日本エム・ディ・エムは17年3月期増収増益予想で18年3月期も収益拡大期待

 日本エム・ディ・エム<7600>(東1)は整形外科分野の医療機器商社である。米国子会社ODEV製品の拡販によって自社製品売上構成比が上昇し、収益力が向上している。17年3月期増収増益予想で増額の可能性がありそうだ。そして18年3月期も収益拡大が期待される。株価は水準を切り下げたが、好業績を再評価して反発展開が期待される。なお4月28日に17年3月期決算発表を予定している。

■整形外科分野の医療機器商社、メーカー機能を強化して自社製品構成比上昇

 人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器商社である。メーカー機能強化による高収益体質への転換を目指し、米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品の拡販を推進している。自社製品比率が上昇して収益力が向上している。米ODEV社製の人工膝関節製品は中国でも薬事承認を取得している。

 なお16年5月に日本特殊陶業<5334>と資本・業務提携した。伊藤忠商事<8001>が保有する当社株式(発行済株式総数の割合30.00%)を日本特殊陶業が取得した。

■自社製新製品中心に品揃え強化

 自社製新製品中心に品揃えを強化している。15年5月米ODEV社製の人工膝関節製品「バランスド・ニー・システム TriMax PS」の販売を開始し、販売中の「バランスド・ニー・システム」シリーズにHigh-Flexタイプ製品が加わった。15年7月ベルギーのMaterialise社と3D技術を用いた人工股関節置換術に使用する患者毎の手術器械PMIに関して取引契約を締結した。17年から順次販売予定で人工股関節製品の販売拡大に寄与する。

 15年9月アイスランドのオズール社製造のハローベストシステム「ReSolveハローシステムCE」を販売開始した。15年11月米ODEV社製の人工股関節新製品「Alpine ヒップシステム」の薬事承認を取得、16年2月販売開始した。

 16年4月米ODEV社製の人工股関節新製品「Alpine Cemented Hip System」が米国食品医薬品局(FDA)薬事承認を取得した。米国で販売中の「Alpine Hip System」の間接固定(骨セメントを用いて固定)タイプで16年5月から米国で販売開始した。16年5月米ODEV社製の人工股関節新製品「Alpine Cemented Hip System」の日本国内での薬事承認を取得、16年6月から販売開始した。

 16年10月Materialise社(ベルギー)製造の患者適合型関節手術用器械「Acetabular Cup Orientationガイド」の薬事承認取得を発表した。人工股関節置換術手術の際に、患者のCTデータをもとに設計され、3Dプリンタによって作成される手術用器械である。

 16年12月には日本特殊陶業の人工骨「セラリボーン」の販売開始を発表した。先行販売している人工骨「プリマフィックス」および「プリマボーン」に、新たなバリエーションとして吸収型の人工骨が加わる。また米ODEV社製の骨接合材料新製品「ARISTOネイルシステム」の販売を開始した。販売中の上腕骨近位端骨折に対応する骨接合材料に本製品が加わることになる。

■下期の構成比が高い収益構造

 四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期26億32百万円、第2四半期26億87百万円、第3四半期31億59百万円、第4四半期33億77百万円、営業利益が2億39百万円、2億53百万円、5億38百万円、2億65百万円、16年3月期は売上高が30億46百万円、31億26百万円、33億円、35億52百万円、営業利益が3億29百万円、3億62百万円、5億25百万円、4億91百万円だった。

 整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、当社の業績も下期の構成比が高い傾向があるとしている。16年3月期は国内が償還価格引き下げで厳しい事業環境となり、暖冬の影響で下期の売上が伸び悩んだが、人工関節分野で米ODEV社製人工関節製品オベーションヒップシステム、骨接合材料分野でMDMプリマヒップスクリューシステム、脊椎固定器具分野で米ODEV社製IBISスパイナルシステム(14年12月販売開始)が好調だった。製造コスト低減、医療工具の運用改善等による減価償却費の削減なども寄与して計画超の増益だった。

 地域別・主要品目別の外部顧客への売上高は、日本国内が同7.1%増の87億33百万円(人工関節が同6.7%増の40億97百万円、骨接合材料が同2.6%増の29億36百万円、脊椎固定器具が同48.0%増の12億81百万円、その他が同28.5%減の4億17百万円)で、米国販売は同15.9%増の42億91百万円(人工関節が同17.0%増の40億95百万円、脊椎固定器具が同3.8%減の1億96百万円)だった。自社製品売上高は110億84百万円で同16.6%増加、自社製品売上比率は85.1%で同5.1ポイント上昇した。

 セグメント別業績は、日本の売上高が同7.1%増の87億33百万円、営業利益(連結調整前)が同80.7%増の9億93百万円、米国の売上高(内部取引を含む)が同29.5%増の80億19百万円、営業利益が同29.8%増の7億円だった。米国ではドル高・円安に伴う換算額増加も寄与した。

 売上総利益は同11.1%増加し、売上総利益率は70.7%で同0.8ポイント上昇した。ドル高・円安や償還価格引き下げの影響を受けたが、自社製品比率上昇が寄与した。販管費は米ODEV社の販売拡大に伴う支払手数料増加、ドル高・円安影響などで同7.2%増加したが、販管費比率は57.6%で同1.4ポイント低下した。また繰延税金資産取崩の影響一巡で法人税等が減少した。ROEは7.2%で同10.8ポイント上昇、自己資本比率は56.2%で同2.4ポイント上昇した。配当性向は19.8%だった。

 なお営業利益増減分析は、増益要因が自社製品売上増加による粗利益増加11億28百万円、販管費削減等76百万円、減益要因が償還価格引き下げ影響に伴う粗利益減少2億11百万円、人件費増加1億88百万円、米国販売増加に伴うコミッション・ロイヤリティ等支払手数料増加2億47百万円、研究開発費増加1億45百万円としている。

■17年3月期第3四半期累計は2桁増益

 前期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比4.5%増の99億01百万円、営業利益が同23.7%増の14億72百万円、経常利益が同23.7%増の13億40百万円、純利益が同30.3%増の8億45百万円だった。

 国内では16年4月償還価格引き下げがマイナス要因だったが、米ODEV社製製品の売上が堅調に推移した。米国は円高による円換算影響で減収だが、現地通貨ベースでの人工関節製品の販売は好調だった。自社製品比率は87.5%で同2.4ポイント上昇した。

 売上総利益は同6.2%増加し、売上総利益率は72.2%で同1.2ポイント上昇した。販管費は同2.9%増加したが、販管費比率は57.3%で同0.9ポイント低下した。なお営業外では為替差損が増加(前期9百万円、今期32百万円)したが、シンジケートローン手数料が減少(前期23百万円、今期8百万円)した。特別損失では固定資産除却損が減少(前期1億22百万円、今期51百万円)した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると日本は売上高が同4.2%増の65億33百万円で営業利益が同5.5%増の7億32百万円、米国は売上高が同13.0%減の52億86百万円で営業利益が同4.4%減の5億38百万円だった。

 製品別売上高は、人工関節分野が同9.7%増の65億10百万円(日本国内が同11.9%増、米国が同7.6%増)、骨接合材料分野が同1.1%増の21億09百万円(日本国内)、脊椎固定器具分野が同4.9%減の10億61百万円(日本国内が同1.0%増、米国が同42.9%減)だった。なお米国における外部顧客への売上は米ドルベースでは同18.2%増収だった。人工関節分野では米ODEV社製人工関節製品オベーションヒップシステム、骨接合材料分野ではMDMプリマヒップスクリューシステムが堅調だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期32億29百万円、第2四半期31億67百万円、第3四半期35億05百万円、営業利益は3億41百万円、5億20百万円、6億11百万円だった。

■17年3月期増収増益予想で増額の可能性、18年3月期も収益拡大期待

 前期(17年3月期)通期の連結業績予想(4月28日公表)は売上高が前々期(16年3月期)比7.5%増の140億円、営業利益が同5.4%増の18億円、経常利益が同7.4%増の16億50百万円、純利益が同24.9%増の10億円としている。配当予想は同1円増配の年間7円(期末一括)としている。予想配当性向は18.5%となる。

 米ODEV社製の人工股間接製品オベーションヒップシステムや脊椎固定器具IBISスパイナルシステム、当社と米ODEV社が共同開発した骨接合材料製品MODEシリーズなど、主力製品の販売が日本および米国において引き続き好調に推移する。新製品投入も寄与する。

 地域別・主要品目別の外部顧客への売上高の計画は、日本国内が同6.5%増の93億円(人工関節が同8.9%増の44億60百万円、骨接合材料が同1.5%増の29億80百万円、脊椎固定器具が同24.1%増の15億90百万円、その他が同35.4%減の2億70百万円)で、米国販売は同9.5%増の47億円(人工関節が同9.9%増の45億円、脊椎固定器具が同1.9%増の2億円)としている。

 想定として、為替レートは1米ドル=115円、米国販売の米ドルベースの売上高は同14.3%増収、自社製品売上高は同11.0%増の123億円、自社製品売上比率は同2.8ポイント上昇の87.9%、売上総利益率は同0.3ポイント上昇の71.0%、販管費比率は同0.5ポイント上昇の58.1%としている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が70.7%、営業利益が81.8%、経常利益が81.2%、純利益が84.5%で、利益進捗率が高水準ある。期後半の構成比が高い収益特性も考慮すれば、通期予想に増額の可能性がありそうだ。そして今期(18年3月期)も収益拡大が期待される。

■中期経営計画で18年3月期ROE8.0%目指す

 15年4月策定の新中期経営計画「MODE2017」では、経営指針を「成長領域への積極投資を通じ新たなステージへ成長を加速させる」として、顧客ニーズに対応した自社新製品開発強化、10品目以上の自社開発新製品群の継続的市場投入、整形外科領域周辺・隣接分野での調達力強化、製品ラインナップ強化、北米市場での販売拡大、自社製造能力(米ODEV社)拡大と製造コスト低減、品質管理強化、製造から販売・市販後まで一貫した安全管理体制整備などの施策を推進する。

 経営目標数値としては18年3月期売上高160億円、営業利益20億円、経常利益18億円、ROE8.0%を掲げている。17年3月期業績会社予想ではROEは9.0%に上昇する見込みであり、18年3月期目標値を前倒しで達成する可能性が高まっている。高齢化社会到来の背景もあり、自社製品拡販が牽引して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は好業績を再評価して反発期待

 株価の動きを見ると、1月の昨年来高値987円から反落し、期末配当権利落ちや地合い悪化も影響して水準を切り下げた。ただし売られ過ぎ感も強めている。

 4月6日の終値747円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS37円79銭で算出)は19~20倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間7円で算出)は0.9%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS427円69銭で算出)は1.7倍近辺である。時価総額は約198億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形となったが、好業績を再評価して反発展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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