セーラー万年筆は16年12月期第3四半期営業黒字で通期も営業黒字化予想

 セーラー万年筆<7992>(東2)は万年筆の老舗でロボット機器事業も展開している。16年12月期第3四半期累計が営業黒字で、通期も営業黒字化予想である。中期経営計画では得意分野に経営資源を集中して収益改善を進める方針を掲げている。株価は下値固め完了感を強めている。反発展開が期待される。

■文具事業とロボット機器事業を展開

 文具事業(万年筆、ボールペン、電子文具、景品払出機、ガラスCD、窓ガラス用断熱塗料など)とロボット機器事業(プラスチック射出成形品自動取出装置・自動組立装置など)を展開し、15年12月期売上高構成比は文具事業68%、ロボット機器事業32%だった。

 文具事業はブランド力の高い万年筆を主力として、中期成長に向けて電子文具への事業展開も加速している。また熱を逃がす“冷めやすい塗料”の屋根・壁用太陽光反射・遮熱塗料「アドグリーンコート」の拡販も強化している。15年6月には新しい超微粒子顔料ボトルインク「STORiA(ストーリア)」が「第24回日本文具大賞2015」デザイン部門・優秀賞に選出された。

 ロボット機器事業は1969年に開発に着手した歴史を持ち、09年にはプラスチック射出成形品用自動取出ロボットで世界初の無線ハンディコントローラ搭載RZ-Σシリーズを開発した。

 なお連結子会社だった写楽精密機械(上海)については清算手続きに入り、既に事業を取りやめている。中国市場における当社ロボット機器の販売・保守サービスは現地代理店に委託して代行・継続する。また16年10月にはガラスディスク関連事業を譲渡した。中期経営計画に基づいて不採算事業の撤退を進めている。

■15年12月期は赤字縮小

 15年12月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期16億07百万円、第2四半期14億78百万円、第3四半期14億07百万円、第4四半期16億25百万円、営業利益は第1四半期29百万円、第2四半期12百万円、第3四半期15百万円の赤字、第4四半期73百万円の赤字だった。

 15年12月期は9期連続の最終赤字となり、継続企業の前提に疑義の注記が付されている。ただし14年12月期との比較では赤字が縮小した。収益改善基調である。売上総利益率は27.2%で14年12月期比1.0ポイント上昇、販管費比率は28.0%で同0.3ポイント上昇した。

 文具事業は売上高が同1.1%減の41億75百万円、営業利益が87百万円の赤字(前々期は30百万円の赤字)だった。万年筆や複合筆記具の中高級品は順調だったが、法人ギフト市場など低価格品の回復が遅れた。ロボット機器事業は売上高が同0.4%減の19億41百万円、営業利益が40百万円の黒字(前々期は60百万円の赤字)だった。製品価格低下や材料費上昇で利益率が低下したが、中国子会社の撤退による売上原価率改善などで黒字化した。

■16年12月期第3四半期累計は減収営業減益だが営業黒字

 今期(16年12月期)第3四半期累計(1~9月)の連結業績は売上高が前年同期比0.6%減の44億64百万円、営業利益が同38.3%減の16百万円、経常利益が同2.1倍の3百万円、純利益が77百万円の赤字(前年同期は18百万円の黒字)だった。ロボット機器事業の国内販売が低調で営業減益だったが、文具事業の利益率改善で営業黒字を確保した。純利益は特別損失計上が影響した。

 売上総利益は同0.3%減少したが、売上総利益率は28.1%で同0.1ポイント上昇した。販管費は同0.6%増加し、販管費比率は27.8%で同0.4ポイント上昇した。営業外収益では持分法投資利益が減少(前期25百万円、今期19百万円)し、営業外費用では支払手数料が減少(前期19百万円、今期10百万円)した。特別利益では前期計上の投資有価証券売却益5百万円、受取保険金15百万円、固定資産売却益40百万円が一巡した。特別損失では本社移転費用8百万円、製品自主回収費用9百万円を計上した。

 セグメント別に見ると、文具事業は売上高が同0.5%減の30億30百万円だが、営業利益が5百万円の黒字(前年同期は74百万円の赤字)だった。自社製品の万年筆と万年筆用インクが好調だった一方で、利益率の低い仕入商品の売上が減少した結果、利益率が改善した。ロボット機器事業は売上高が同0.9%減の14億33百万円、営業利益が同88.7%減の11百万円だった。海外子会社は堅調だが、国内販売が低調だった。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期15億17百万円、第2四半期14億41百万円、第3四半期15億06百万円、営業利益は27百万円、2百万円、13百万円の赤字だった。

■16年12月期通期は営業黒字化予想

 今期(16年12月期)通期の連結業績予想(2月15日公表)は売上高が前期(15年12月期)比1.0%増の61億80百万円、営業利益が80百万円の黒字(前期は47百万円の赤字)、経常利益が60百万円の黒字(同82百万円の赤字)、純利益は20百万円の黒字(同1億51百万円の赤字)としている。配当は無配を継続する。

 得意分野や競争力を持った分野への経営資源の集中、原価低減プロジェクトへの取り組みなどで収益向上を目指すとしている。文具事業は中高級クラスの万年筆・複合筆記具を中心とした製品群に開発および販売を集中する。また有望な販売ルートへの取り組みを集中的に行う。ロボット機器事業は好調な米国、中国、東南アジア市場へ積極展開して海外売上の15%アップを目指す。主力の射出成形取出機については汎用機種である「RZ-A」シリーズのコストダウンによって販売増を図る。

■継続企業の前提に対する疑義注記

 今期(17年3月期)第3四半期累計は営業利益と経常利益が黒字だったが、前期(16年3月期)まで数期連続して純利益が赤字だった。このため前期に続いて継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在している。

 このような状況に対して、基幹事業の経営基盤の強化を行い、収益力の強化を図ることによって、当該状況の改善を実現できるとしている。

■新中期経営計画で18年12月期純利益1億30百万円目標

 16年5月策定の新中期経営計画(16年12月期~18年12月期)では、開発型メーカーとして最高の品質を追求することにより、顧客満足度の最大化を図るべく研鑽を重ね、その継続的な努力によって「SAILOR」ブランドの価値を向上していくことを企業方針としている。

 主力の文具事業とロボット機器事業に経営資源を集中し、自社製品の販売比率を上昇させることで一層の利益拡大を目指す。基本戦略としては、得意分野および競争力のある分野に経営資源を集中する、研究開発を強化して独創性に富む製品を提供する、組織をスリム化して変化する市場に対し迅速な経営判断を行う、積極的な海外戦略を実施して海外売上を拡大する、国内市場におけるシェアを拡大する、業務内容を見直して一層の経費削減を推進する、既存資産の見直しを実施して資産効率の向上を図るとしている。

 経営数値目標としては売上高経常利益率2.5%以上、有利子負債10億円以下を掲げた。そして17年12月期の業績計画は売上高64億円、営業利益1億40百万円、経常利益1億20百万円、純利益80百万円、18年12月期の業績計画は売上高67億円、営業利益1億90百万円、経常利益1億70百万円、純利益1億30百万円としている。収益改善が期待される。

■株価は下値固め完了して反発期待

 株価の動きを見ると30円近辺でモミ合う展開だが、6月の年初来安値26円まで下押すことなく下値固め完了感を強めている。

 12月1日の終値32円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS16銭で算出)は200倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS14円61銭で算出)は2.3倍近辺である。時価総額は約39億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を挟んでモミ合う形だが、下値固めが完了して反発展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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