小型高効率の独ブルクハルト社製木質バイオマスコージェネレーション(熱電併給)システムの販売拡大や導入促進で提携し、17年9月期に2社共同事業による合計売上高50億円を見込んでいる。

 16年7月には日本ルフトを子会社化した。同社は呼吸器系を主軸に医療機器の開発・製造販売、医療機器および理科学機器の輸入販売を手掛けている。同社の子会社化によって当社科学機器事業部が医療機器分野に新規参入する。

 海外は米国、メキシコ、タイ、中国(上海、香港)、インド、ベトナム、インドネシアに展開している。15年7月シンガポールの工業用フィルム販社BPS社を子会社化(シンガポール三洋貿易に社名変更)、15年10月タイに子会社Sanyo Trading(Thailand)を設立した。

■3月決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高い収益構造

 四半期別の業績推移を見ると、15年9月期は売上高が第1四半期153億86百万円、第2四半期156億16百万円、第3四半期156億82百万円、第4四半期139億88百万円、営業利益が9億82百万円、10億54百万円、10億68百万円、5億02百万円、経常利益が11億48百万円、10億47百万円、12億09百万円、7億06百万円だった。設備投資関連商材を含むため、3月期決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高くなりやすい収益構造である。

 15年9月期は6期連続最高益更新だった。売上総利益率は15.6%で14年9月期比0.8ポイント上昇、販管費比率は9.6%で同0.3ポイント上昇した。営業外収益では受取配当金、為替差益、匿名組合投資利益が増加し、純利益はアロマン株式譲渡に伴う税負担減少も寄与した。ROEは15.9%で同3.2ポイント上昇、自己資本比率は62.1%で同7.4ポイント上昇、D/Eレシオは0.06倍で同0.02ポイント低下した。配当は5期連続増配で、配当性向は25.1%だった。配当の基本方針は連結配当性向25%を下限の目途としている。

■16年9月期は計画水準の営業増益で着地

 11月8日発表した前期(16年9月期)の連結業績は、売上高が前々期(15年9月期)比1.3%減の599億08百万円、営業利益が同12.4%増の40億52百万円、経常利益が同4.0%増の42億74百万円、純利益が同1.3%減の27億57百万円だった。売上高は円高や新興国経済減速の影響で計画を下回り減収だったが、営業利益はほぼ計画水準の増益で着地した。純利益はアロマン株式譲渡に伴う税負担減少効果一巡が影響した。

 売上総利益は同6.0%増加し、売上総利益率は16.7%で同1.1ポイント上昇した。販管費は同2.1%増加し、販管費比率は10.0%で同0.4ポイント上昇した。営業外では為替差益が減少(前々期3億32百万円、前期98百万円)した。またROEは14.1%で同1.8ポイント低下、自己資本比率は62.7%で同0.6ポイント上昇した。配当は期末3円増額して前々期と同額の年間49円(第2四半期末23円、期末26円)とした。配当性向は25.4%である。

 セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、化成品は売上高が同3.8%増の244億83百万円、営業利益が同14.4%増の12億63百万円だった。ゴム関連製品で情報機器向け輸出が低調だったが、自動車向けを中心に合成ゴムや副資材が堅調だった。第2四半期に連結子会社化したソートも寄与した。機械資材は売上高が同8.0%増の191億04百万円、営業利益が同12.7%増の22億11百万円だった。産業資材関連で自動車内装用部品やシート用高機能性部品・原材料が伸長した。機械・環境関連では飼料・肥料用ペレットミルが堅調に推移した。バイオマス関連では熱電併給設備の大型案件を受注した。科学機器関連では半導体検査装置などが好調だった。

 海外現地法人は円高による為替換算の影響で売上高が同13.0%減の107億51百万円、営業利益が同27.0%減の3億66百万円だった。SCOA(米国)および三洋物産貿易(上海)はゴム・自動車用部品が堅調だった。San-Thap(タイ)はタイパーツ安による輸入品の採算悪化が影響した。国内子会社は売上高が同22.0%減の52億94百万円、営業利益が同8.1%減の5億85百万円だった。コスモス商事は地熱関連が堅調だったが、ケムインターは韓国経済低迷や円高の影響で化学品が低調だった。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期163億87百万円、第2四半期149億46百万円、第3四半期137億18百万円、第4四半期148億57百万円、営業利益は13億11百万円、9億94百万円、7億35百万円、10億12百万円、そして経常利益は13億90百万円、9億86百万円、7億90百万円、11億08百万円だった。

■17年9月期増収増益・増配予想

 今期(17年9月期)連結業績予想(11月8日公表)は、売上高が前期(16年9月期)比11.8%増の670億円、営業利益が同3.6%増の42億円、経常利益が同1.8%増の43億50百万円、純利益が同1.2%増の27億90百万円としている。配当予想については同1円増配の年間50円(第2四半期末23円、期末27円)とした。予想配当性向は25.6%となる。

 自動車向けを中心に化成品関連や海外現地法人が堅調に推移する。新規では環境関連機材や医療関連機材の伸長を見込んでいる。業容拡大に向けた人件費の増加などで販管費は同19.6%増を見込んでいるが、増収による売上総利益増加で吸収する計画だ。為替が円安方向に傾いていることも追い風であり、好業績が期待される。

■長期ビジョンで20年9月期までにROE15%以上目指す

 15年11月策定の16年9月期~17年9月期2カ年中期経営計画では、目標数値に17年9月期売上高670億円、経常利益44億50百万円を掲げた。

 重点戦略は(1)コアビジネスの収益の強化と安定化、(2)新規事業は地熱・海洋資源開発機材など資源エネルギー分野、木質バイオマス機材など環境関連分野、医薬中間体・医療用原材料・バイオなどライフサイエンス分野へ展開、(3)グローバル展開(自動車産業を中心に日系企業の進出が続くアセアン+インド、中国、北中米に主軸)、(4)投資案件への積極的取り組み(既存事業との相乗効果、成長性、グローバル展開を目指すM&A含む投資案件)、(5)マンパワーの強化と人材育成とした。

 そして15年10月1日~20年9月30日の5年間長期ビジョン「VISION2020」では、目標数値に20年9月期までに経常利益50億円、ROE15%以上、自己資本比率50%以上を掲げている。

 基本方針は(1)盤石な財務基盤、(2)強みを通じた価値創造、(3)自由闊達な社風と機会創出の組織として、6つの戦略に、戦略A:既存ビジネスの深化、戦略B:ビジネスポートフォリオの明確化、戦略C:新規ビジネスのプロジェクト立ち上げ、戦略D:グローバル展開の加速、戦略E:新規投資案件の推進、戦略F:国内外の組織の強化を掲げた。

 戦略Cの新規プロジェクト立ち上げでは、20年までに具現化可能な新規ビジネスとして、地熱・海底資源開発関連機材、医薬中間体・原体、特殊フィルムの海外展開、木質バイオマス・ガス化発電関連機材を推進する。なお16年の成約として独ブルクハルト社製ガス化熱電併給装置、コールバッハ社サーマルオイルボイラー、CPM社ペレットミル、ステラ社ベルト式低温ドライヤー関連機器を見込んでいる。

 戦略Eの新規投資案件では、新規投資目標を5件以上として、会社方針に符合する案件にM&A・商権譲渡・資本参加・JV設立などの形で積極投資を行う。戦略Fの国内外の組織の強化では、グローバル化に対応すべく約260人のグループ社員を20年には300人以上に増強する方針だ。

■株価は基調転換して3月の年初来高値に接近、15年の上場来高値も視野

 株価の動きを見ると、8月の直近安値1125円から切り返して戻り歩調の展開だ。そして17年9月期増収増益予想も好感して11月16日と18日には1483円まで上伸し、3月の年初来高値1520円に接近してきた。

 11月18日の終値1482円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS195円01銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間50円で算出)は3.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1422円34銭で算出)は1.0倍近辺である。時価総額は約215億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いて基調転換を確認し、13週移動平均線がサポートラインの上昇トレンドの形となった。指標面の割安感も見直して上値を試す展開だろう。15年8月の上場来高値1845円も視野に入りそうだ。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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