【鈴木雅光の投信Now】2017年1月スタートのiDeCo(イデコ)とは?

 2017年1月からiDeCoがスタートする。などと言うと、何か全く新しい制度がスタートするかのように思えるが、そうではない。iDeCoとは、個人型確定拠出年金(DC)のことだ。確定拠出年金とは、国民年金、厚生年金などの公的年金に対し、「私的年金」と言われるもので、加入者が自分の判断で資金を運用し、60歳以降に受け取れる年金の額は、その運用実績に応じて支払われる。

 企業型と個人型があり、企業型は加入者が属している企業が積立金を拠出し、それを従業員である加入者が自分の判断で運用する。対して個人型は、自分で積立金を拠出し、自分の判断で運用する。企業型は、それを導入している企業の従業員が加入するもので、個人型は自営業者、あるいは確定拠出年金を導入していない企業で働く従業員が、これまでの加入対象者だった。

 そして、2017年1月にスタートする「iDeCo」とは、従来の個人型DCの加入対象者を、第三号被保険者(専業主婦)あるいは公務員にまで広げたものだ。これによって、加入対象者数が従来の約4000万人から約6700万人に増えるため、運営管理機関となる金融機関、資産運用会社は、ビジネスチャンスとばかりに大騒ぎしている。

 ただ、あくまでも加入対象者の枠が広がっただけで、基本的な仕組みは同じだ。ちなみに確定拠出年金という制度が誕生したのは2001年のことで、以来15年が経過したが、個人型DCの加入者数は2016年3月現在で25万7579人。加入対象者である母数が約4000万人であるのに対し、加入者数が25万7579人なのだから、普及率は極めて低い。したがって、「iDeCo」がさまざまなメディアなどを通じて喧伝されているが、どこまで加入者数が伸びるのかは未知数だ。

 とはいえ、仕組み自体は決して悪いものではない。

 掛金は全額、所得控除の対象となり、運用によって生じた収益は非課税、受取時には退職所得控除か公的年金等控除が受けられるなど、さまざまな節税メリットを享受できる。そもそも運用で生じた利益は通常、その20%が税金として差し引かれるのだから、その分が非課税になるだけでも、運用によって得られるリターンは大きく改善される。60歳になるまで積立金は一切引き出せないが、老後資金を準備するためのツールとしては最適だ。

 ただし、運営管理機関によってコストや投資対象となる商品にも違いがある。運営管理機関は140以上あるので、それを調べるのだけでも一苦労だ。

 ちなみに、運営管理機関選びで最も重要なのは、出来るだけコストの安いところを選ぶこと。特に毎月の積立に対して掛かるコストは、積立金の多寡に関係なく定額で掛かるので、安いに越したことはない。現在、スルガ銀行、SBI証券(運用資産50万円以上)、楽天証券(運用資産10万円以上)が最も安いので、お勧めだ。

(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)

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