【村山貢司の気象&経済歳時記】ネット通販の問題点

 Amazonがアメリカ国内で配送を委託してきたFedExやUPSとの契約を解除し、国内での配送を自社が実施することを検討していることが報じられた。昨年は売り上げのおよそ11%、115億ドルが配送費用として必要であり、自社で実施することで、年間11億ドル(日本円でおよそ1100億円)のコストダウンになる見込みという。当面アメリカ国内だけの予定であるが、日本においてもネット宅配に様々な問題が起き始めている。

 Amazonに関しては2013年に佐川急便が配送から撤退し、その多くをヤマト運輸が引き受けている。Amazonは時間指定、即日配達など縛りが大きい一方で、大量の配送を背景に単価が低いという問題があり、下請け業者に配送を委託している佐川では利益が出にくいというのが撤退の理由である。

 ヤマトの場合は配達員の多くが正社員であり、残業という形でこれまで処理が可能であった。しかし、国土交通省の調べでは1998年に18億個あまりであった宅配荷物が2013年には2倍の36億個余り増加し、ヤマトの業務量はこの10年でおよそ1.5倍になったと言われている。ヤマト運輸の宅配便個数は15年年度に17億個を超えており、16年度はさらに増加する見込みである。これに対して労働組合は春闘でこれ以上の荷受けをしないこと、終業から次の始業までを最低10時間あけることなどを要求した。この要求事態が深刻なドライバー不足や過大な残業で業務が実施されていることを示している。

 ヤマト運輸は大口の顧客に値上げを求める方針だが、問題はこれで解決するわけではない。時間配達指定の見直しや夜間配達の縮小など利用者にとっては今までのような利便性がなくなることは間違いないであろう。最大手のヤマト運輸が動くことで、他の宅配業者への影響も必至であろう。一方で、Amazonなど大手通販が自社で配送を行うというような動きがでれば宅配業者には大きな脅威になりかねない。しばらくは運輸業界の動向に目が離せない。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■全従業員にAI活用徹底、業務改革を本格化  LINEヤフー<4689>(東証プライム)は7月14…
  2. ■50年以上親しまれたかぜ薬が国内市場から姿を消す?  大正製薬は7月14日、塗るかぜ薬「ヴイック…
  3. ■鈴鹿8耐で新型CBコンセプト登場  ホンダ<7267>(東証プライム)は7月11日、大型ロードス…
2025年9月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■01銘柄:往年の主力株が再評価、低PER・PBRで買い候補に  今週の当コラムでは、買い遅れカバ…
  2. ■日米同時最高値への買い遅れは「TOPIXコア30」と「01銘柄」の出遅れ株でカバー  日米同時最…
  3. ■東京株、NYダウ反落と首相辞任で先行き不透明  東京株式市場は米国雇用統計の弱含みでNYダウが反…
  4. ■株式分割銘柄:62社に拡大、投資単位引き下げで流動性向上  選り取り見取りで目移りがしそうだ。今…
  5. ■金先物相場を背景に産金株が収益拡大の余地を示す  東京市場では金価格の上昇を背景に産金株が年初来…
  6. ■大統領の交渉術が金融市場を左右し投資家心理に波及  米国のトランプ大統領は、ギリシャ神話に登場す…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る