PALTEKは16年12月期大幅減益予想だが急速な円安進行で一転利益増額の可能性

 PALTEK<7587>(東2)はFPGAを主力とする半導体輸入商社である。受託設計・開発のデザインサービス事業や新規分野のスマートエネルギー事業も強化している。16年12月期は仕入値引きドル建て債権評価額が円高影響を受けるとして大幅減益予想だが、為替影響除く実力値ベースでは増益予想であり、さらに急速な円安進行で一転利益増額の可能性が高まっている。株価は下値固めが完了して徐々に水準を切り上げている。戻りを試す展開が期待される。

■FPGAなどの半導体事業が主力

 ザイリンクス社のFPGA(PLDの一種で設計者が手元で変更を行いながら論理回路をプログラミングできるLSI)を主力として、特定用途IC、汎用IC、アナログ、メモリなどを扱う半導体事業、試作ボードや量産ボードなどを受託設計・開発・製造(ODM、EMS、OEM)するデザインサービス事業、新規分野としてスマートエネルギー事業(病院・介護施設向け停電対策システム)を展開している。海外は香港に拠点展開している。

 15年12月期売上構成比は半導体事業94.5%(FPGA46.5%、特定用途IC20.5%、汎用IC12.5%、アナログ7.2%、メモリ7.9%)、デザインサービス事業4.7%、その他0.8%だった。

 主要仕入先は、FPGAがザイリンクス社、汎用ICがNXPセミコンダクターズ社、マイクロチップテクノロジー社、アナログがリニアテクノロジー社、メモリがマイクロンテクノロジー社である。用途別には産業機器向けを主力としてFA機器、通信機器、放送機器、医療機器、車載機器向けなどに展開し、センサ分野ソリューションも強化している。主要販売先はNEC<6701>、京セラ<6971>、オリンパス<7733>などである。

■M&A・アライアンスも活用して事業領域拡大戦略を推進

 12年7月ODM/EMS事業推進や映像・画像処理関連自社製品事業の本格展開に向けてエクスプローラを子会社化した。同社はレート制御機能搭載「H.264コーデック装置」を開発している。なお11月7日、エクスプローラが最新映像圧縮技術であるH.265/HEVCに対応したエンコーダ装置を開発したと発表している。

 14年6月子会社テクノロジー・イノベーションを設立し、サイミックス社から半導体事業およびMEMS(微小電気機械システム)事業を譲り受けた。特定顧客向け人感センサの信号処理ICの開発を推進する。

 15年2月超高精度衛星測位システムを開発するマゼランシステムズジャパンと総販売代理店契約を締結した。センサ分野ソリューション強化の一環として、産業機器や農業機械の自動運転向けなどにRTK(リアルタイム・キネマティック)GNSSシステムを提供する。15年5月米フリアーシステムズ社の赤外線カメラに関するセンサ製品の販売を開始した。検査機器、防災機器、セキュリティ用監視カメラなどの分野で赤外線カメラに関するソリューションを提供する。

 15年8月米IHS社と販売代理店契約を締結した。同社はデータ分析と予測サービスを提供し、世界150ヶ国の企業と政府機関の意思決定と戦略策定を支援している。16年2月沖電気工業<6703>とIoT市場向けに920MHz帯の無線通信製品に対する販売パートナー契約を締結した。またIoT市場向けにゲートウェイを提供するロバステル社(中国)と販売代理店契約を締結した。

 16年4月米フリアーシステムズ社の高度道路交通システム(ITS)市場向け赤外線製品の販売を開始した。また改正社会福祉法に基づき、社会福祉法人に「地域における公益的な取組の実施する責務」が義務付けられたことを受け、介護施設の地域貢献を促進する停電対策システムを提供すると発表した。

 16年10月には、IoT通信プラットフォーム「SORACOM」を提供するソラコム(東京都)のパートナープログラムである「SORACOM パートナースペース(SPS)」における「SPS認定済デバイスパートナー」に認定された。産業用途のIoTプラットフォームにおいて連携を強化する。

■仕入値引きドル建て債権評価額が為替によって変動する収益特性

 15年12月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期65億08百万円、第2四半期68億円、第3四半期73億34百万円、第4四半期81億99百万円、営業利益は4億59百万円、2億88百万円、2億20百万円、3億94百万円だった。

一部の主要仕入先に対して保有する仕入値引きドル建て債権評価額が為替によって変動し、売上総利益の増減に影響を与える収益特性がある。ドル高・円安は売上総利益押し上げ要因、ドル安・円高は売上総利益押し下げ要因となる。ドル高・円安によって14年12月期は3億27百万円の売上総利益増加要因、15年12月期は4億31百万円の売上総利益増加要因となった。

 15年12月期の為替影響除く実力値ベース売上総利益率は13.3%で14年12月期比1.3ポイント低下、為替影響含む売上総利益率は14.8%で同1.2ポイント低下した。半導体事業で売上総利益率の低い案件の売上が増加し、新規顧客案件が取引開始当初はやや低採算となることも影響して売上総利益率は低下した。販管費比率は10.1%で同1.6ポイント低下した。ROEは7.6%で同1.0ポイント上昇、自己資本比率は56.6%で同16.1ポイント低下した。配当は年間15円(期末一括、普通配当12円+記念配当3円)で配当性向は24.4%だった。

■16年12月期第3四半期累計は円高影響で大幅減益

 今期(16年12月期)第3四半期累計(1~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比20.8%増の249億44百万円だが、営業利益が同99.3%減の6百万円、経常利益が同95.6%減の35百万円、純利益が15百万円の赤字(前年同期は5億07百万円の黒字)だった。半導体事業の需要が高水準で大幅増収だが、ドル安・円高で仕入値引きドル建て債権評価額が減少して売上総利益を押し下げた。純利益は税率変更の影響で繰延税金資産取崩が発生したことも影響した。

 事業別の売上高は、半導体事業が同20.9%増の235億87百万円(FPGAが同2.6%増の92億46百万円、特定用途ICが同10.0%減の41億09百万円、汎用ICが同3.4%増の28億02百万円、アナログが同23.3%増の18億75百万円、メモリが同3.3倍の55億49百万円)で、デザインサービスが同23.2%増の12億52百万円、その他が同12.3%減の1億04百万円だった。半導体事業ではメモリ製品が海外メーカー向けに大幅増加し、FPGAが新規顧客向けに増加した。

 半導体事業の用途別売上高は、産業機器向けが同6.6%増の113億09百万円、通信機器向けが同10.6%減の36億94百万円、民生機器向けが同7.0倍の45億07百万円、コンピュータ向けが同11.2%増の11億88百万円、その他が同5.6%減の28億81百万円だった。

 為替影響を含む売上総利益は同24.8%減少し、為替影響を含む売上総利益率は9.3%で同5.6ポイント低下した。為替影響額は8億08百万円の売上総利益減少要因(前期は3億85百万円の売上総利益増加要因)だった。為替影響除く実力値ベースの売上総利益は同15.9%増加し、為替影響除く実力値ベースの売上総利益率は12.5%で同0.6ポイント低下した。半導体事業において売上総利益率の低い民生機器向け案件の売上高が大幅に増加した。

 販管費は同9.3%増加したが、販管費比率は9.3%で同0.9ポイント低下した。営業利益増減分析では、増益要因が売上高増加5億39百万円、減益要因が売上総利益率低下1億09百万円、仕入値引きドル建て債権評価額減少を含む為替影響11億93百万円、販管費増加1億97百万円としている。営業外では為替差損益が改善(前期差損1億10百万円、今期差益1億05百万円)した。営業外収益では補助金収入が減少(前期40百万円、今期2百万円)した。営業外費用では支払手数料が減少(前期36百万円、今期10百万円)したが、支払補償費23百万円を計上した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期94億31百万円、第2四半期78億55百万円、第3四半期76億58百万円で、営業利益は1億26百万円、30百万円の赤字、90百万円の赤字だった。売上総利益率は9.4%、9.3%、9.1%だが、為替影響除くベースで見ると売上総利益率は10.7%、13.4%、13.9%となる。

■16年12月期通期大幅減益予想だが為替影響除く実力値ベースは増益、円安進行で一転増額の可能性

 今期(16年12月期)通期の連結業績予想(8月3日に利益を増額)は、売上高が前期(15年12月期)比14.4%増の330億円、営業利益が同75.8%減の3億30百万円、経常利益が同73.8%減の3億円、純利益が同74.1%減の1億75百万円としている。

 メモリ製品が牽引して2桁増収だが、ドル安・円高による仕入値引きドル建て債権評価額の減少を含む為替影響額が、8月3日時点で売上総利益減少要因として通期7億85百万円(上期4億42百万円、下期1ドル=102円96銭想定で3億43百万円)発生する見込みとしている。第3四半期累計では円高による仕入値引きドル建て債権評価額減少が8億08百万円発生し、第4四半期想定為替レートは1ドル=104円82銭としたが、為替変動が不透明なため通期予想は8月3日修正値を据え置いた。そして売上総利益率は10.8%、販管費比率は9.8%の見込みとしている。なお為替影響を除く実力値ベースでは、16年12月期通期の営業利益は15年12月期比20.0%増の11億15百万円の見込みとしている。

 なお為替は足元で急速にドル高・円安が進行しているため、一転して利益増額の可能性が高いだろう。

 配当予想は前回予想(2月9日公表)を据え置いて年間13円(期末一括)としている。前期比2円減配の形だが、前期の年間15円には記念配当3円が含まれているため、普通配当ベースでは1円増配となる。配当性向は81.4%となる。

■FPGAの市場拡大に注目

 中期的な収益向上に向けた取り組みとして、半導体事業では高付加価値製品の取り扱い拡大、中核製品であるFPGAのさらなる拡販、第2の柱となる製品の売上拡大(センサー関連やIoT関連製品の拡充など)、医療・産業・通信・放送など成長分野への注力、デザインサービス事業では医療・放送・通信分野の受託設計・開発・ODM強化、自社製品の開発・販売強化、スマートエネルギー事業では病院・介護施設向け停電対策システムの構築・販売を強化する方針だ。

 中核製品のFPGAに関しては、通信・産業・放送・医療・車載機器分野において、新規顧客獲得を含めて拡販を強化する。FPGAは論理回路構成を自由に書き換えられるため、世界的なトレンドとしてプロセッサーを内蔵したFPGAをメインチップとする傾向を強めている。そして今後は自動車の先進運転支援システム(ADAS)分野などを中心として市場拡大が予想されている。

 また米アップルのiPhone7および7プラスに、米ラティスセミコンダクター社製のFPGAが新たに搭載されたことで、スマホ関連市場におけるFPGA需要拡大も期待され、FPGAに対する注目度が一段と高まりそうだ。

 センサ関連に関しては、赤外線カメラのグローバルリーディングカンパニーである米フリアーシステムズ社の赤外線カメラモジュールを、産業機器(検査機器、防災機器、産業向け携帯情報端末)やセキュリティ用監視カメラ向けに拡販する方針だ。

 為替動向に注意が必要となるが、高度なデザイン力やソリューション力を武器として中期的に収益拡大基調だろう。

■株主優待制度を導入

 7月8日に株主優待制度の導入を発表した。毎年12月31日現在100株以上保有株主を対象として、保有株式数と継続保有期間に応じてクオカードを贈呈(詳細は会社HPを参照)する。16年12月期末から実施する。

■株価は下値固め完了して戻り試す

 株価の動きを見ると、安値圏600円近辺で下値固めが完了し、徐々に水準を切り上げている。12月14日には660円まで上伸した。

 12月15日の終値655円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS15円98銭で算出)は41倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は2.0%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS825円98銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約78億円である。

 週足チャートで見ると安値圏モミ合いから上放れ、上向きに転じた13週移動平均線がサポートラインの形となりそうだ。戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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