加賀電子は昨年来高値更新の展開、独立系のエレクトロニクス商社

 加賀電子<8154>(東1)は半導体・電子部品・情報機器の販売のほか、EMS(電子機器の受託開発製造サービス>やニュービジネスも展開する独立系のエレクトロニクス商社である。17年3月期は減収・営業減益予想だが、第2四半期累計が計画超となり、通期も計画比で営業減益幅縮小が期待される。株価は昨年来高値更新の展開となった。指標面の割安感も見直して上値を試す展開が期待される。

■独立系エレクトロニクス商社、EMSも展開

 半導体・電子部品・情報機器の販売およびEMS(電子機器の受託開発製造サービス)などを展開する独立系のエレクトロニクス商社である。独立系のメリットを活かしながらグループ各社の総合力を駆使し、日本一のエレクトロニクス総合商社を目指している。

 16年3月期のセグメント別売上高構成比は電子部品事業(半導体、一般電子部品、EMSなどの開発・製造・販売)77%、情報機器事業(パソコン・周辺機器、家電、写真・映像関連商品などの販売)17%、ソフトウェア事業(CG映像制作、アミューズメント関連商品の企画・開発)1%、その他事業(エレクトロニクス機器の修理・サポート、アミューズメント機器の製造・販売、スポーツ用品の販売など)5%で、地域別売上高構成比は日本69%、北米2%、欧州1%、東アジア28%だった。

 16年10月にはユビキタス<3858>と高機能HEMSゲートウェイ機器を共同開発した。16年11月には高機能ディスプレイコントローラ用半導体の設計・開発・製造および販売を行うセレブレクス(大阪市)に出資した。

■中期経営計画で19年3月期経常利益100億円目指す

 16年3月期~19年3月期の「中期経営計画2018」では、利益重視経営の確立と「次世代の加賀電子」として飛躍するための準備期間と位置付けるとともに、18年9月の会社設立50周年に向けた総決算として、経営目標値に19年3月期売上高2900億円、経常利益100億円、ROE8%以上を掲げている。

 収益基盤強化に向けて重点市場の深堀(車載、環境、通信、産業機器、アミューズメント)、重点客先の関係強化、海外ビジネスの拡大、新規事業の創出(医療・ヘルスケア、素材)を推進する。また経営基盤強化に向けて販管費削減、グループ再編、コーポレートガバナンス体制強化、コンプライアンス遵守を推進する。

 重点市場と位置付けるIoT分野では、屋内・屋外に対応した自社開発のマルチGNSS(全地球衛星測位システム)端末、ユビキタスと共同開発した高機能HEMSゲートウェイ機器などを拡販する。また京セラコミュニケーションズが国内で敷設するIoT専用通信網に対応した端末を提供することが決定した。AR(拡張現実)の分野では16年8月、浅草花やしきでアイウェア型ウェアラブルデバイス「Telepathy Walker」を装着するAR遊園地が稼働した。

 海外は16年12月メキシコに北米向けEMSの生産拠点となる子会社を設立した。北米・中南米地域でのビジネス拡大を目指す。またインドおよびベトナムでのビジネス展開を検討する。欧州ではチェコ工場での基板実装を増設し、欧州地域での顧客獲得を目指す。

 利益配分に関する基本方針は、連結配当性向25~35%を確保しつつ、安定的な配当を実施していく。自己株式取得は市場環境や資本効率を鑑みながら適宜検討する。内部留保は企業価値向上に資する事業投資、設備投資、M&Aにも活用する方針としている。

■電子部品の売上総利益率上昇

 四半期別業績推移を見ると、16年3月期は売上高が第1四半期583億49百万円、第2四半期646億26百万円、第3四半期592億30百万円、第4四半期631億82百万円、営業利益が15億98百万円、25億97百万円、19億50百万円、16億43百万円だった。

 16年3月期は下期に急減速して15年3月期比減収だったが、売上総利益率が改善して各利益は増益を確保した。売上総利益は同2.8%増加し、売上総利益率は13.7%で同0.9ポイント上昇した。販管費は同2.0%減少したが、販管費比率は10.5%で同0.2ポイント上昇した。営業外では為替差損益が悪化した。ROEは9.0%で同1.2ポイント上昇、自己資本比率は49.7%で同3.1ポイント上昇した。

 配当は15年3月期比15円増配の年間55円(第2四半期末20円、期末35円=普通配当20円+特別配当15円)で、配当性向は28.6%だった。配当については、中期経営計画2018において「連結配当性向25%~35%を確保しつつ安定的な配当を実施していく」を目標に掲げている。

 セグメント別に見ると、電子部品事業は売上高が同3.9%減の1894億86百万円で営業利益(連結調整前)が同34.3%増の65億15百万円、情報機器事業は売上高が同2.7%減の408億80百万円で営業利益が同14.7%増の8億11百万円、ソフトウェア事業は売上高が同0.3%増の28億97百万円で営業利益が同57.2%増の6億95百万円、その他事業は売上高が同7.0%減の121億23百万円で営業利益が3億43百万円の赤字(15年3月期は1億69百万円の黒字)だった。

 電子部品は国内遊戯機器向け電子部品・半導体などが減少したが、売上総利益率が上昇した。情報機器はコンシューマ市場の販売戦略見直しなど事業再編効果で収益改善した。ソフトウェアはアニメーションCG制作やゲームソフト開発に注力し、不採算事業再編効果で収益改善した。その他はアミューズメント業界向けゲーム機器事業が不振だった。

■17年3月期第2四半期累計は計画比で減収減益幅縮小

 今期(17年3月期)第2四半期累計(4~9月)連結業績(8月2日と10月24日に増額修正)は、売上高が前年同期比10.8%減の1096億59百万円、営業利益が同23.4%減の32億12百万円、経常利益が同31.2%減の30億45百万円、そして純利益が同5.7%増の31億11百万円だった。

 エレクトロニクス業界全体が厳しい状況で減収、営業減益、経常減益だったが、計画比では減収減益幅が縮小した。売上高は国内外におけるEMSビジネス、および住宅向け関連商材の販売が想定超となり、下期に予定していた一部案件の前倒しも寄与した。グループ内の事業統合・再編による経営効率化も寄与した。

 売上総利益は同10.7%減少したが、売上総利益は13.8%で同横ばいだった。販管費は6.6%減少したが、販管費比率は10.9%で同0.5ポイント上昇した。また営業外費用では為替差損が増加(前期44百万円、今期4億15百万円)した。純利益はグループ再編に伴う法人税等調整額の減少が寄与して増益だった。

 セグメント別に見ると、電子部品事業は売上高が同13.6%減の827億84百万円で営業利益(連結調整前)が同37.0%減の23億66百万円、情報機器事業は売上高が同2.0%増の205億24百万円で営業利益が同2.4倍の5億39百万円、ソフトウェア事業は売上高が同26.9%増の14億42百万円で営業利益が同6.6%増の3億07百万円、その他は売上高が同16.8%減の49億09百万円で営業利益が57百万円の赤字(前年同期は1億02百万円の赤字)だった。

 電子部品は国内外の主要顧客の生産調整、国内遊戯機器向けビジネスの低迷、半導体メーカーの代理店政策変更による国内半導体取扱高の減少が影響した。情報機器はコンシューマ向け商品の取扱高が増加し、住宅向け関連商材の取扱高も増加した。ソフトウェアはアニメーションCG制作やゲームソフト開発に注力し、不採算事業再編効果で収益が改善した。その他はアミューズメント業界向けゲーム機器事業やゴルフ用品販売事業が低迷した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期522億21百万円、第2四半期574億38百万円、営業利益は7億65百万円、24億47百万円だった。

■17年3月期通期減益予想だが増額余地

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想(10月24日に純利益を11億円増額修正)は、売上高が前期(16年3月期)比6.3%減の2300億円、営業利益が同26.8%減の57億円、経常利益が同19.1%減の64億円、そして純利益が同6.7%増の58億円としている。売上総利益率は同横ばいの13.7%、販管費比率は同0.7ポイント上昇の11.2%程度を想定している。純利益はグループ再編に伴う法人税等調整額の減少が寄与する。

 セグメント別計画は、電子部品事業の売上高が同7.1%減の1760億円で営業利益(連結調整前)が同33.2%減の43億50百万円、情報機器事業の売上高が同0.3%増の410億円で営業利益が同11.0%増の9億円、ソフトウェア事業の売上高が同3.6%増の30億円で営業利益が同9.4%減の6億30百万円、その他事業の売上高が同17.5%減の100億円で営業利益が1億80百万円の赤字(前期は3億43百万円の赤字)としている。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.7%、営業利益が56.4%、経常利益が47.6%、純利益が53.6%である。第2四半期累計が計画超だったことに加えて、ドル高・円安進行や売上総利益率上昇などで増額余地がありそうだ。

 配当予想(10月24日に増額修正)は年間50円(第2四半期末25円=普通配当20円+特別配当5円、期末25円=普通配当20円+特別配当5円)としている。16年3月期の年間55円(第2四半期末20円=普通配当20円、期末35円=普通配当20円+特別配当15円)との比較では5円減配の形だが、普通配当ベースでは同額である。予想配当性向は24.4%となる。

■株価は昨年来高値更新の展開

 なお16年11月発表した自己株式取得(取得株式総数の上限100万株、取得価額総額の上限15億円、取得期間16年11月8日~17年3月30日)については、16年12月20日時点の累計で取得株式総数81万8900株、取得価額総額14億9993万9400円となって終了した。

 株価の動きを見ると、安値圏1200円近辺でのモミ合いから上放れて急伸し、一気に昨年来高値更新の展開となった。そして1月6日には2065円まで上伸している。

 1月13日の終値2008円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS205円37銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間50円で算出)は2.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2185円94銭で算出)は0.9倍近辺である。時価総額は約576億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が接近し、中段保ち合いから上放れの動きを強めている。指標面の割安感も見直して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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