クリーク・アンド・リバー社は18年2月期2桁増益・連続増配予想、VR端末の販売を正式開始

 クリーク・アンド・リバー社<4763>(東1)はクリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業、プロデュース事業、ライツマネジメント事業を展開し、事業領域拡大戦略を加速している。17年2月期は制作スタジオ拡張による内製率上昇も寄与して大幅増益だった。18年2月期も2桁増益・連続増配予想である。4月11日にはVR(仮想現実)端末「IDEALENS K2」日本正規版の販売を正式に開始した。株価は2月高値から一旦反落したが自律調整が一巡し、中期成長力を評価して上値を試す展開が期待される。

■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開

 クリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版等の制作)で活躍するクリエイターを対象としたエージェンシー(派遣・紹介)事業、プロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業、ライツマネジメント(著作権管理)事業を展開している。さらに電子書籍・医療・IT・法曹・会計・建築・ファッション・シェフ・プロフェッサーなど事業領域拡大戦略を加速している。

 17年2月期セグメント別売上高構成比は、日本クリエイティブ分野64%、韓国クリエイティブ分野12%、医療分野12%、その他11%だった。

 なお韓国のクリエイティブ分野はクリーク・アンド・リバー韓国が展開していたが、16年12月にTVマーケット関連事業を会社分割し、新設会社のクリーク・アンド・リバー・エンタテインメントに承継した。クリーク・アンド・リバー・エンタテインメントは、現地資本による株式保有比率を高めて持分法適用関連会社としたため、18年2月期から連結売上高が剥落する。ただし利益への影響は小さい。クリーク・アンド・リバー韓国については、TVマーケット以外の専門分野への展開を目指すとしている。

 医療分野はメディカル・プリンシプル、IT分野はリーディング・エッジ、法曹分野はC&Rリーガル・エージェンシー、会計分野はジャスネットコミュニケーションズ、ファッション分野はインター・ベル(13年12月子会社化)、広告分野はプロフェッショナルメディア(15年4月子会社化)が事業展開している。4月5日には会計分野のジャスネットコミュニケーションズが、厚生労働省委託事業の「優良派遣事業者認定制度」の優良派遣事業者に認定されたと発表している。

■新規分野に積極展開して事業領域拡大戦略を加速

 新規事業分野として電子書籍取次事業、および作家、オンラインクリエイター、建築、ファッションクリエイター、シェフ、プロフェッサー分野などのエージェンシー事業、さらにAI(人工知能)関連やVR(仮想現実)関連へ展開し、M&Aも積極活用している。人件費などの費用が先行するが、順次収益化を見込んでいる。

 15年4月プロフェッショナルメディア(トータルブレーンが運営する人材紹介・派遣事業および広告業界特化型情報事業「広告転職.com」「クリエイティブ派遣.com」を新設分割して設立)を連結子会社化した。

 15年5月エコノミックインデックスを持分法適用関連会社化した。同社のデータ解析技術を活かして商品・サービスの販売促進、広告効果の検証、企業イメージの動向把握と維持向上、ブランド価値の定量化などを提供する。15年6月ベトナム最大のマルチチャンネルネットワーク(MCN)であるPOPSと業務提携した。

 15年10月オンラインクリエイター分野において、YouTuberと企業のマッチング・分析を行う新ソーシャルクリエイターマッチング・分析プラットフォーム「EUREKA(エウレカ)」をリリースした。また教授や準教授をはじめとする研究者に特化したエージェンシー事業の本格的始動を発表した。

 16年2月法曹分野の子会社C&Rリーガル・エージェンシー(CRLA社)が、世界中の弁護士のためのSNSプラットフォーム「JURISTERRA(ジュリステラ)」の開発を発表し、16年4月からβ版の運用を開始した。米国におけるサービス基盤拡充は16年3月設立した子会社CREEK & RIVER Global(米国)が行う。

 16年3月ゲームやアプリなどの優れたコンテンツを世界へ発信するプロジェクトを本格始動した。16年4月ソーシャルゲームインフォと連携して、スマホアプリ先行予約サービス「Social Game Info@先行予約」の提供を開始した。

 16年5月子会社メディカル・プリンシパル社(MP社)が、メンタルヘルスケアのEAP(従業員支援プログラム)事業者として国内最大規模のアドバンテッジリスクマネジメントと提携し、ストレスチェックにおける「医師面接」領域での提携関係を構築した。また大学や企業などの研究機関に所属する研究者のための情報サイト「Technologist’s magazine」をオープンした。

 16年8月にはハウステンボスと、映画配給会社ギャガの第三者割当増資を引き受けた。当社出資比率は15.0%となる。当社が企画・開発・制作するコンテンツを、アジアを中心とする海外へ発信していくことを目指している。

 16年12月グループ企業のエコノミックインデックスが、Twitterに掲載されたクチコミ情報をAIで解析して可視化する独自アプリケーションを、ソーシャルワイヤーが運営する広報支援・プレス配信サービス「@Press(アットプレス)」に提供開始した。クチコミ分析オプションとして利用できる。またエコノミックインデックスが、Twitterに掲載されたクチコミ情報をAIで解析して可視化するクラウドサービス「リアクション モニター」の提供を開始した。

 17年1月には、澪標アナリティクス株式会社代表取締役社長の井原渉氏と共同で、データ分析に関するコンサルティング業務とデータ分析業務を行う新会社MCRアナリティクスを設立した。

 4月12日にはプロフェッサー(研究者)・エージェンシーで、大学や中小・ベンチャー企業の研究・開発成果を大企業などに紹介するオープンイノベーションプロデュース事業の開始を発表した。知的財産エージェンシーの本格的スタートで、明治大学が第一弾の参画大学に決定した。

■VR(仮想現実)関連に進出

 16年8月、中国アイデアレンズ社および同社の筆頭株主である投資ファンドのパートナー王涵氏と共同で、VR(仮想現実)における日本市場への進出のための新会社VR Japanを設立(当社出資比率51.0%)した。

 アイデアレンズ社のスタンドアロン(一体型)VRヘッドマウンドディスプレイ(HMD)「IDEALENS K2」は、中国市場でのHMDの本命と言われ16年9月から中国で発売開始している。

 17年3月にハウステンボスのアトラクション施設に、オリジナルVRコンテンツおよびVR端末「IDEALENS K2」の提供を開始した。そして4月11日に「IDEALENS K2」日本正規版の販売を正式に開始した。

■日本クリエイティブ分野は拡大基調、医療分野は期前半に利益偏重の特性

 四半期別推移を見ると、15年2月期は売上高が第1四半期60億92百万円、第2四半期56億97百万円、第3四半期55億42百万円、第4四半期55億95百万円、営業利益が5億78百万円、3億50百万円、1億69百万円、1億99百万円、16年2月期は売上高が63億69百万円、65億03百万円、57億07百万円、63億30百万円、営業利益が4億58百万円、4億49百万円、1億03百万円、1億67百万円だった。

 医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重し、第3四半期と第4四半期は赤字となるため、全体として上期の構成比が高くなる収益構造だ。主力の日本のクリエイティブ分野は、売上・営業利益とも四半期ベースで拡大基調である。

 16年2月期は積極的な人材投資、大型自社開発ゲーム「戦国修羅SOUL」関連の販促費、プロフェッショナルメディア新規連結の影響などで減益だったが、売上面では主力の日本のクリエイティブ分野を中心に既存事業分野が好調に推移した。グループ全体での派遣稼働者数、紹介成約者数は過去最高水準を更新した。増収基調に変化はない。

 新規事業領域では第1四半期にシェフ・エージェンシー事業、第2四半期にプロフェッサー・エージェンシー事業を立ち上げ、作家、建築、ファッション、シェフ、プロフェッサーの新規エージェンシー事業における先行投資負担の営業利益への影響額は合計で約2億10百万円(15年2月期は約1億50百万円)だった。

 営業外費用ではエコノミックインデックス社の持分法適用関連会社化に伴って持分法投資損失68百万円を計上した。ROEは13.2%で同3.8ポイント低下、自己資本比率は52.8%で同0.2ポイント上昇した。配当は前々期比1円増配の年間8円(期末一括)で配当性向は26.5%だった。

■17年2月期は内製率上昇などで大幅増益・増配

 前期(17年2月期)連結業績は売上高が16年2月期比6.7%増の265億81百万円、営業利益が同36.7%増の16億10百万円、経常利益が同32.4%増の14億77百万円、純利益が同42.4%増の8億92百万円だった。

 日本のクリエイティブ分野が伸長し、内製率上昇による売上総利益率改善も寄与して大幅増益だった。売上総利益は同15.5%増加し、売上総利益率は34.7%で同2.7ポイント上昇した。販管費は同11.8%増加し、販管費比率は28.7%で同1.3ポイント上昇した。営業外では持分法投資損益が悪化(前期は損失68百万円、今期は損失1億51百万円)した。

 なお利益押し下げ要因として、新規エージェンシー事業(ファッション、建築、シェフ、プロフェッサー)および新規サービス(JURISTERRA、プロフェッショナルメディア、VR Japan)における先行投資負担の営業利益への影響額は2億42百万円(16年2月期は1億76百万円)で、持分法適用関連会社のエコノミックインデックス社の経常利益への影響額は1億38百万円(同62百万円)だった。

 ROEは17.3%で同4.1ポイント上昇した。自己資本比率は50.7%で同2.1ポイント低下した。配当は同1円増配の年間9円(期末一括)で配当性向は21.0%となる。

 セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、日本のクリエイティブ分野は売上高が同12.2%増の170億74百万円で営業利益が同50.7%増の10億82百万円、韓国のクリエイティブ分野は売上高が同13.6%減の33億円で営業利益が同20.4%減の18百万円、医療分野は売上高が同13.8%増の33億10百万円で営業利益が同5.9%増の4億33百万円、その他事業(IT・法曹・会計・他)は売上高が同2.2%減の28億95百万円、営業利益が同3.2倍の76百万円だった。

 日本のクリエイティブ分野はTV・ゲーム・Web関連中心に請負事業が好調だった。利益面では制作スタジオ拡張による内製比率上昇も寄与して、新規エージェンシー事業や新規サービス関連の先行費用を吸収した。その他事業はIT分野で大型案件が減少したが、法曹・会計分野が順調だった。利益面ではIT分野の事業基盤再構築も寄与した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期65億39百万円、第2四半期67億38百万円、第3四半期67億38百万円、第4四半期65億66百万円、営業利益は4億54百万円、5億57百万円、3億38百万円、2億61百万円だった。なお第4四半期の売上高と営業利益は第4四半期として過去最高だった。

■18年2月期2桁増益・連続増配予想

 今期(18年2月期)連結業績予想(4月6日公表)は、売上高が前期(17年2月期)比0.3%減の265億円、営業利益が同11.8%増の18億円、経常利益が同18.4%増の17億50百万円、純利益が同12.0%増の10億円としている。配当予想は同1円増配の年間10円(期末一括)としている。予想配当性向は21.0%となる。

 売上面では、韓国のTVマーケット関連事業を承継したクリーク・アンド・リバー・エンタテインメントを持分法適用関連会社化した(33億円の減収要因)ため、全体として微減収となる見込みだが、日本のクリエイティブ分野が好調に推移する。韓国要因を除くと実質的に13%増収となる。

 利益面では積極的な人材投資などで販管費が増加するが、内制化進展による売上総利益率改善や、新規事業分野の収益化(建築およびファッションは収支均衡、シェフおよびプロフェッサーは赤字縮小、エコノミックインデックス社は下期収支均衡の計画)も寄与して大幅増益予想だ。なお18年9月竣工予定のオフィスビル(東京都港区)にグループ拠点を統合して効率化およびシナジー効果を目指す。これに伴って日本のクリエイティブ分野で償却費等の費用発生(約1億円)を見込んでいる。

 セグメント別(連結調整前)の計画を見ると、日本のクリエイティブ分野は売上高190億円で営業利益11億50百万円、医療分野は売上高34億50百万円で営業利益5億20百万円、その他は売上高41億円で営業利益2億05百万円としている。戦略的投資の効果や新規事業領域の収益化で好業績が期待される。

■株価は自律調整一巡して上値試す

 株価の動きを見ると、05年来の高値水準となる2月1156円から利益確定売りで一旦反落したが、4月13日の直近安値837円から急反発している。VR端末正式販売開始も好感して自律調整が一巡したようだ。

 4月21日の終値991円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS47円51銭で算出)は20~21倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS265円51銭で算出)は3.7倍近辺である。時価総額は約224億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から急反発した。サポートラインを確認した形だ。自律調整が一巡し、中期成長力を評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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