ミロク情報サービスは17年3月期配当予想を増額して大幅増配、通期業績予想にも増額余地

 ミロク情報サービス<9928>(東1)は財務・会計ソフトの開発・販売やコンサルティングサービスを主力として、クラウドサービスやFinTech分野など新規事業も強化している。17年3月期第3四半期累計が大幅増益となり、配当予想を増額修正して大幅増配予想となった。ストック型収益構造であり、通期業績予想にも増額余地がありそうだ。株価は調整一巡して戻りを試す展開が期待される。

■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービスが主力

 会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなどの業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。16年3月期品目別売上高構成比はシステム導入契約売上高62%、サービス収入35%、その他3%だった。

 会計事務所が抱えている課題を解決することで中堅・中小企業支援にも繫がるトータルソリューションを強みとしている。全国約8400の会計事務所ユーザー、および約1万7000社の中堅・中小企業ユーザーを有し、ストック型のサービス収入の構成比が上昇して収益力が向上している。

■中期計画でROE17年3月期15%、21年3月期30%目指す

 第3次中期経営計画(15年3月期~17年3月期)では、経営目標値に17年3月期売上高260億円、経常利益40億円、純利益24億50百万円、売上高経常利益率15%、ROE15%、さらに新たな成長ステージとなる21年3月期売上高500億円、経常利益率30%、ROE30%を目指している。

 重点戦略として、顧客基盤拡大に向けた販売戦力増強と販路拡大(市場ポテンシャルに合わせた人的リソース配分適正化、販社M&Aも活用したエリア拡大、顧客サポート体制と経営情報サービスの充実など)、新規顧客を創造する新製品・サービス開発・提供(マルチデバイス対応クラウドサービスなど)、新規事業による新たな収益基盤確立(利益率向上に向けた事業ポートフォリオ再設計、中小企業の事業承継・事業再生支援サービスへの参入など)を推進している。

■新製品・サービスを強化

 新製品・サービスの強化ではM&A・アライアンスも積極活用し、中小・ベンチャー企業支援ビジネス情報サイト「bizocean(ビズオーシャン)」のクラウド拡充とネットビジネスへの展開、マルチデバイス対応お金管理アプリ「マネトラ」による消費者間取引(CtoC)市場への参入、経済団体・FC企業への会計クラウドサービスの提供などを推進している。

 13年10月連結会計システム開発のプライマルと資本・業務提携、14年8月ソフトテックス社から完全Web対応クラウド販売管理システム「商い哲人EX」譲り受け、14年9月中小企業の事業承継や事業再生を支援する子会社MJS M&Aパートナーズ設立、14年10月CtoCクラウド型会計アプリ「フリビズbyマネトラ」提供開始、韓国の電子金融専門企業Webcash(ウェブキャッシュ)社と資本業務提携して日本法人(14年11月MWI社に社名変更)の株式取得、14年12月クラウド型POSシステムのオフィス24グループと業務提携した。

 15年1月ニューフォリアに出資、15年9月マイナンバー管理システム「MJSマイナンバー」(オンプレミス版・クラウド版)開始、15年10月中堅・中小企業向けマイナンバー収集・保管業務代行「MJSマイナンバーBPO」サービス開始、15年11月MWI社への出資比率を高めて連結子会社化、15年12月SAPジャパンとOEMパートナー契約締結、会計事務所向け記帳代行サービスのクラウドインボイスを完全子会社化した。

 16年4月ビジネス情報サイト「bizocean」事業を新設した子会社ビズオーシャンに継承した。同サイトは中小・ベンチャー企業の経営者や個人事業主、ビジネスパーソンを対象として、ビジネスに関連した情報を提供するポータルサイトである。

 16年7月子会社クラウドインボイスと協業して会計事務所向け記帳代行支援サービス「丸投げ記帳代行」提供開始、東洋ビジネスエンジニアリング<4828>と協業して海外展開する日本企業向けERPソリューション提供開始、16年8月中小企業向けERPクラウドサービス「MJSLINK NX-I for IaaS」提供開始した。

 16年10月子会社ビズオーシャンがビジネス情報サイト「bizocean」で日本初となるビジネステンプレートのマーケットプレイスをオープンした。同サイトは16年10月現在190万人の登録会員で月間約1500万PVを誇っている。

■FinTech分野に参入

 16年2月英国における中小企業向け融資仲介のフィンテックベンチャーであるSkwile(スクワイル)社と資本業務提携してFinTech分野に参入すると発表した。

 16年3月中小企業の経営・業務改善を支援するBtoBクラウドプラットフォーム「bizsky(ビズスカイ)」を構築、16年9月同プラットフォーム上で稼働する最初のクラウドサービスとして、受領した請求書に対する振込・支払業務を当社が代行するサービス「楽(らく)たす振込」を開始した。中小企業の業務効率化やコスト削減を支援する各種クラウドサービスとして新ブランド「楽たす」シリーズを展開する。

 17年1月には中小企業向けクラウドプラットフォーム「bizsky」において第2弾となるクラウドサービス「楽たす給与振込」を提供開始すると発表した。

 また17年3月までに、中小企業の資金調達機会改善・拡大を支援するFinTech分野の融資仲介サービスを「bizsky」上で提供する予定としている。振込、請求書発行・入金消込、給与明細配信、アカウントアグリケーション、資金繰り管理など新たなFinTech分野サービスを「bizsky」上で展開する。

■サービス収入が拡大するストック型収益構造

 収益はシステム導入契約売上高(システム導入契約時のハードウェア、ソフトウェア、システム導入支援サービスなどのユースウェア販売)と、サービス収入(会計事務所向け総合保守サービスTVS、ソフト使用料収入、企業向けソフトウェア運用支援サービス、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入など継続的な役務の対価)が主力である。ソフト保守サービス契約率上昇などでサービス収入が拡大するストック型収益構造である。

 四半期別推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期56億22百万円、第2四半期56億41百万円、第3四半期54億77百万円、第4四半期56億43百万円、営業利益が5億96百万円、7億06百万円、4億56百万円、7億66百万円、16年3月期は売上高が58億88百万円、59億45百万円、59億98百万円、58億05百万円、営業利益が6億86百万円、7億47百万円、8億16百万円、7億90百万円だった。

 16年3月期は15年3月期比2桁営業増益だった。多彩なセミナー・研修会の継続的開催など顧客基盤拡大に向けた販促活動、主力システムの機能強化、マイナンバー制度関連新製品「MJSマイナンバー」「MJSマイナンバーBPOサービス」開始、中小企業の事業承継・事業再生支援事業への積極取り組みなどが奏功し、システム導入契約売上高、サービス収入とも好調に推移した。

 システム導入契約売上高は同3.2%増の146億83百万円(内訳はハードウェアが同6.1%増の28億01百万円、ソフトウェアが同0.1%減の89億49百万円、ユースウェアが同11.3%増の29億32百万円)だった。サービス収入は同8.3%増の83億07百万円(内訳は会計事務所向け総合保守サービスTVSが同1.9%増の18億51百万円、ソフト使用料が同19.0%増の10億09百万円、企業向けソフトウェア運用支援サービスが同8.0%増の35億38百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービスが同7.2%増の12億11百万円、サプライ・オフィス用品が同16.0%増の6億95百万円)で、その他は同33.7%増の6億45百万円だった。

 差引売上総利益は同7.5%増加し、差引売上総利益率は65.1%で同1.1ポイント上昇した。販管費は同4.7%増加したものの、販管費比率は52.3%で同0.4ポイント低下した。ROEは14.0%で同0.3ポイント上昇、自己資本比率は70.2%で同2.4ポイント上昇した。配当は同2円増配の年間17円(期末一括)で配当性向は28.3%だった。

■17年3月期第3四半期累計は大幅増益

 2月3日発表した今期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比10.3%増の196億63百万円となり、営業利益が同41.8%増の31億89百万円、経常利益が同40.3%増の31億95百万円、純利益が同52.6%増の20億78百万円だった。

 多彩なセミナー・研修会を全国各地で展開するなど、積極的な販促活動を通して新規顧客開拓に注力し、システム導入契約売上高およびサービス収入とも好調に推移した。中小企業の事業承継や事業再生支援を積極的に推進するための基盤構築では、子会社MJS M&Aパートナーズと連携し、16年12月末時点で1800件超の会計事務所とパートナー契約を締結した。

 品目別に見ると、システム導入契約売上高は同10.4%増の123億46百万円(ハードウェアが同0.8%減の21億90百万円、ソフトウェアが同14.1%増の78億25百万円、ユースウェアが同9.7%増の23億30百万円)だった。ソフトウェアは主力のERP製品が伸長した。

 サービス収入は同7.8%増の66億51百万円(会計事務所向け総合保守サービスTVS収入が同1.5%増の14億10百万円、ソフト使用料収入が同23.4%増の8億93百万円、企業向けソフトウェア運用支援サービス収入が同9.6%増の28億85百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が同7.4%増の9億63百万円、サプライ・オフィス用品が同5.4%減の4億99百万円)だった。ソフト使用料収入は会計事務所向の顧問先企業向け低価格ソフトウェア使用料収入、企業向けソフトウェア運用支援サービス収入は新規顧客開拓による契約件数増加が寄与した。

 なお差引売上総利益は同12.3%増加し、差引売上総利益率は66.2%で同1.2ポイント上昇した。販管費は同5.3%増加したが、販管費比率は50.0%で同2.3ポイント低下した。また営業外費用では持分法投資損失が増加(前期7百万円、今期39百万円)した。特別損失では前期計上の投資有価証券評価損58百万円が一巡した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期64億91百万円、第2四半期65億89百万円、第3四半期65億83百万円、営業利益は10億47百万円、10億44百万円、10億98百万円だった。

■17年3月期も増収増益予想で増額余地、配当は増額して大幅増配予想

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想は前回予想(5月13日公表)を据え置いて、売上高が前期(16年3月期)比10.0%増の260億円、営業利益が同29.3%増の39億30百万円、経常利益が同30.4%増の40億円、純利益が同28.5%増の24億50百万円としている。システム導入契約売上高およびサービス収入とも順調に拡大して人件費増加などを吸収する。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.6%、営業利益が81.1%、経常利益が79.9%、純利益が84.8%と高水準である。新規顧客拡大と収益基盤強化に注力するとともに、クラウドなどの新製品・サービス、中小企業の事業承継・事業再生支援サービス、FinTech分野も強化している。サービス収入拡大で売上総利益率上昇傾向であり、ストック型収益構造であることも考慮すれば通期業績予想に増額余地がありそうだ。

 配当予想は2月3日に増額修正した。期末5円増額して年間25円(期末一括)で、前期比8円増配となる。予想配当性向は32.0%となる。

■株価は調整一巡して戻り試す

 株価の動きを見ると、2月6日に第3四半期累計の大幅増益と配当増額修正を好感して急伸する場面があったが、その後はやや上値の重い展開だ。ただし大きく下押す動きも見られず調整一巡感を強めている。

 2月17日の終値1807円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS78円19銭で算出)は23~24倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間25円で算出)は1.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS443円22銭で算出)は4.1倍近辺である。なお時価総額は約629億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて、26週移動平均線突破の動きを強めている。調整一巡して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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