JSPは高付加価値製品の拡販推進、18年3月期収益拡大期待

 JSP<7942>(東1)は発泡プラスチック製品専業の大手である。自動車用「ピーブロック」など高付加価値製品の拡販を推進し、生産能力の増強も進めている。17年3月期営業減益予想だが、18年3月期は円高影響の一巡や高付加価値製品の好調で収益拡大が期待される。株価は水準を切り下げたが、調整一巡して戻りを試す展開が期待される。

■発泡プラスチック製品専業大手、高機能・高付加価値製品を開発・拡販

 発泡プラスチック製品専業の大手である。15年3月、TOBによって三菱瓦斯化学<4182>の連結子会社となった。

 押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他事業(一般包材など)を展開している。16年3月期のセグメント別売上高構成比は押出事業33%、ビーズ事業62%、その他5%だった。

■高機能・高付加価値製品の拡販推進、自動車用「ピーブロック」の生産拡大

 自動車部品用発泡ポリプロピレン「ピーブロック(英名ARPRO)」や、住宅用高性能断熱材「ミラフォーム」など高機能・高付加価値製品の拡販を推進し、生産能力の増強も進めている。

 自動車用「ピーブロック」は自動車軽量化要求に対応する製品として需要が急速に拡大している。トヨタ自動車<7203>の新型プリウスのスペアタイヤ収納部およびツールボックスに採用(16年秋)され、リアシートコア材への採用も予定されるなど国内外で採用車種が拡がっている。国内生産については14年4月、新工場として北九州工場が生産を開始し、国内は栃木県鹿沼市、三重県四日市市との3拠点体制を確立した。

 16年11月には三重県四日市市の「ピーブロック」成型工場を増設すると発表した。投資額は約18億円で、18年12月に増設部分の完工を予定している。

 海外でも中国およびタイに新工場を建設して「ピーブロック」の生産能力を増強している。生産開始時期は中国・長春が16年6月、中国・武漢が17年1月予定、タイが16年3月である。中国・武漢は中国における「ピーブロック」製造4拠点目となる。また16年10月、中国・東莞工場内に技術開発センターを設立した。

 インドにおける「ピーブロック」生産は工場建設を17年3月期以降に延期している。また16年7月には欧州における「ピーブロック」需要拡大に対応するため、生産能力を増強すると発表した。約26億円を投じ、欧州における生産能力を年産2万6500トンから年産3万7000トンに増強する。

 戸建住宅・マンション断熱材用発泡ポリスチレン押出ボード「ミラフォーム」については16年5月、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場を建設すると発表した。18年11月完成予定で投資額は約40億円である。20年省エネルギー基準への適合義務化に向けて需要増加が見込まれるため、中部・西日本地区における生産体制を強化する。

■高機能新製品の開発を推進

 15年1月米国で電子線架橋法による発泡ポリエチレンシート「integxion(インテグション)」事業に参入し、米ミシガン州ジャクソン工場内の新工場で生産開始した。一般の発泡ポリエチレンシートに比べて、より均一で微細な気泡構造と表面性能が特徴であり、医療用、自動車部品用など高品質・高機能分野での需要が期待されている。16年10月予定で能力を増強する。

 さらに高機能新製品として、多層化技術を用いた高性能発泡ポリエチレンシート「xealogic(シーロジック)」、植物由来のポリ乳酸発泡ビーズ・発泡体「LACTIF」、各種樹脂・金属・無機機材と発泡体との複合体「ACTech(ACテック)」、極めて高い光反射率の超微細発泡シート、防蟻剤なしでシロアリに浸食されない唯一の発泡プラスチック断熱材「ミラポリカフォーム」、シューズメーカーの要求性能に対応した柔軟性発泡体、ポリエチレン/ポリスチレン共重合ビーズ「エレンポールNEO」などの開発・用途拡大を推進している。

■プロダクトミックス改善も寄与して増益基調

 四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期283億77百万円、第2四半期298億89百万円、第3四半期299億75百万円、第4四半期286億82百万円、営業利益が9億25百万円、17億48百万円、17億29百万円、12億65百万円で、16年3月期は売上高が278億04百万円、294億07百万円、303億24百万円、273億59百万円、営業利益が16億49百万円、24億71百万円、33億08百万円、18億50百万円だった。

 販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する収益構造である。なお16年3月期から、有形固定資産の減価償却方法を「主として定率法」から「主として定額法」に変更した。

 16年3月期は高付加価値製品拡販によるプロダクトミックス改善、国内における原料価格と販売価格の差であるスプレッドの適正水準への回復、償却方法変更による減価償却費の減少、海外事業における販売数量増加、ドル高・円安に伴う円換算額増加などで大幅増益だった。営業利益、経常利益、純利益とも過去最高を更新した。

 売上総利益は15年3月期比18.1%増加し、売上総利益率は29.5%で同5.0ポイント上昇した。販管費は同6.9%増加し、販管費比率は21.4%で同1.7ポイント上昇した。なお営業利益増減分析は、増益要因が原料単価下落63億88百万円、原料以外の製造変動費減少16億円、数量増による限界利益増加96百万円、減益要因が販売単価下落22億77百万円、固定費増加(円安による円換算額増加、償却費減少を含む)21億71百万円、その他変動費増加25百万円としている。

 営業外では為替差損益が悪化した。特別利益では新工場建設に伴う補助金収入を計上し、特別損失ではドイツの孫会社などの事業構造改革費用を計上した。ROEは8.9%で同2.4ポイント上昇、自己資本比率は59.0%で同3.0ポイント上昇した。配当は同10円増配の年間40円(第2四半期末15円、期末25円)で配当性向は20.2%だった。利益配分については安定した配当を重視するとともに、各事業年度の連結業績と将来の事業展開に必要な内部留保の充実などを勘案しながら総合的に決定する方針としている。

 セグメント別に見ると、押出事業は売上高が同4.1%減の382億89百万円で営業利益(連結調整前)が同2.0倍の27億55百万円、ビーズ事業は売上高が同0.8%増の708億65百万円で営業利益が同53.2%増の74億36百万円、その他は売上高が同13.8%減の57億49百万円で営業利益が同71.2%減の17百万円だった。

■17年3月期第3四半期累計は減収だが営業増益

 前期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)連結業績は、売上高が前年同期比6.4%減の819億52百万円だが、営業利益が同5.8%増の78億57百万円、経常利益が同12.3%増の81億44百万円、純利益が同20.0%増の62億51百万円だった。製品価格改定の影響、円高による海外事業の円換算額減少などで減収だったが、販売数量の増加、原材料安の継続、自動車用「ピーブロック」など高付加価値製品の好調で営業増益だった。

 売上総利益は同1.3%増加し、売上総利益率は31.7%で同2.4ポイント上昇した。販管費は同0.6%減少したが、販管費比率は22.1%で同1.3ポイント上昇した。営業外費用では為替差損益が改善(前期は差損4億62百万円、今期は差益15百万円)した。特別利益では前期計上の補助金収入3億01百万円が一巡したが、特別損失では前期計上の事業構造改革費用4億11百万円が一巡した。

 セグメント別に見ると、押出事業は売上高が同1.2%減の287億96百万円だったが、営業利益(連結調整前)が同10.4%増の25億17百万円だった。産業用包材「ミラマット」は高付加価値製品が好調だった。建築・土木関連「ミラフォーム」は建築分野で高断熱製品、土木分野で東北復興需要が好調だった。全体として製品価格が低下して減収だが、販売数量の増加、高付加価値製品の増加、製造コスト低下などで増益だった。

 ビーズ事業は売上高が同9.6%減の488億49百万円だったが、営業利益が同2.0%増の59億29百万円だった。発泡ポリプロピレン「ピーブロック」がバンパーコア材・内装材・シートコア材などの自動車部品、住宅設備向け部材、IT製品輸送用通い函、家電製品用緩衝材、競技用グラウンド基礎緩衝材に使用され、自動車の新規部品の採用拡大や新規分野への拡販で好調に推移した。全体として製品価格低下や円高による海外事業の円換算額減少で減収だが、販売数量増加や原材料安で増益だった。

 その他は売上高が同0.9%減の43億07百万円で営業利益が同8.3倍の1億24百万円だった。国内梱包材需要減少と円高影響で減収だが、国内における合理化と中国における新製品拡販で増益だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期268億35百万円、第2四半期277億52百万円、第3四半期273億65百万円、営業利益は22億72百万円、27億28百万円、28億57百万円だった。

■17年3月期利益予想に増額余地、18年3月期収益拡大

 前期(17年3月期)通期の連結業績予想(10月28日に売上高を減額、利益を据え置き)は、売上高が前々期(16年3月期)比6.0%減の1080億円、営業利益が同3.0%減の90億円、経常利益が同0.0%減の91億円、そして純利益が同4.8%増の62億円としている。配当予想は前々期と同額の年間40円(第2四半期末20円、期末20円)で、推定配当性向は19.2%となる。

 国内は全体として堅調だが、海外は円高・販売数量減少影響で減益見込としている。下期の前提は為替レートが1米ドル=103円50銭、1ユーロ=114円80銭、原油価格(ドバイ)が1バーレル=49米ドルとしている。

 セグメント別の計画は、押出事業の売上高が同1.7%減の376億49百万円で営業利益(連結調整前)が同6.0%増の29億19百万円、ビーズ事業の売上高が同8.9%減の645億37百万円、営業利益が同6.8%減の69億28百万円とした。

 なお12年9月24日に公正取引委員会から、EPS土木工法において使用される発泡スチロールブロックの販売に関して、独占禁止法第3条の規定に違反する行為があったとして排除措置命令および課徴金納付命令を受けた件に関して、2月8日付で当社の審判請求を棄却する旨の審決書の送達を受けた。この公正取引委員会審決への対応として、2月13日開催の取締役会において審決取消訴訟を提起しないことを決議した。本審決を厳粛に受け止め、今後も引き続きコンプライアンス体制の強化に努めるとしている。なお本件に関わる課徴金については、12年度において特別損失として計上しているため、17年3月期業績に与える影響はないとしている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.9%、営業利益が87.3%、経常利益が89.5%、純利益が100.8%と高水準である。自動車部品用「ピーブロック」など高付加価値製品の拡販に加えて、円安進行もプラス要因だ。通期利益予想に増額余地がありそうだ。そして今期(18年3月期)も収益拡大が期待される。

■中期経営計画で18年3月期営業利益率6.5%以上目標

 15年5月策定の新中期経営計画「Deepen&Grow2017」では、前提条件を1米ドル=110円、1ユーロ=140円、原油価格(ドバイ)1バーレル=105ドルとして、目標数値に18年3月期売上高1350億円(海外が約530億円)、営業利益88億円(売上高営業利益率6.5%以上)を掲げた。セグメント別売上高は押出事業444億05百万円、ビーズ事業837億76百万円、その他事業68億19百万円としている。

 有望テーマ絞り込みによる新製品の事業化を推進して、新製品売上高100億円を目指す。国内事業では高収益体質へのシフトを加速する。海外事業では「ピーブロック」の拠点拡大・能力増強の推進、および「ピーブロック」に次ぐ第2の柱の育成を目指す。3年間合計の設備投資額は約200億円としている。中期的に収益拡大基調が期待される。

■株価は調整一巡して戻り試す

 株価の動きを見ると、3月の戻り高値圏2700円近辺から反落し、4月以降の地合い悪化も影響して4月7日に2462円まで調整した。ただし2400円台で下げ渋り、調整一巡感を強めている。

 4月11日の終値2532円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS207円97銭で算出)は12~13倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間40円で算出)は1.6%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS2277円32銭で算出)は1.1倍近辺である。時価総額は約795億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、調整一巡して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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