ピックルスコーポレーションは調整一巡して戻り試す、中期成長シナリオに変化なく18年2月期も収益拡大基調

 ピックルスコーポレーション<2925>(東2)は漬物・キムチ製品の最大手である。主力の「ご飯がススム キムチ」のブランド力が向上し、惣菜分野への事業展開も加速している。17年2月期は野菜価格高騰という一過性要因の影響を受けたが増収増益予想である。そして中期成長シナリオに変化はなく、18年2月期も収益拡大基調が予想される。株価は調整一巡して戻りを試す展開が期待される。

■漬物製品の最大手、主力の「ご飯がススム キムチ」のブランド力向上

 漬物・浅漬・キムチなど漬物製品の最大手メーカーである。主力の「ご飯がススム キムチ」シリーズのブランド力向上とともに収益力が大幅に向上し、さらに新製品の積極投入、成長市場である惣菜製品の強化などを推進している。

 16年2月期の販路別売上高構成比は量販店・問屋等が73.2%、コンビニが14.5%、外食・その他が12.2%だった。セブン&アイ・ホールディングス<3382>など大手量販店・コンビニが主要取引先である。また品目別売上高構成比は自社製品が66.9%(浅漬・キムチが46.4%、惣菜が18.4%、ふる漬が2.1%)、商品(漬物・青果物)が33.2%だった。

 17年2月には九州地区においてさらなる事業拡大を図るため、連結子会社であるピックルスコーポレーション関西が佐賀県に九州工場を新設すると発表した。京都工場、広島工場に次ぐ製造拠点で17年12月に当該工場引き渡しを予定している。

■M&Aも積極活用

 M&Aも活用して業容を拡大している。14年8月尾花沢食品を設立して漬物製造の尾花沢食品から事業を承継、15年6月青果市場運営の県西中央青果(茨城県古河市)を子会社化(15年9月から連結)、16年3月フードレーベルホールディングス(FLH)を子会社化(17年2月期から連結)した。

 なお16年12月には経営効率・管理体制強化のため、連結子会社(孫会社)フードレーベルが連結子会社フードレーベルホールディングス(FLH)を吸収合併した。これによってFLHは消滅し、フードレーベルの株式を直接所有とした。

■利益は原料野菜価格が影響しやすい収益構造

 四半期別推移を見ると、15年2月期は売上高が第1四半期68億18百万円、第2四半期73億04百万円、第3四半期63億18百万円、第4四半期63億65百万円、営業利益は3億83百万円、2億94百万円、2億13百万円、1億66百万円、16年2月期は売上高が76億83百万円、80億53百万円、73億70百万円、70億46百万円、営業利益が2億69百万円、3億64百万円、1億14百万円、1億84百万円だった。

 利益は原料野菜価格の動向が影響しやすい収益構造である。16年2月期は既存取引先への拡販、新規取引先の開拓、新商品の投入などの効果で15年2月期比2桁増収だったが、春や秋の天候不順の影響で主要原料野菜の白菜や胡瓜の価格が高騰したため営業減益、経常減益だった。純利益は県西中央青果ののれん発生益計上や15年2月期計上の減損損失が一巡して大幅増益だった。

 売上総利益は同7.1%増加したが、売上総利益率は22.5%で同1.2ポイント低下した。天候不順で主要原料野菜の白菜や胡瓜の価格が高騰した。販管費は同10.9%増加したが、販管費比率は19.4%で同0.3ポイント低下した。ROEは9.8%で同2.5ポイント上昇、自己資本比率は45.1%で同3.6ポイント上昇した。配当は同2円増配の年間17円(期末一括)で配当性向は12.2%だった。利益配分については将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続的に実施していくことを基本方針としている。

■17年2月期第3四半期累計は野菜価格高騰で減益だが増収基調に変化なし

 前期(17年2月期)第3四半期累計(3~11月)の連結業績は、売上高が前年同期比18.6%増の274億円、営業利益が同11.2%減の6億64百万円、経常利益が同6.3%減の7億27百万円、純利益が同12.4%減の4億85百万円だった。

 白菜や胡瓜の仕入価格が第2四半期までは安定的に推移していたが、8月以降の台風や9月以降の多雨・日照不足の影響で高騰したため減益となった。ただしキムチ製品の好調推移やFLHの新規連結などで増収基調に変化はない。

 売上総利益は同15.2%増加したが、売上総利益率は21.6%で同0.7ポイント低下した。販管費は同19.7%増加し、販管費比率は19.2%で同0.2ポイント上昇した。特別利益では負ののれん発生益89百万円が一巡したが、補助金収入が増加(前期26百万円、今期68百万円)した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期93億30百万円、第2四半期96億12百万円、第3四半期84億58百万円、営業利益は4億81百万円、3億98百万円、2億15百万円の赤字だった。

■17年2月期通期は野菜価格高騰が影響するが増収増益予想

 前期(17年2月期)連結業績予想(11月18日に減額修正)は売上高が前々期(16年2月期)比20.7%増の364億04百万円、営業利益が同6.4%増の9億91百万円、経常利益が同9.7%増の10億69百万円、そして純利益が同2.1%増の7億06百万円としている。

 キムチ製品や惣菜製品のブランド力向上、全国の製造・販売拠点を活用した営業活動、積極的な広告宣伝・販売促進活動、新製品開発・投入や他の食品メーカーとのコラボレーションなどの効果で、既存取引先への拡販や新規取引先の開拓が進展して大幅増収予想である。利益は8月以降の台風や9月以降の多雨・日照不足による野菜価格高騰という一過性要因の影響で減額修正したが、増益を確保する見込みだ。通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高75.3%、営業利益67.0%、経常利益68.0%、純利益68.7%である。第4四半期は野菜価格が落ち着き、通期予想は達成可能だろう。そして中期成長シナリオに変化はない。

 配当予想(9月29日に増額修正)は年間22円(期末一括、普通配当17円+記念配当5円)としている。前期比5円増配で予想配当性向は15.7%となる。

■漬物業界は大手による寡占化が進展、収益拡大基調

 漬物業界はコメの消費減少、食の多様化、少子高齢化などで市場縮小が続いている。また家族経営など中小・零細企業も多いため、大手による寡占化が一段と進展すると予想される。

 こうした事業環境も背景として、主力の「ご飯がススム キムチ」シリーズのリニューアルや積極的な新製品開発・投入、既存取引先への拡販や新規取引先の開拓、事業エリア拡大、ピックルスコーポレーション関西の生産能力増強、契約栽培拡大や県西中央青果の子会社化などによる原料野菜の安定調達、原材料購買方法の見直し、市場の規模が大きい惣菜分野への事業展開を加速している。またFLHにおける低採算取引の縮小や新ブランド立ち上げも推進する方針だ。

 中期経営目標には19年2月期売上高404億05百万円、営業利益14億52百万円を掲げている。売上高の品目別内訳は自社製品245億89百万円(浅漬・キムチ173億50百万円、惣菜66億23百万円、ふる漬6億15百万円)、商品(漬物・青果物)158億16百万円である。利益面ではピックルスコーポレーション関西の新工場立ち上げ負担などを考慮しているが、積極的な事業展開とブランド力向上効果で中期的に収益拡大基調だろう。

■公募による自己株式処分で設備投資資金調達

 14年11月実施のTOBによる自己株式取得によって、第1位株主の東海漬物の保有割合が27.20%に低下して親会社に該当しないこととなった。そして15年5月、第三者割当による自己株式処分を実施した。割当先は武蔵野銀行<8336>、三菱商事フードテック、味の素<2802>、高速<7504>など8社で、いずれも長期保有の方針としている。また安定株主作りの一環としてピックルスコーポレーション取引先持株会を設立して運営開始した。

 また16年12月には公募による自己株式処分と株式売り出しを実施した。調達資金は九州工場新設などの設備投資資金および借入金返済に充当する。

■株価は調整一巡して戻り試す

 株価の動き(16年12月20日付でJASDAQから東証2部へ市場変更)を見ると、16年9月の上場来高値1776円から反落して水準を切り下げ、3月23日には1320円まで下押す場面があった。調整局面の形だ。

 3月27日の終値1380円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS140円24銭で算出)は9~10倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間22円で算出)は1.6%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1508円72銭で算出)は0.9倍近辺である。時価総額は約88億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形だが、52週移動平均線近辺での長い下ヒゲで底打ち感を強めている。調整一巡して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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