【決算記事情報】メディカル・データ・ビジョンは17年12月期の大幅増益予想を評価して16年9月の上場来高値を更新

■3月9日に上場来高値3475円を付ける

 メディカル・データ・ビジョン<3902>(東1)は、医療分野のビッグデータ関連ビジネスを展開し、17年12月期大幅増収増益予想である。大規模診療データベースは17年2月末現在で実患者数1785万人と日本国民8人に1人に相当する規模に達し、ビッグデータ関連で中期成長期待も高まる。株価は好業績を評価して16年9月の上場来高値を抜き、9日には3475円を付けた。

■医療分野のビッグデータ関連ビジネス

 医療分野のビッグデータ関連ビジネスとして、医療機関向けに医療情報システムを開発・販売するデータネットワークサービス、および製薬会社向けに各種データ分析ツール・サービスを販売するデータ利活用サービスを展開している。

 データネットワークサービスで医療機関向けに医療情報システムを販売するとともに、2次利用許諾を得た患者の医療・健康関連情報を集積する。そして集積した各種情報を分析し、データ利活用サービスとして主に製薬会社向けに提供するビジネスモデルだ。

 医療機関からのシステム利用料・メンテナンス費用、および製薬会社からのサービス対価(システム利用料含む)が収益源で、16年12月期事業別売上構成比はデータネットワークサービス54.6%、データ利活用サービス45.4%だった。

■医療機関向けデータネットワークスサービス

 医療機関向けのデータネットワークサービスでは、DPC制度導入対象病院向けのDPC分析ベンチマークシステム「EVE」と、病院経営支援システム「Medical Code」を主力としている。

 DPC制度は、急性期病院における入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度である。医療費の適正化、診療データ(DPCデータ)開示による透明性の向上、医療の質向上などを目的として、厚生労働省が03年導入した。

 DPCベンチマークシステム「EVE」は、自院の診療内容や状況を他院と比較しながら分析できるシステムである。16年12月期末の導入病院数は15年12月期末比23病院増加の791病院で、DPC制度を導入している全国1667病院のうち当社シェアは約45%と圧倒的シェアを獲得している。

 病院向け経営支援システム「Medical Code」は、原価管理など病院経営全般に関わる事項を分析できるシステムである。16年12月期末の導入病院数は15年12月期末比48病院増加の224病院である。

 なお医療機関向けデータネットワークサービスでは今後、DPC分析ベンチマークシステム「EVE」は45%の市場シェアを維持しながら純増を目指すが、販売の軸足を病院経営支援システム「Medical Code」に移す方針としている。

■病院向けデジタル健康ソリューション「CADA-BOX」拡販

 病院向けデジタル健康ソリューション「CADA-BOX」は、従来から提供していた患者自身が診療情報の一部を閲覧できるWEBサービス「カルテコ」や、医療費後払いサービス「CADA決済」などを融合して16年10月提供開始した。この「CADA-BOX」を介し、検査結果などを含むよりリアルタイムなデータを集積することで、データ利活用ビジネスの拡大を目指す考えだ。当初は、電子カルテ機能を含むシステム提供での実現を考えていたものの、導入までの時間がかかるため(高単価低収益でもある)、よりスピーディなデータ集積を目的に戦略転換を行った。

 また、「CADA-BOX」は既存の電子カルテシステムに連携させるため、CEホールディングス<4320>の連結子会社で電子カルテシステム大手のシーエスアイ(CSI)と16年8月業務提携した。

 16年12月期には3病院への導入が決定し、17年2月には大同病院(名古屋市)で「CADA-BOX」が全国で初めて稼働した。

 今後は、19年までに、2次医療圏(医療法に基づき厚生労働省が決定している医療の地域圏)344エリアの地域中核病院への導入を推進していく計画としている。

■製薬会社向けデータ利活用サービス

 製薬会社向けのデータ利活用サービスは、医療機関向けのデータネットワークサービスで集積した医療ビッグデータを活用し、処方数、処方診療科、併用薬などの分析ツールおよび分析調査サービスを提供している。

 製薬会社の個別ニーズに対するアドホック調査サービスを主力として、医療機関における処方実態が把握可能な診療データ分析ツール「MDV analyzer」も提供している。「MDV analyzer」は比較的大規模な製薬会社を導入対象としており、アドホック調査サービスの成長で当面はデータ利活用ビジネスを拡大していく。

■大規模診療データベースを活用して新規分野にも事業展開

 民間最大級の大規模診療データベースを活用して、新規分野への事業展開も推進している。

 15年2月OTC(一般用医薬品)とH&BC(ヘルス&ビューティケア)分野を対象とした各種調査分析サービスを開始している。具体的には、15年6月開始の診療統計データ分析レポート「Medical Trend Report for 食品・機能性食品」、15年9月開始の診療統計データ分析レポート「Medical Trend Report for シニアマーケット」開始、16年3月開始のインシュアランス(保険)業界向けデータ分析サービス開始、16年11月実臨床現場における医療材料に関するメーカー別・製品別シェア分析調査サービスなどである。

 17年2月には子会社MDVコンシューマー・ヘルスケアを設立した。当社が独自に保有する大規模診療データベースから本質的な生活者ニーズを読み取り、それに即したOTC医薬品・H&BC製品を製造販売する。17年夏頃からの販売開始を予定している。

 また3月1日には、メディパルホールディングス<7459>の子会社メディエと、医療材料の市場把握が可能となる日本最大規模の診療データベースの完成を目的に協業すると発表した。当社が保有する日本最大級の実診療データベースとメディエが保有する医療材料の製品データベースの知見を融合する。

■日本国民8人に1人という民間最大規模の診療データベース

 同社のデータ利活用ビジネスを支えるのは大規模診療データベース(病院から2次利用の許諾を得て匿名化処理がなされた入院患者ごとの診断名、治療方法、薬剤処方が分かる実臨床データ)だ。17年2月末現在の実患者数は1785万人(16年12月末比62万人増加)となり、日本国民8人に1人に相当する規模に達している。
全保険種類を網羅した民間最大規模のデータベースで、規模と質において製薬会社・研究機関から高い評価を受けている。副作用の発生リスクや薬剤の効果検証などに活用されているほか、インシュアランス(保険)分野での活用も広がっている。

■第4四半期の構成比が高い収益構造

 2016年12月期の四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期5億19百万円、第2四半期5億17百万円、第3四半期6億95百万円、第4四半期9億円、営業利益は12百万円、20百万円の赤字、1億30百万円、3億07百万円だった。なお事業別売上高はデータネットワークサービスが3億17百万円、3億03百万円、3億78百万円、4億39百万円、データ利活用サービスが2億01百万円、2億14百万円、3億17百万円、4億61百万円だった。特にデータ利活用サービスにおいて下期偏重の収益特性がある。

■16年12月期(第2四半期から連結決算に移行)は実質大幅営業増益

 前期(16年12月期)の連結業績(15年4月設立した子会社CADAの重要性が増したため16年12月期第2四半期から連結決算に移行)は、売上高が26億32百万円、営業利益が4億30百万円、経常利益が4億15百万円、純利益が1億78百万円だった。

 15年12月期の非連結業績(売上高24億13百万円、営業利益2億82百万円、経常利益2億80百万円、純利益1億64百万円)との比較で見ると9.1%増収、52.6%営業増益、48.4%経常増益、8.7%最終増益だった。

 高単価だがコスト比率が高く低収益の電子カルテシステムの販売を見合わせたため増収率は1桁にとどまったが、16年10月提供開始の病院向けデジタル健康ソリューション「CADA-BOX」販売への戦略転換で原価が圧縮された。データ利活用領域や新規事業に係る人員採用による人件費の増加、研究開発費・業務委託費・減価償却費の増加を吸収して、実質的に大幅営業増益・経常増益だった。

 売上総利益は同14.6%増加し、売上総利益率は82.6%で同4.0ポイント上昇した。販管費は同8.0%増加したが、販管費比率は66.2%で同0.7ポイント低下した。営業外費用では上場関連費用13百万円を計上した。また特別損失で減損損失92百万円、投資有価証券評価損29百万円を計上したため、純利益の増益率は小幅だった。ROEは6.7%、自己資本比率は88.0%だった。配当は無配を継続した。

 事業別の売上高を見ると、データネットワークサービスは同0.8%減の14億38百万円だった。減収の要因は、先に記載したとおり、高単価の電子カルテシステムから「CADA-BOX」に戦略転換したことによるところが大きい。また、「EVE」については、純増しシェアも45%を保っているものの、従来のような導入件数の急増がなかった。一方、病院経営支援システム「Medical Code」のユーザー数は順調に増加し、それに伴ってメンテナンスが増収基調である。今後は、「EVE」を導入している約800の病院に対し、「Medical Code」導入を推進していく計画。病院向けデジタル健康ソリューション「CADA-BOX」に関しては、5病院への導入と電子カルテ企業との連携を重点目標に掲げ、3病院への導入が決定したほか、CSI社との提携が完了した。

 データ利活用サービスは同23.9%増の11億94百万円だった。内訳はアドホック調査サービスが同25.3%増の8億60百万円、診療データ分析ツール「MDV analyzer」が同9.7%増の2億63百万円、OTCやインシュアランス等の新規が同1.9倍の69百万円だった。アドホック調査サービスは、多面的な販促活動が奏功して案件数が同27%増加し、10百万円超の大型案件も増加しているようだ。

 16年12月期末時点で、DPC制度導入対象病院向けDPC分析ベンチマークシステム「EVE」導入病院数は15年12月期末比23病院増加の791病院、DPC制度を導入している全国1667病院のうち当社シェアは約45%となった。また病院経営支援システム「Medical Code」導入病院数は同48病院増加の224病院となった。

 大規模診察データベース実患者数は、17年2月末時点では1785万人に増加している。

■17年12月期も大幅増収増益予想

 今期(17年12月期)連結業績予想(2月13日公表)については、売上高が前期(16年12月期)比36.8%増の36億円、営業利益が同25.9%増の5億42百万円、経常利益が同29.9%増の5億40百万円、純利益が同74.9%増の3億11百万円としている。

 営業関連人員を大幅に採用し、投資回収に向けた積極的な営業活動を展開する。基盤事業を再成長させるとともに、新規事業の収益化を推進し、採用拡大(約40名採用予定)による人件費増加を吸収して5期連続増収増益予想である。

 データネットワークサービスの売上高は同34.5%増の19億94百万円、内訳はパッケージが同21.3%増の7億41百万円、メンテナンスが同8.2%増の8億71百万円、病院向けデジタル健康ソリューション「CADA-BOX」の新規が18倍の3億80百万円としている。病院経営支援システム「Medical Code」を拡大し、病院向けデジタル健康ソリューション「CADA-BOX」は期末15病院への導入を目標とする。

 データ利活用サービスは同38.6%増の16億05百万円、内訳はアドホック調査サービスが同24.9%増の10億75百万円、診療データ分析ツール「MDV analyzer」が4.9%増の2億76百万円、子会社・OTC・インシュアランス等の新規が3.7倍の2億54百万円としている。アドホック調査サービスは大型契約の拡大を推進し、既存データによる新領域(医療材料メーカー、インシュアランス等)への本格展開も推進する。さらにM&Aも活用しながら、子会社・新規事業(MDVコンシューマー・ヘルスケア、Doctorbook等)の早期売上化に注力する。

■成長の第4フェーズで17年12月期から投資回収期

 中期成長イメージでは、15年12月期~16年12月期を成長の第3フェーズの投資継続期として、売上高は毎年30%前後の増加、売上高経常利益率は10%前後の維持を目標に掲げ、患者個人から同意を得たリアルタイムデータ取得のためのシステム開発、投資回収に向けたデータ基盤作り、投資の下支えとなる収益の拡大、および他社との協業を推進してきた。

 そして成長の第4フェーズとして、17年12月期~19年12月期を投資回収期としている。患者のリアルタイムデータのほか、地域医療の診療データ・画像データなども統合する計画で、データ利活用ビジネスの急拡大を図り、売上高の増加とともに投資回収を開始する方針だ。

 重点取り組みとして、2次医療圏344病院への「CADA-BOX」導入、データ基盤のさらなる拡大、データ利活用ビジネスの拡大、M&Aを含めた他社との協業を推進する。データ利活用の新領域としては、治験分野でのデータ活用を予定している。中期的に収益拡大基調、そして一段の高収益化が期待される。

■株主優待制度は16年12月期末から導入

 株主優待制度は16年12月期から導入した。毎年12月31日現在の100株(1単元)以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。配当については、患者のリアルタイムデータ集積によるデータ利活用サービスの拡大に目処がついた段階で検討していく方針。

■株価は上場来高値3300円を抜き、3475円を付け高値更新

 株価の動き(16年7月1日付で株式2分割、16年11月24日付で東証1部へ市場変更)を見ると、16年12月の直近安値圏2000円近辺から切り返し、3月9日には16年9月の上場来高値3300円を抜き、3475円を付けている。週足チャートで見ると26週移動平均線を突破し、13週移動平均線が上向きに転じて強基調に回帰した形だ。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■更新前のスーパーコンピュータの約4倍の計算能力  富士通<6702>(東証プライム)は2月21日…
  2. ■両社の資源を有効活用しSDGsに貢献  伊藤忠商事<8001>(東証プライム)グループのファミリ…
  3. ■純正ミラーと一体化し、左後方の視界を広げる  カーメイト<7297>(東証スタンダード)は、純正…
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. ■投資と貯蓄の狭間で・・・  岸田内閣の「資産所得倍増プラン」は、「貯蓄から投資へ」の流れを目指し…
  2. ■「ノルム(社会規範)」解凍の序章か?植田新総裁の金融政策正常化  日本銀行の黒田東彦前総裁が、手…
  3. ■「日経半導体株指数」スタート  3月25日から「日経半導体株指数」の集計・公表がスタートする。東…
  4. ■投資家注目の適正株価発見ツール  日銀の価格発見機能が不全になる可能性がある中、自己株式取得が新…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る