【アナリスト水田雅展の銘柄分析】神鋼商事は三角保ち合いに煮詰まり感、今期利益増額の可能性や割安感を評価して上放れ

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 鉄鋼・非鉄金属関連商社の神鋼商事<8075>(東1)は1月30日、今期(15年3月期)第3四半期累計(4~12月)の連結業績、および通期見通しの修正(売上高を減額、利益は据え置き)を発表した。株価は三角保ち合いの形だが煮詰まり感も強めている。売上高見通し減額修正に対する反応は限定的であり、今期利益見通し増額の可能性や指標面の割安感を評価して上放れの展開だろう。

 鉄鋼製品、鉄鋼原料、非鉄金属、機械・情報、溶接材料・機器などを扱う商社である。13年6月発表の中期経営計画(14年3月期~16年3月期)では、神戸製鋼所<5406>グループの中核となるグローバル商社を目指し、数値目標として16年3月期売上高1兆円、経常利益90億円、海外取引比率40%以上を掲げている。14年7月には筒中金属産業が新設分割で設立した国内卸売事業会社の株式70%を取得して子会社化した。

 また14年9月には、メキシコにおける線材二次加工拠点となる合弁会社を設立(出資比率は当社40%、メタルワン25%、神戸製鋼所10%、大阪精工10%、メキシコGrupo Simec10%、米O&k American5%)し、15年末稼働を予定している。メキシコは世界の自動車・自動車部品メーカーの進出で自動車関連産業の成長が期待されており、自動車用ファスナーや冷間鍛造部品などの素材となる冷間圧造用鋼線を製造する。

 1月30日に今期(15年3月期)第3四半期累計(4~12月)の連結業績、および通期連結業績見通しの修正(売上高を減額、利益は据え置き)を発表した。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比2.3%増の6405億36百万円、営業利益が同20.3%増の48億73百万円、経常利益が同27.5%増の47億41百万円、純利益が同67.0%増の30億72百万円だった。増収効果に加えて、純利益は固定資産売却益4億05百万円の計上も寄与した。

 セグメント別の売上状況は、鉄鋼セグメントが鋼板製品の価格上昇や棒鋼製品の堅調推移などで同5.7%増収、鉄鋼原料セグメントが輸入鉄鋼原料の価格下落や取扱量減少などで同9.6%減収、非鉄金属セグメントが自動車用や半導体用の好調などで同16.8%増収、機械・情報セグメントが製鉄関連資機材や太陽電池関連資材の増加などで同13.9%増収、溶材セグメントが造船・建築鉄骨向けの取扱量増加などで同8.1%増収だった。

 通期の連結業績見通しは、売上高を前回予想(4月28日公表)から770億円減額して前期比2.6%増の8630億円としたが、利益は前回予想を据え置いて営業利益が同22.0%増の70億円、経常利益が同20.3%増の64億円、純利益が同26.6%増の40億円としている。配当予想も前回予想(4月28日公表)を据え置いて、前期と同額の年間6円(第2四半期末3円、期末3円)としている。

 鉄鋼原料セグメントにおける輸入鉄鋼原料の価格下落および取扱量減少を主因として通期の売上高見通しを減額したが、世界的に自動車生産が高水準であることに加えて、エレクトロニクス産業の生産回復や国内の建設需要拡大なども追い風となり、鉄鋼セグメントや非鉄金属セグメントを中心として好調に推移するため、通期の利益見通しを据え置いた。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.2%、営業利益が69.6%、経常利益が74.1%、純利益が76.8%と概ね順調な水準である。設備投資関連は第4四半期(1月~3月)の構成比が高いことや、ドル高・円安が進行していることなどを考慮すれば通期の利益見通しに増額の可能性があるだろう。グローバル展開の強化で中期的にも収益拡大基調が期待される。

 株価の動きを見ると、14年9月高値285円から上値を切り下げたが、一方では10月安値243円から下値を切り上げている。三角保ち合いの形で、足元は260円~270円近辺で推移している。2月2日は地合い悪化も影響して前日比4円安だったが、通期売上高見通しの減額修正に対する反応は限定的だろう。

 2月2日の終値262円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS45円17銭で算出)は5~6倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円で算出)は2.3%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS399円53銭で算出)は0.7倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を挟むレンジでモミ合う形だが、下値は限定的であり三角保ち合いに煮詰まり感も強めている。今期利益見通し増額の可能性、さらに低PERや低PBRといった指標面の割安感を評価して上放れの展開だろう。

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