サンコーテクノは下値固め完了感、17年3月期営業減益予想だが中期的に収益拡大期待

 サンコーテクノ<3435>(東2)は建設用あと施工アンカーの最大手で、センサー関連商材の測定器も展開している。17年3月期第2四半期累計が計画を下回り、通期も営業減益予想となったが、中期的に20年東京五輪や国土強靭化政策など建設関連の事業環境は良好であり、収益拡大が期待される。株価は下値固め完了感を強めている。指標面の割安感も見直して反発が期待される。

■ファスニング事業と機能材事業を展開

 ファスニング事業(あと施工アンカーやドリルビットの開発・製造・販売、太陽光関連・土木建築関連の工事管理など)と、機能材事業(電動油圧工具関連、FRPシート関連、車両の表示板などの電子プリント基板関連、各種測定器関連の製造・販売など)を展開している。

 16年3月期セグメント別売上高構成比はファスニング事業75.7%、機能材事業24.3%だった。売上高に対する新製品比率は14年3月期16.0%、15年3月期17.0%、16年3月期18.2%と上昇基調である。

■あと施工アンカーの最大手

 ファスニング事業では、あと施工アンカー(コンクリート用特殊ネジ・釘類)やドリルビットの開発・製造・販売、太陽光関連・土木建築関連の工事管理などを展開している。あと施工アンカーの最大手である。

 あと施工アンカー、アンカー打込機などは震災復興関連、都市再開発関連、耐震補強関連、老朽化インフラ補修・更新関連、20年東京夏季五輪関連、リニア新幹線関連など建設工事の増加が追い風となり、中期的に事業環境は良好だ。

■センサー関連商材も強化

 センサー関連商材も強化している。14年11月ドコモ・システムズと業務提携し、15年3月自動車運送事業法の対象企業に向けたクラウド型点呼サービス「docoですcar Guardian」の提供を開始した。ドコモ・システムズが当社の呼気アルコール測定システムを利用したクラウド型サービスを提供する。

 15年2月「燃料電池式業務用呼気アルコール測定器ST-3000」を発表した。これまでの接触燃焼式から燃料電池式にすることによりガス選択性の向上と測定時間の短縮を実現する。

■期後半の構成比が高い収益構造

 四半期別推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期37億61百万円、第2四半期46億72百万円、第3四半期46億13百万円、第4四半期47億89百万円、営業利益が2億45百万円、4億65百万円、3億88百万円、4億13百万円、16年3月期は売上高が35億46百万円、43億80百万円、43億61百万円、43億61百万円、営業利益が1億57百万円、3億83百万円、3億52百万円、4億46百万円だった。

 建設関連のため期後半の構成比が高い収益構造である。16年3月期は15年3月期比減収減益だった。公共事業の減少や太陽光発電市場の縮小で金属系・接着系あと施工アンカーが低調だった。

 売上総利益は同5.8%減少したが、売上総利益率は31.9%で同0.2ポイント上昇した。販管費は同3.8%減少したが、販管費比率は23.9%で同0.7ポイント上昇した。ROEは8.4%で15年3月期比4.4ポイント低下、自己資本比率は67.2%で同5.8ポイント上昇した。配当は同3円増配の年間18円(期末一括)で配当性向は18.1%だった。利益配分については、将来の事業展開・経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続していくことを基本方針としている。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、ファスニング事業は売上高が同7.8%減の126億06百万円、営業利益が同10.8%減の17億31百万円、機能材事業は売上高が同2.9%減の40億41百万円、営業利益が同5.6%減の4億97百万円だった。

■17年3月期第2四半期累計は計画未達で減収減益

 11月9日発表した今期(17年3月期)第2四半期累計(4~9月)の連結業績(10月28日に売上高、利益とも減額修正)は、売上高が前年同期比8.3%減の72億68百万円で、営業利益が同21.0%減の4億26百万円、経常利益が同21.8%減の4億01百万円、純利益が同23.1%減の2億52百万円だった。

 増収増益予想から一転して減収減益での着地となった。人手不足による建設着工量の減少や天候不順の影響による工期ずれ込みなどで、あと施工アンカーの売上が計画を下回った。また電動油圧工具は海外が順調だが、国内の減少をカバーできなかった。売上総利益は同8.3%減少したが、売上総利益率は32.3%で同横ばいだった。販管費は同4.9%減少したが、販管費比率は26.4%で同0.9ポイント上昇した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、ファスニング事業は売上高が同7.1%減の54億70百万円で営業利益が同14.8%減の6億42百万円だった。各種設備工事の需要回復などに伴って金属系あと施工アンカーは堅調だったが、公共工事減少で接着系あと施工アンカーが低調だった。機能材事業は売上高が同11.9%減の17億98百万円で営業利益が同12.7%減の2億25百万円だった。アルコール測定器は好調だったが、電動油圧工具関連の国内販売が低調だった。またFRPシート関連の二重床等の複合材料や電子基板関連も減少した。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期32億69百万円、第2四半期39億99百万円、営業利益は1億01百万円、3億25百万円だった。

■17年3月期通期も減額して減収・営業減益予想

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想については、10月28日に減額修正(5月13日公表の前回予想に対して売上高を13億円減額、営業利益を1億10百万円減額、経常利益を90百万円減額、純利益を50百万円減額)し、売上高が前期(16年3月期)比2.7%減の162億円、営業利益が同3.6%減の12億90百万円、経常利益が同1.3%減の12億40百万円、純利益が同2.4%増の8億30百万円としている。

 第2四半期累計が計画を下回ったことに加えて、下期に見込んでいたあと施工アンカーの需要増が来期(18年3月期)に一部ずれ込む見込みとなり、減収営業減益予想となった。なお配当予想は据え置いて同2円増配の年間20円(期末一括)としている。予想配当性向は19.6%となる。

 重点施策として、市場創出に向けた開発力(インフラ土木分野での高付加価値製品・新工法開発)と営業力の強化、特殊工法の開発(用途開発)推進、海外展開(東南アジア、特にベトナムでの販売強化に注力し、グループ目標10億円の早期達成目指す)、新事業の推進(テクノテスターグラフ・ポータブル、アルコール測定器ST-3000、環境配慮型FRPシートなど)に取り組む。

 なお修正後の通期会社予想に対する第2四半期の進捗率は売上高44.9%、営業利益33.0%、経常利益32.3%、純利益30.4%と低水準の形だが、第4四半期の構成比が高い収益構造のため、修正後の通期会社予想は達成可能だろう。

■中期ビジョンで売上高成長率5%以上を目指す

 新中期経営ビジョンでは「独自のファスニング(締結)システムで安全・安心を提供するモノづくり集団の追究」を掲げている。成長企業(優良企業)、ブランド力アップ、業務力アップ、チーム人財力アップを目指す方針だ。経営目標数値には売上高成長率5.0%以上、営業利益率8.0%以上、新製品売上高構成比30%、ROA8.0%以上を掲げている。

 中期成長に向けて組織変更を実施した。ファスニング事業以外を一つの事業に集約して営業体制を強化するとともに、事務作業を集約して収益改善を推進する。また一気通貫体制・フレキシブル体制で安定供給・安定品質・市場創出を促進する。

 建設現場では現場作業の省力化・機械化ニーズの高まりや非熟練作業者の増加が予想され、現場での使いやすさを高めた施工ツール、あと基礎アンカー、アンカー打込機、紫外線硬化FRPシートといった製品の採用が一段と増加する。20年東京五輪、都市再開発、国土強靭化政策などで中期的に事業環境は良好だ。新製品や高付加価値製品の拡販も寄与して収益拡大が期待される。

■株主優待制度は3月末に実施

 株主優待制度については15年3月期から実施し、毎年3月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してQUOカード500円分を贈呈している。

■株価は下値固め完了感、指標面の割安感も見直し

 株価の動きを見ると安値圏600円台でモミ合う展開だ。ただし6月の年初来安値635円を割り込むことなく下値固め完了感を強めている。17年3月期減額修正に対するネガティブ反応も限定的だった。

 11月25日の終値675円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS101円98銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は3.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1217円68銭で算出)は0.6倍近辺である。時価総額は約59億円である。

 週足チャートで見ると戻りを押さえていた26週移動平均線突破の動きを強めている。下値固めが完了し、指標面の割安感も見直して反発が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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