朝日ラバーは中期計画で20年3月期営業利益率8%以上目指す、RFIDタグ関連も注目材料

 朝日ラバー<5162>(JQ)はシリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装LED照明光源カラーキャップ、医療・衛生用ゴム製品、RFIDタグ用ゴム製品などを展開している。自動車関連製品が好調に推移して17年3月期大幅増益予想である。18年3月期も収益拡大が期待される。中期計画では20年3月期営業利益率8%以上を目指している。株価は3月の年初来高値から一旦反落したが、コンビニ用RFIDタグ関連を材料視して急反発している。自律調整が一巡して上値を試す展開が期待される。なお5月11日に17年3月期決算発表を予定している。

■自動車内装LED照明の光源カラーキャップが主力

 シリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装照明関連などの工業用ゴム製品、スポーツ用ゴム製品(卓球ラケット用ラバー)、医療・衛生用ゴム製品(点滴輸液バッグ用ゴム栓など)、機能製品のRFIDタグ用ゴム製品などを展開している。

 自動車内装照明関連で、車載用小型電球の光源カラーキャップ「ASA COLOR LAMPCAP」や、車載用LED照明の光源カラーキャップ「ASA COLOR LED」が主力製品である。車載用「ASA COLOR LED」は高級車向けに加えて、小型車や軽自動車向けにも採用が拡大している。

 16年3月期セグメント別売上構成比は工業用ゴム事業81%、医療・衛生用ゴム事業19%、営業利益(連結調整前)構成比は工業用ゴム事業71%、医療・衛生用ゴム事業29%、分野別売上構成比は自動車分野63%、医療分野18%、ライフサイエンス分野7%、その他13%、地域別売上構成比は国内84%、海外16%だった。

■マイクロ流体デバイスの新工場竣工

 NEC<6701>のポータブルDNA解析装置向けマイクロ流体デバイスについては14年10月量産開始した。分子接着技術を活用した製品である。

 マイクロ流体デバイスの生産能力増強、およびライフサイエンス分野や医療分野における新製品開発推進のため、福島県白河市・白河工場の隣接地に白河第二工場が17年2月竣工予定した。

■見やすく疲れにくい自動車内装照明の開発開始

 15年9月埼玉大学と連携して、色のバラつきが少なく視認性に優れ、疲労低減性のある自動車内装照明用LEDの蛍光体層の共同開発を開始した。LEDの光を波長変換する蛍光体を組み合わせ、人間工学に基づいて運転者にとって見やすく疲れにくい照明の開発を目指す。

 この共同開発は経済産業省「平成27年度革新的ものづくり産業創出連携促進事業(戦略的基盤技術高度化支援事業)」として補助金の採択を受けた。事業期間は15年度から3年間、補助金額は3年間で9750万円の予定としている。

■プラズマ気流制御電極技術も開発

 16年10月には、国立研究開発法人産業技術総合研究所の福島再生可能エネルギー研究所から支援を受けていた「風車用プラズマ気流制御用電極の特性評価」事業について、平成28年度福島県産総研連携再生可能エネルギー等研究開発補助事業補助金の研究テーマとして採択されたと発表している。事業期間は16年10月~17年3月で、補助金額は約3百万円としている。

■特殊要因一巡して営業損益改善基調

 四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期14億85百万円、第2四半期15億40百万円、第3四半期15億21百万円、第4四半期15億13百万円、営業利益は55百万円、1億01百万円、50百万円の赤字、8百万円、16年3月期は売上高が13億96百万円、15億02百万円、14億72百万円、16億06百万円、営業利益が26百万円、49百万円、46百万円、1億16百万円だった。

 16年3月期は役員退職慰労引当金繰入額が一巡して大幅営業増益・経常増益だった。売上総利益は15年3月期比8.2%減少し、売上総利益率は24.1%で同1.8ポイント低下した。販管費は同17.3%減少し、販管費比率は20.1%で同3.9ポイント低下した。ROEは3.7%で同5.9ポイント低下、自己資本比率は40.1%で同0.8ポイント上昇した。配当性向は44.6%だった。利益配分については、株主資本の充実と長期的な収益力の維持・向上、業績に裏付けられた安定的な配当の継続を原則としている。

 セグメント別に見ると、工業用ゴム事業は売上高が同0.9%減の48億50百万円で営業利益(連結調整前)が同27.0%減の3億20百万円、医療・衛生用ゴム事業は売上高が同3.3%減の11億26百万円で営業利益が同1.3%増の1億28百万円だった。

 分野別売上高は、自動車分野が同7.2%増の37億40百万円、医療分野が同2.4%減の10億95百万円、ライフサイエンス分野が同1.6%増の3億95百万円、その他が同29.7%減の7億44百万円だった。主要製品の売上高は自動車内装照明用「ASA COLOR LED」が同8.7%増の23億03百万円、卓球用ラケットカバーが同6.6%減の3億16百万円、ディスポーザブル用ゴム製品が同2.4%減の10億95百万円、RFIDタグ用ゴム製品が同54.4%減の3億04百万円だった。

■17年3月期第3四半期累計は大幅増益

 前期(17年3月期)第3四半期累計(4~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比8.9%増の47億59百万円、営業利益が同2.9倍の3億55百万円、経常利益が同3.2倍の3億83百万円、純利益が同3.2倍の2億78百万円だった。

 自動車関連製品が好調に推移し、原価低減効果も寄与して大幅増益だった。売上総利益は同25.3%増加し、売上総利益率は27.1%で同3.5ポイント上昇した。販管費は同2.8%増加したが、販管費比率は19.6%で同1.2ポイント低下した。

 セグメント別に見ると、工業用ゴム事業は売上高が同7.6%増の38億32百万円で、営業利益(連結調整前)が同79.7%増の3億58百万円だった。自動車内装照明用「ASA COLOR LED」など自動車関連製品が好調に推移し、RFIDタグ用ゴム製品、スポーツ用ゴム製品の卓球ラケット用ラバーも増加した。

 医療・衛生用ゴム事業は売上高が同14.7%増の9億27百万円で、営業利益が同2.3倍の1億93百万円だった。プレフィルドシリンジガスケットや採血用・薬液混注用ゴム栓が好調に推移した。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期14億46百万円、第2四半期16億37百万円、第3四半期16億76百万円、営業利益は82百万円、1億12百万円、1億61百万円だった。

■17年3月期大幅増益予想、18年3月期も収益拡大期待

 前期(17年3月期)通期の連結業績予想(2月7日に2回目の増額修正)については、売上高が前々期(16年3月期)比8.3%増の64億73百万円で、営業利益が同89.6%増の4億51百万円、経常利益が同97.3%増の4億65百万円、純利益が同2.5倍の3億23百万円としている。

 自動車内装照明用「ASA COLOR LED」など自動車関連製品が好調に推移する。利益面では生産性向上への取り組み効果も寄与する。配当は前々期と同額の年間13円(第2四半期末3円、期末10円)で、配当性向は18.1%となる。

 なお白河第二工場竣工に伴い、福島県「平成27年度福島医療・福祉機器開発・事業化事業費補助金」の補助対象事業として特別利益に補助金収入6億57百万円、特別損失に固定資産圧縮損6億44百万円を計上する予定だ。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が73.5%、営業利益が78.7%、経常利益が82.4%、純利益が86.1%である。通期ベースでも好業績が期待される。3回目の増額余地もありそうだ。そして今期(18年3月期)も収益拡大が期待される。

■中期経営計画で20年3月期営業利益率8%以上目指す

 20年3月期を見据えた長期ビジョンの「AR-2020VISION」を14年に策定し、前半3ヵ年(15年3月期~17年3月期)を第1ステージ「V-1計画」、後半3ヵ年(18年3月期~20年3月期)を第2ステージ「V-2計画」と位置付けている。

 そして17年3月、第12次三カ年中期経営計画「V-2計画」を発表し、経営目標値に20年3月期売上高70~80億円、営業利益率8%以上を掲げた。

 事業分野別売上高は、車載・照明(自動車内装照明用「ASA COLOR LED」、透明部材、販社材料)30~35億円、医療・ライフサイエンス(採血用・薬液混注用ゴム栓、プレフィルドシリンジ用ガスケット、マイクロ流体デバイス)13~15億円、その他(RFIDタグ用ゴム製品、自動車向けスイッチ用ラバー、卓球ラケット用ラバー)27~30億円としている。

 車載・照明では、色と光のコントロール技術を駆使した自動車内装照明用「ASA COLOR LED」などの独自製品で市場と顧客の要望に応え、培った技術を照明全般に視点を広げて市場を開拓する。

 医療・ライフサイエンスでは、ディスポーザブルのゴム製品と診断医療や解析分野に貢献するマイクロ流体デバイスの開発を進める。その他分野ではゴムの可能性を追求し、独自のコア技術と複合させた付加価値を持つ機構製品を提供する。

■株価は自律調整一巡して上値試す

 株価の動きを見ると、3月の年初来高値1150円から利益確定売りで一旦反落したが、4月13日の789円から急反発している。コンビニ用RFIDタグ関連を材料視して4月19日には1088円まで急伸する場面があった。自律調整が一巡したようだ。

 4月21日の終値981円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS71円89銭で算出)は13~14倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は1.3%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS792円79銭で算出)は1.2倍近辺である。なお時価総額は約45億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から急反発してサポートラインを確認した形だ。自律調整が一巡して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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