JFEシステムズは自律調整一巡して上値試す、17年3月期営業増益基調で4期連続増配予想

 JFEシステムズ<4832>(東2)はJFEグループの情報システム会社である。17年3月期はJFEスチール製鉄所システム刷新本格化などで営業増益基調に変化なく、4期連続増配予想である。株価は12月の昨年来高値から一旦反落したが、自律調整一巡して上値を試す展開だろう。06年1月以来の2000円台が視野に入る。

■JFEグループの情報システム会社

 川崎製鉄(現JFEスチール)のシステム部門を分離した情報システム会社である。鉄鋼向け情報システム構築事業を主力として、ERPと自社開発ソリューションを組み合わせた一般顧客向け複合ソリューション事業、自社開発のプロダクト・ソリューション事業も強化している。16年4月には連結子会社KITシステムズの商号をJFEコムサービスに変更した。

 16年3月期の事業別売上高は、鉄鋼が161億円、一般顧客が143億円(内訳は自動車が約40~50億円、金融が約30億円、ソリューションが約40億円、プロダクトが約20億円)、基盤サービスが28億円、子会社(JFEコムサービス)が38億円だった。

 アライアンス戦略では、13年5月大阪ガス<9532>子会社オージス総研と協業、ビジネスブレイン太田昭和<9658>と資本・業務提携、15年9月ITホールディングス<3626>グループのTISと協業している。

 なお12月19日には、日興アイ・アールによる「2016年度全上場企業ホームページ充実度ランキング」総合ランキングにおいて「優秀サイト」に選定されたと発表している。

■中期経営計画で18年3月期EPS150円以上目指す

 16年3月期~18年3月期の中期経営計画では高収益事業への構造転換を目指し、目標数値に18年3月期売上高400億円以上、経常利益20億円以上、純利益12億円以上、EPS150円以上を掲げている。

 重点戦略として、JFEスチール製鉄所業務プロセス改革に向けたシステム刷新の遂行、ERPに自社ソリューションを組み合わせた一般顧客向け複合ソリューション事業の拡大、基盤サービス事業拡大に向けたクラウドサービスの立ち上げ、自動車など製造業顧客基盤の拡大、e-文書(電子帳票)ソリューションなど自社プロダクト拡販などを推進する。

 JFEスチール製鉄所の業務プロセス改革への対応で多くの技術・ノウハウを蓄積し、基盤サービス事業やソリューション事業に活用して一般顧客向け売上拡大を目指す戦略だ。製造業向けERPなど基幹系システムやサプライチェーン計画系システムに組み合わせて拡販し、高収益な事業構造への転換を推進する。

■鉄鋼はJFE製鉄所システム刷新に対応

 鉄鋼事業ではJFEスチール製鉄所の業務プロセス改革に向けて、システムを刷新して生産管理システムの高度化・共通化を推進する。16年からの本格対応に向けて製鉄所システムプロジェクトを新設し、JFEスチールの製鉄所業務プロセス改革斑との連携を強化している。

 16年6月、経済産業省と東京証券取引所が企画する「攻めのIT経営銘柄」にJFEホールディングス<5411>が2年連続で選定された。当社はJFEグループの情報システム会社としてJFEグループ各社のIT企画・設計・開発・運用を担っており、製鉄所基幹システム刷新による業務プロセス改革についてもJFEスチールと一体となって取り組むとしている。

■食品の品質情報管理分野のデファクト化目指す

 食の安全・安心を支える食品業界全体の品質情報管理向上への取り組みを強化している。15年7月には自社開発「MerQurius Net(メルクリウスネット)原料規格書サービス」登録サプライヤ企業が3000社を超えた。原料規格書は食品メーカーがサプライヤから購入する原料の品質に係る情報である。

 15年10月には食品品質情報管理ソリューション「MerQurius」のクラウドサービス「MerQurius クラウド」の販売を開始し、16年1月からクラウドサービスを開始した。

 製菓、冷凍食品、調味料など大手食品メーカー中心に200社以上の利用実績を持つ「MerQurius」をクラウド環境で利用可能とするもので、同時に加入する「MerQurius Net 原料規格書サービス」と連携して原料規格書の授受を効率化する。クラウドサービスによって売上高100億円未満の中堅・中小食品メーカー約1200社をターゲットに拡販を推進してデファクト化を目指す方針だ。

 16年2月には自社開発の配合・食品法規マネジメント「Quebel(キューベル)」について、15年4月施行の新食品表示法にも対応した商品開発支援テンプレートの販売を開始した。

■第4四半期の構成比が高い収益構造

 四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期77億69百万円、第2四半期89億33百万円、第3四半期84億38百万円、第4四半期106億67百万円、営業利益が83百万円の赤字、5億28百万円、4億77百万円、7億79百万円、16年3月期は売上高が80億12百万円、91億74百万円、89億53百万円、108億91百万円、営業利益が56百万円、4億49百万円、4億88百万円、9億64百万円だった。情報システム関連で年度末にあたる第4四半期の構成比が高い収益構造である。

 16年3月期は5期連続増収増益で、売上高、経常利益、純利益とも過去最高だった。売上総利益は15年3月期比3.9%増加し、売上総利益率は18.7%で同0.1ポイント上昇した。販管費は同0.1%増加したが、販管費比率は13.4%で同0.4ポイント低下した。ROEは10.6%で同2.2ポイント上昇、自己資本比率は50.6%で同1.1ポイント上昇した。

 配当は同6円増配の年間34円(期末一括)で配当性向は23.6%だった。利益配分は内部資金確保と安定的配当を念頭に置きながら、財政状態、利益水準および配当性向等を総合的に勘案して決定するとしている。

 事業別売上高は、鉄鋼が同5億円増加の161億円、一般顧客が同10億円増加の143億円、基盤サービスが同1億円増加の28億円、子会社(JFEコムサービス)が同4億円減少の38億円だった。JFEコムサービスは機器販売からサービス事業へのシフトを進めている。

■17年3月期第2四半期累計は計画超の大幅増益

 今期(17年3月期)第2四半期累計(4~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比6.0%増の182億15百万円で、営業利益が同45.0%増の7億32百万円、経常利益が同48.3%増の7億34百万円、純利益が同69.9%増の4億78百万円だった。売上高、経常利益、純利益とも第2四半期累計として過去最高を更新した。

 下期予定案件の一部前倒しも寄与して計画超の大幅増益だった。売上総利益は同12.8%増加し、売上総利益率は18.4%で同1.1ポイント上昇した。販管費は同6.2%増加し、販管費比率は14.4%で同0.1ポイント上昇した。

 事業別売上高は、鉄鋼が同8億円増加の81億円、一般顧客が同横ばいの67億円、基盤サービスが同1億円増加の15億円、子会社(JFEコムサービス)が同1億円増加の19億円だった。鉄鋼はJFEスチール製鉄所システム刷新の本格化に対応した。

 なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期86億54百万円、第2四半期95億61百万円、営業利益が2億22百万円、5億10百万円だった。

■17年3月期は特別損失計上で純利益減額だが、営業増益基調に変化なし

 今期(17年3月期)連結業績予想(11月28日に保有建物および土地の一部の減損損失計上で純利益を減額)は、売上高が前期(16年3月期)比6.4%増の394億円、営業利益が同1.2%増の19億80百万円、経常利益が同2.4%増の20億円、純利益が同8.3%減の10億40百万円としている。配当予想は同4円増配の年間38円(期末一括)で予想配当性向は28.7%となる。4期連続増配で配当額は上場後の最高となる。

 事業別売上高の計画は、鉄鋼がJFEスチール製鉄所システム刷新の本格化で同18億円増加の179億円、一般顧客が高水準維持で同1億円増加の144億円、基盤サービスがJFEグループ会社向け情報基盤構築で同3億円増加の31億円、子会社がサービス事業拡大で同2億円増加の40億円としている。

 営業利益と経常利益は小幅増益予想としている。増収や鉄鋼の利益率改善が寄与するが、前期に高収益案件の前倒しなどで一般(特に自動車)が想定以上に好調だったこと、開発労務費が増加(1億40百万円)すること、製鉄所システム刷新関連や採用・人材開発強化など投資が増加(3億10百万円)することを考慮しているようだ。

 ただし通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高46.2%、営業利益37.0%、経常利益36.7%である。第4四半期の構成比が高い収益構造を考慮すれば順調な水準と言えるだろう。

■株価は自律調整一巡して上値試す、06年以来の2000円台視野

 株価の動きを見ると、12月12日の昨年来高値1739円から利益確定売りで一旦反落したが、1500円台で自律調整が一巡して切り返しの動きを強めている。1月5日には1640円まで上伸した。

 1月5日の終値1640円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS132円44銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間38円で算出)は2.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1410円16銭で算出)は1.2倍近辺である。時価総額は約129億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線近辺から急反発した。サポートラインを確認した形だ。営業増益基調を評価する流れに変化はなく、自律調整が一巡して上値を試す展開だろう。06年1月以来の2000円台が視野に入る。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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