神鋼商事は17年3月期第3四半期累計減益、通期は減益幅縮小の可能性

 神鋼商事<8075>(東1)は鉄鋼・鉄鋼原料・非鉄金属関連の専門商社である。KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核となるグローバル商社を目指している。1月31日発表した17年3月期第3四半期累計連結業績が減収減益となり、通期も減収減益予想である。ただし円安進行もプラス要因となって減益幅が縮小する可能性がありそうだ。株価のネガティブ反応は限定的だ。減収減益予想は織り込み済みであり、指標面の割安感も見直し材料となる。自律調整一巡して15年6月高値を目指す展開が期待される。

■KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社

 神戸製鋼所<5406>系で鉄鋼製品、鉄鋼原料、非鉄金属、機械・情報、溶接材料・機器などを扱う専門商社である。M&Aも積極活用し、KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核となるグローバル商社を目指している。

 14年7月筒中金属産業が新設分割で設立した国内卸売事業会社(現コベルコ筒中トレーディング)を子会社化、15年5月コベルコ筒中トレーディングが韓国でアルミ高精度厚板の切断加工・卸売事業を展開している韓国筒中滑川アルミニウム(現ケーティーエヌ)を子会社化、15年8月ミャンマー・ヤンゴン市に神鋼商事ヤンゴン支店を開設した。

 16年1月非鉄金属材料の素材・加工品を販売する中山金属が新設分割で設立した国内外卸売事業会社の株式80%を取得し、国内外卸売事業会社および海外子会社を子会社化した。株式取得対象の国内外卸売事業会社の商号は中山金属(新)で、海外子会社は中国(上海)、タイ、インドネシアの3社である。16年4月神戸製鋼所の子会社で溶接材料、溶接機器、産業用機械などを扱う商社エヌアイウエル(現エスシーウエル)の株式80%を取得して子会社化した。

 また14年9月メキシコにおける線材二次加工拠点となる合弁会社KCHM(出資比率は当社40%、メタルワン25%、神戸製鋼所10%、大阪精工10%、メキシコGrupo Simec10%、米O&k American5%)を設立し、16年10月開所式を開催した。

■売上総利益率は改善傾向

 四半期別推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期2140億42百万円、第2四半期2124億16百万円、第3四半期2140億78百万円、第4四半期2298億71百万円、経常利益が16億38百万円、13億59百万円、17億44百万円、18億34百万円で、16年3月期は売上高が2163億60百万円、2031億23百万円、1893億35百万円、1825億24百万円、経常利益が20億49百万円、12億46百万円、13億33百万円、12億80百万円だった。

 16年3月期は、資源価格下落や期末にかけてのドル安・円高などの影響で、鉄鋼・半導体・電機業界向け取扱数量が減少し、鋼板製品の市況低迷、輸入鉄鋼原料の販売価格下落、国内人員増加による人件費増加なども影響して減収減益だった。売上総利益は同2.4%増加し、売上総利益率は3.4%で同0.4ポイント上昇した。販管費は同8.3%増加し、販管費比率は2.6%で同0.4ポイント上昇した。売上総利益率は改善傾向だ。

 営業外では為替差損益が悪化したが、デリバティブ評価損益が改善した。営業外収益では受取配当金が増加し、持分投資利益も増加した。特別利益では固定資産売却益が減少した。ROEは8.2%で同2.0ポイント低下、自己資本比率は17.1%で同0.7ポイント低下した。配当性向は20.4%だった。配当については企業体質の強化と将来の事業展開に必要な内部留保等を考慮しつつ、各期の業績に応じた配当を継続していくことを基本方針としている。

 セグメント別(連結調整前、経常利益)動向を見ると、鉄鋼は同1.1%減収で同11.5%減益、鉄鋼原料は同21.3%減収だが同53.8%増益、非鉄金属は同0.8%減収で同16.3%減益、機械・情報は同6.2%減収で同6.9%減益、溶材は同3.9%減収で同55.6%減益だった。

■17年3月期第3四半期累計は減収減益だが売上総利益率上昇

 1月31日発表した今期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)連結業績は、売上高が前年同期比9.3%減の5522億83百万円となり、営業利益が同25.8%減の32億77百万円、経常利益が同16.0%減の38億88百万円、純利益が同7.5%減の27億45百万円だった。鉄鋼、自動車、半導体、空調関連は堅調だったが、資源価格や地金価格の下落、円高影響などで減収減益だった。

 売上総利益は同4.0%減少したが、売上総利益率は3.5%で同0.2ポイント上昇した。販管費は同2.2%増加し、販管費比率は2.9%で同0.4ポイント上昇した。営業外では持分法投資利益が増加(前期2億53百万円、今期6億47百万円)し、為替差損益が改善(前期は差損5億69百万円、今期は差益5億94百万円)したが、受取配当金が減少(前期8億02百万円、今期6億円)し、デリバティブ評価損益が悪化(前期は評価益3億18百万円、今期は評価損7億77百万円)した。

 セグメント別(連結調整前、経常利益)に見ると、鉄鋼は市況低迷や円高の影響で7.0%減収・26.2%減益、鉄鋼原料は取扱数量減少や価格下落で17.6%減収・2.0%減益、非鉄金属はアルミ・銅地金価格下落の影響で10.1%減収だが空調用銅管や自動車向け端子材用銅板条の数量増加で18.2%増益、機械・情報は建設機械用部品の減少などで0.4%増収・18.7%減益、溶材は建築鉄骨向けや韓国LNG案件向けの増加で11.3%増収・61.5%増益だった。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期1777億78百万円、第2四半期1802億45百万円、第3四半期1942億60百万円、営業利益は7億93百万円、10億74百万円、14億10百万円だった。

■17年3月期通期も減収減益予想

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想は前回予想(9月30日に売上高と営業利益を減額、経常利益と純利益を増額修正)を据え置いて、売上高が前期(16年3月期)比10.7%減の7070億円、営業利益が同33.1%減の39億円、経常利益が同22.1%減の46億円、純利益が同16.7%減の29億円としている。

 セグメント別(連結調整前、経常利益)の計画は、鉄鋼の売上高が2750億円で経常利益が20億円、鉄鋼原料の売上高が1750億円で経常利益が5億円、非鉄金属の売上高が1920億円で経常利益が11.5億円、機械・情報の売上高が710億円で経常利益が7億円、溶材の売上高が430億円で経常利益が3.5億円としている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が78.1%、営業利益が84.0%、経常利益が84.5%、純利益が94.7%と高水準である。円安進行もプラス要因となり、会社予想に対して減益幅が縮小する可能性がありそうだ。

 配当予想(10月28日に増額修正)は、期末に創立70周年記念配当20円を実施し、前回予想に対して期末20円増額した。なお修正後の配当予想は10月1日付で10株を1株に株式併合しているため、第2四半期末4円、期末60円(普通配当40円、記念配当20円)となる。株式併合後に換算すると年間100円で、前期の換算後80円に対して実質的に20円増配となる。予想配当性向は30.5%となる。

■新中期経営計画で21年3月期経常利益80億円目標

 新中期経営計画(16年度~20年度)では、10年後の姿をイメージした長期経営ビジョン(10年度発表)のもと、3つの全体戦略(グローバルビジネス加速、商社機能強化、経営基盤充実)を柱に諸施策を推進するとした。

 そして経営目標数値には、21年3月期売上高8900億円、経常利益80億円(鉄鋼35億円、鉄鋼原料13億円、非鉄金属24億円、機械・情報14億円、溶材6億円)、純利益52億円、海外取引比率50%(16年3月期実績40.5%)、自己資本比率20%以上、ROE8%以上、D/Eレシオ1.0倍、期末人員1840人(16年3月期末1508人)を掲げている。

 投資計画は4年間合計300億円で、鉄鋼(80億円)は北米・メキシコ・インドにおける線材二次加工設備増強、厚板溶断設備増強、鉄鋼原料(100億円)は北米・豪州・他における原料権益への投資、非鉄金属(50億円)はメキシコ・中国・韓国・ASEANなど海外事業拠点の増強、新事業拠点の設立、機械・情報(20億円)は国内外における機械メーカー、エンジニアリング、サービス会社への出資、溶材(10億円)は流通取引先への出資、本社(IT投資他)(40億円)はM&Aの検討、業務システム改善などを推進する。

■株価は自律調整一巡して15年6月高値目指す

 株価の動き(16年10月1日付で10株を1株に併合、単元株式数を1000株から100株に変更)を見ると、16年12月の昨年来高値2543円まで上伸した。その後も高値圏2400円~2500円近辺で堅調に推移している。第3四半期累計の減収減益に対するネガティブ反応は限定的だ。減収減益予想は織り込み済みのようだ。

 2月2日の終値2451円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS327円50銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想に株式併合を考慮した年間100円で算出)は4.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績に株式併合を考慮した連結BPS4753円60銭で算出)は0.5倍近辺である。時価総額は約218億円である。

 週足チャートで見るとサポートライン13週移動平均線が接近してきた。指標面の割安感も見直し材料であり、自律調整一巡して15年6月高値を目指す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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