日本アジアグループは基調転換して戻り試す、0.4倍近辺の低PBRも見直し

 日本アジアグループ<3751>(東1)は空間情報コンサルティング事業、グリーンエネルギー事業、ファイナンシャルサービス事業を展開している。12月8日には台湾サイノテック社との環境・防災・自然エネルギー分野における協業の覚書締結を発表した。17年3月期は先行投資負担で営業減益予想だが、特別損失が一巡して最終増益予想である。株価は基調転換を確認した形だ。景気対策関連、防災関連、再生可能エネルギー関連であり、0.4倍近辺の低PBRも見直して戻りを試す展開が期待される。

■社会インフラ・環境・エネルギー関連に経営資源を集中

 社会インフラ・環境・エネルギー関連にグループ経営資源を集中して、空間情報コンサルティング事業(国際航業の社会インフラ関連事業)、グリーンエネルギー事業(太陽光発電受託・売電事業、土壌・地下水保全コンサルティング事業、戸建住宅・不動産事業)、およびファイナンシャルサービス事業(証券業)を展開している。

 16年3月期のセグメント別売上高構成比は空間情報コンサルティング57%、グリーンエネルギー33%、ファイナンシャルサービス10%、営業利益(連結調整前)構成比は空間情報コンサルティング42%、グリーンエネルギー45%、ファイナンシャルサービス13%だった。

 グループ再編を推進し、グリーンエネルギー事業のJAG国際エナジーとグリーンプロパティ事業の国際ランド&ディベロップメントが合併(15年7月)して新JAG国際エナジーが発足した。またファイナンシャルサービス強化に向けて日本アジア証券にファイナンシャルサービス部門の子会社を集約した。16年4月には兵庫県で戸建住宅事業を展開している連結子会社KHCを株式交換で完全子会社化した。

 16年10月には連結子会社Japan Asia Securities(香港)の全株式を譲渡した。経営制限の集中を推進する。

 16年11月には国際航業が、地質調査・土木設計の明治コンサルティングの事業譲受に向けた基本合意書を締結した。17年1月末までに最終契約を締結する予定で、グループ事業体制の一層の強化を図る。

 また12月8日には国際航業が台湾サイノテック社と、環境・防災・自然エネルギー分野における協業の覚書を締結したと発表している。グループの海外における事業体制を強化する。

■再生可能エネルギー関連では流水式水力発電にも参入

 再生可能エネルギー関連事業では14年10月JAG国際エナジーが、東京都が創設した官民連携再生可能エネルギーファンドの運営事業者に選定された。また14年12月にはシーベルインターナショナル(東京都)の経営権を取得した。アジア・アフリカ各国に事業展開している同社の流水式超低落差型マイクロ水力発電システム(商品名:ストリーム)を活用し、マイクロ水力発電事業を再生可能エネルギー関連事業の第2の柱に育成する方針だ。

 なお国内の太陽光発電事業に関する進捗状況は、16年3月末時点で売電事業の稼働・竣工が74.8MW(49ヶ所=国際航業15ヶ所+JAG国際エナジー34ヶ所)、案件確保が89.4MW、受託事業の稼働・竣工が129.8MW、案件確保が5.9MW、総合計が299.9MWである。

■空間情報コンサルティングは第4四半期の構成比が高い収益構造

 四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期124億60百万円、第2四半期176億00百万円、第3四半期181億62百万円、第4四半期276億81百万円、営業利益が1億45百万円、11億47百万円、10億07百万円、30億53百万円、16年3月期は売上高が155億14百万円、194億05百万円、187億75百万円、218億30百万円、営業利益が3百万円、10億60百万円、2億79百万円、25億45百万円だった。

 空間情報コンサルティング事業は公共事業関連が主力のため第4四半期の構成比が高い収益構造である。ファイナンシャルサービス事業は株式市場の動向の影響を受けやすい。16年3月期は空間情報コンサルティング事業とグリーンエネルギー事業が好調だったが、ファイナンシャルサービス事業が想定以上に落ち込み、特別損失計上も影響して15年3月期比減収減益だった。

 売上総利益は同7.8%減少し、売上総利益率は31.1%で同2.5ポイント低下した。販管費は同2.6%減少し、販管費比率は26.0%で同0.5ポイント低下した。特別損失では減損損失が減少し、関係会社株式売却損が一巡したが、おきなわ証券での偶発損失引当金繰入額を計上した。ROEは1.6%で同14.0ポイント低下、自己資本比率は21.9%で同0.2ポイント上昇した。

 配当は年間30円(第3四半期末20円=東証1部への市場変更記念特別配当、期末10円)で配当性向は200.5%だった。利益配分については業績に対応した水準であること、中長期的な視点から安定的に継続することを基本に、競争力、事業環境、財務体質等を勘案して総合的に決定することを基本方針としている。当面の配当性向は10%~20%を目途としている。

 空間情報コンサルティングは受注高が同2.0%増の421億46百万円、売上高が同1.6%増の426億81百万円、営業利益(連結調整前)が同26.4%増の17億46百万円だった。グリーンエネルギーは受注高が同26.7%減の179億31百万円、売上高が同8.1%増の250億07百万円、営業利益が同10.9%増の18億56百万円だった。稼働済み発電所は49ヶ所以上、合計74MWを超える規模となった。ファイナンシャルサービスは売上高が同27.5%減の77億95百万円、営業利益が同78.9%減の5億51百万円だった。

■17年3月期第2四半期累計は赤字

 今期(17年3月期)第2四半期累計(4~9月)連結業績は、売上高が前年同期比16.6%減の291億11百万円、営業利益が7億50百万円の赤字(前年同期は10億63百万円の黒字)、経常利益が13億79百万円の赤字(同2億54百万円の黒字)、純利益が17億37百万円の赤字(同4億91百万円の黒字)だった。

 グリーエネルギー事業における大型受託開発案件の反動減、ファイナンシャルサービス事業における収益回復遅れ、空間情報コンサルティング事業における原価高、そしてグリーエネルギー事業や新規事業への先行投資負担で赤字だった。

 売上総利益は同18.6%減少し、売上総利益率は30.2%で同0.7ポイント低下した。販管費は同2.0%減少したが、販管費比率は32.8%で同4.9ポイント上昇した。特別利益では投資有価証券売却益が減少(前期8億96百万円、今期18百万円)した。

 セグメント別に見ると、空間情報コンサルティング事業は受注高が同3.1%増の304億83百万円、売上高が同1.7%減の174億82百万円、営業利益(連結調整前)が14億10百万円の赤字(前年同期は4億77百万円の赤字)だった。原価の高い繰越案件や人員増加に伴う販管費増加などが影響した。

 グリーンエネルギー事業は受注高が同45.3%減の60億38百万円、売上高が同33.4%減の83億81百万円、営業利益が同10.7%減の8億52百万円だった。受託開発事業の大型案件の反動が影響した。なお稼働済み発電所は累計50ヶ所以上、合計77MWを超える規模となった。

 ファイナンシャルサービス事業は売上高が同28.3%減の32億32百万円、営業利益が95百万円の赤字(同7億34百万円の黒字)だった。世界的なリスク回避の動きで収益回復が遅れた。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期123億75百万円、第2四半期167億36百万円、営業利益は10億92百万円の赤字、3億42百万円の黒字だった。

■17年3月期は先行投資負担だが、特別損失一巡で最終増益予想

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比2.0%増の770億円、営業利益が同28.0%減の28億円、経常利益が同49.3%減の13億円、純利益が同2.4倍の10億円としている。

 先行投資負担で営業減益・経常減益だが、純利益は特別損失一巡して増益予想である。配当予想は年間10円(期末一括)としている。前期の東証1部への市場変更記念特別配当20円を落として同20円減配の形である。予想配当性向は27.6%となる。

 セグメント別の計画は、空間情報コンサルティング事業の売上高が同2.9%増の439億円で営業利益(連結調整前)が同42.7%減の10億円、グリーンエネルギー事業の売上高が同0.4%減の249億円で営業利益が同19.2%減の15億円、ファイナンシャルサービス事業の売上高が同5.2%増の82億円で営業利益が同27.1%増の7億円としている。

 空間情報コンサルティングは高水準の受注獲得や新規事業育成による民間・海外展開で増収だが、投資費用や販管費負担が先行して減益見込みとしている。グリーンエネルギーは大型案件の反動で売上高は横ばい、電源開発事業投資(風力・バイオマス)に伴う費用増加で減益見込みとしている。ファイナンシャルサービスは仲介店舗拡大などの収益基盤強化と相場環境のボトムアウトで増収増益見込みとしている。

■中期経営計画ではROE12%以上目標

 中期経営計画では、16年度~20年度を「成長DNA醸成ステージ」と位置づけ、経営目標値として20年度売上高1400億円~1600億円、営業利益110億円~130億円、ROE12%以上を掲げている。

 成長領域である「G空間×ICT」「まちづくり」「気候変動対策」分野への取り組みを強化する方針だ。財務面ではROE向上に向けて総資産利益率の向上および財務レバレッジ効果の追求を推進する。

■株価は基調転換して戻り試す

 株価の動きを見ると、11月の年初来安値326円から切り返して戻り歩調となった。12月9日には415円まで上伸した。

 12月9日の終値413円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS36円18銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は2.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS963円28銭で算出)は0.4倍近辺である。時価総額は約114億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を突破した。基調転換を確認した形だ。0.4倍近辺の低PBRも見直して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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