加賀電子は自律調整一巡して上値試す、18年3月期は収益拡大期待

 加賀電子<8154>(東1)は半導体・電子部品・情報機器の販売のほか、EMS(電子機器の受託開発製造サービス)やニュービジネスも展開する独立系のエレクトロニクス商社である。17年3月期営業減益予想だが、18年3月期は需要回復して収益拡大が期待される。株価は07年来の高値圏でモミ合う形だが、指標面の割安感も見直して上放れの展開が期待される。中段保ち合い上放れの形になれば上げ足を速める可能性があるだろう。

■独立系エレクトロニクス商社、EMSも展開

 半導体・電子部品・情報機器の販売およびEMS(電子機器の受託開発製造サービス)などを展開する独立系のエレクトロニクス商社である。独立系のメリットを活かしながらグループ各社の総合力を駆使し、日本一のエレクトロニクス総合商社を目指している。

 16年3月期のセグメント別売上高構成比は電子部品事業(半導体、一般電子部品、EMSなどの開発・製造・販売)77%、情報機器事業(パソコン・周辺機器、家電、写真・映像関連商品などの販売)17%、ソフトウェア事業(CG映像制作、アミューズメント関連商品の企画・開発)1%、その他事業(エレクトロニクス機器の修理・サポート、アミューズメント機器の製造・販売、スポーツ用品の販売など)5%で、地域別売上高構成比は日本69%、北米2%、欧州1%、東アジア28%だった。

 16年10月にはユビキタス<3858>と高機能HEMSゲートウェイ機器を共同開発した。16年11月には高機能ディスプレイコントローラ用半導体の設計・開発・製造および販売を行うセレブレクス(大阪市)に出資した。

■中期経営計画で19年3月期経常利益100億円目指す

 16年3月期~19年3月期の「中期経営計画2018」では、利益重視経営の確立と「次世代の加賀電子」として飛躍するための準備期間と位置付けるとともに、18年9月の会社設立50周年に向けた総決算として、経営目標値に19年3月期売上高2900億円、経常利益100億円、ROE8%以上を掲げている。

 収益基盤強化に向けて重点市場の深堀(車載、環境、通信、産業機器、アミューズメント)、重点客先の関係強化、海外ビジネスの拡大、新規事業の創出(医療・ヘルスケア、素材)を推進する。また経営基盤強化に向けて販管費削減、グループ再編、コーポレートガバナンス体制強化、コンプライアンス遵守を推進する。

 重点市場と位置付けるIoT分野では、屋内・屋外に対応した自社開発のマルチGNSS(全地球衛星測位システム)端末、ユビキタスと共同開発した高機能HEMSゲートウェイ機器などを拡販する。また京セラコミュニケーションズが国内で敷設するIoT専用通信網に対応した端末を提供することが決定した。AR(拡張現実)の分野では16年8月、浅草花やしきでアイウェア型ウェアラブルデバイス「Telepathy Walker」を装着するAR遊園地が稼働した。

 海外は16年12月メキシコに北米向けEMSの生産拠点となる子会社を設立した。北米・中南米地域でのビジネス拡大を目指す。またインドおよびベトナムでのビジネス展開を検討する。欧州ではチェコ工場での基板実装を増設し、欧州地域での顧客獲得を目指す。

 利益配分に関する基本方針は、連結配当性向25~35%を確保しつつ、安定的な配当を実施していく。自己株式取得は市場環境や資本効率を鑑みながら適宜検討する。内部留保は企業価値向上に資する事業投資、設備投資、M&Aにも活用する方針としている。

■電子部品の売上総利益率上昇

 四半期別業績推移を見ると、16年3月期は売上高が第1四半期583億49百万円、第2四半期646億26百万円、第3四半期592億30百万円、第4四半期631億82百万円、営業利益が15億98百万円、25億97百万円、19億50百万円、16億43百万円だった。

 16年3月期は下期に急減速して15年3月期比減収だったが、売上総利益率が改善して各利益は増益を確保した。売上総利益は同2.8%増加し、売上総利益率は13.7%で同0.9ポイント上昇した。販管費は同2.0%減少したが、販管費比率は10.5%で同0.2ポイント上昇した。営業外では為替差損益が悪化した。ROEは9.0%で同1.2ポイント上昇、自己資本比率は49.7%で同3.1ポイント上昇した。

 配当は15年3月期比15円増配の年間55円(第2四半期末20円、期末35円=普通配当20円+特別配当15円)で、配当性向は28.6%だった。配当については、中期経営計画2018において「連結配当性向25%~35%を確保しつつ安定的な配当を実施していく」を目標に掲げている。

 セグメント別に見ると、電子部品事業は売上高が同3.9%減の1894億86百万円で営業利益(連結調整前)が同34.3%増の65億15百万円、情報機器事業は売上高が同2.7%減の408億80百万円で営業利益が同14.7%増の8億11百万円、ソフトウェア事業は売上高が同0.3%増の28億97百万円で営業利益が同57.2%増の6億95百万円、その他事業は売上高が同7.0%減の121億23百万円で営業利益が3億43百万円の赤字(15年3月期は1億69百万円の黒字)だった。

 電子部品は国内遊戯機器向け電子部品・半導体などが減少したが、売上総利益率が上昇した。情報機器はコンシューマ市場の販売戦略見直しなど事業再編効果で収益改善した。ソフトウェアはアニメーションCG制作やゲームソフト開発に注力し、不採算事業再編効果で収益改善した。その他はアミューズメント業界向けゲーム機器事業が不振だった。

■17年3月期第3四半期累計は減収・営業減益だが、純利益は増益

 前期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)連結業績は、売上高が前年同期比8.1%減の1674億86百万円、営業利益が同15.7%減の51億78百万円、経常利益が同14.6%減の55億円だった。純利益はグループ再編に伴う法人税等調整額の減少が寄与して同11.2%増の48億63百万円だった。

 エレクトロニクス業界全体が厳しい状況で推移し、主要顧客の生産調整や取扱商品の商流変更の影響などを受けて減収、営業減益、経常減益だった。売上総利益は同8.6%減少したが、売上総利益率は13.8%で同横ばいだった。販管費は6.2%減少したが、販管費比率は10.7%で同0.2ポイント上昇した。また営業外費用では為替差損が減少(前期1億14百万円、今期25百万円)した。純利益は増益だった。

 セグメント別動向を見ると、電子部品事業は売上高が同10.4%減の1272億68百万円で営業利益(連結調整前)が同25.9%減の40億61百万円、情報機器事業は売上高が同3.5%増の306億47百万円で営業利益が同2.6倍の8億44百万円、ソフトウェア事業は売上高が同15.2%増の19億92百万円で営業利益が同32.1%減の3億円、その他は売上高が同14.9%減の75億77百万円で営業利益が1億44百万円の赤字(前年同期は1億66百万円の赤字)だった。

 電子部品は国内外の主要顧客の生産調整、遊戯機器向けビジネスの低迷、半導体メーカーの代理店政策変更で、半導体取扱高が減少した。情報機器はコンシューマ向け商品の取扱高が増加し、住宅向け関連商材も好調だった。その他は国内アミューズメント業界向けゲーム機器事業やゴルフ用品販売事業が低迷した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期522億21百万円、第2四半期574億38百万円、第3四半期578億27百万円、営業利益は7億65百万円、24億47百万円、19億66百万円だった。

■17年3月期通期減収・営業減益予想だが配当増額、18年3月期収益拡大

 前期(17年3月期)通期の連結業績予想(10月24日に純利益を11億円増額修正)は、売上高が前々期(16年3月期)比6.3%減の2300億円、営業利益が同26.8%減の57億円、経常利益が同19.1%減の64億円、純利益が同6.7%増の58億円としている。売上総利益率は同横ばいの13.7%、販管費比率は同0.7ポイント上昇の11.2%程度を想定している。純利益はグループ再編に伴う法人税等調整額の減少が寄与する。

 セグメント別計画は、電子部品事業の売上高が同7.1%減の1760億円で営業利益(連結調整前)が同33.2%減の43億50百万円、情報機器事業の売上高が同0.3%増の410億円で営業利益が同11.0%増の9億円、ソフトウェア事業の売上高が同3.6%増の30億円で営業利益が同9.4%減の6億30百万円、その他事業の売上高が同17.5%減の100億円で営業利益が1億80百万円の赤字(前期は3億43百万円の赤字)としている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が72.8%、営業利益が90.8%、経常利益が85.9%、純利益が83.8%と高水準である。ドル高・円安進行や売上総利益率上昇などで通期予想に増額余地がありそうだ。

 配当予想は3月21日に2回目の増額修正を発表した。期末10円増額して年間60円(第2四半期末25円=普通配当20円+特別配当5円、期末35円=普通配当20円+特別配当15円)とした。16年3月期の年間55円(第2四半期末20円=普通配当20円、期末35円=普通配当20円+特別配当15円)との比較では5円増配となる。推定配当性向は28.9%となる。

■株価は自律調整一巡して上値試す

 株価の動きを見ると07年来の高値圏2000円近辺でモミ合う形だったが、4月に入り地合い悪化も影響してやや水準を切り下げた。4月6日には1867円まで調整した。ただし自律調整の範囲だろう。

 4月11日の終値1873円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS207円38銭で算出)は9倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間50円で算出)は2.7%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS2185円94銭で算出)は0.9倍近辺である。時価総額は約538億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んだ。ただし26週移動平均線が接近してサポートラインとなりそうだ。指標面の割安感も見直して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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