神鋼商事は18年3月期2桁増収増益予想、指標面の割安感も見直し

 神鋼商事<8075>(東1)は鉄鋼・鉄鋼原料・非鉄金属関連の専門商社で、KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核となるグローバル商社を目指している。17年3月期は円高影響などで減収減益だったが、18年3月期は一時的コストアップ要因一巡も寄与して2桁増収増益予想である。株価は短期調整が一巡して年初来高値圏だ。指標面の割安感も見直して上値を試す展開が期待される。

■KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社

 神戸製鋼所<5406>系で鉄鋼製品、鉄鋼原料、非鉄金属、機械・情報、溶接材料・機器などを扱う専門商社である。

 17年3月期のセグメント別(連結調整前)の売上高構成比は鉄鋼35%、鉄鋼原料28%、非鉄金属25%、機械・情報8%、溶材5%で、経常利益構成比は鉄鋼52%、鉄鋼原料13%、非鉄金属19%、機械・情報12%、溶材4%である。

■M&Aも活用してグローバル商社目指す

 M&Aも積極活用し、KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核となるグローバル商社を目指している。

 14年7月筒中金属産業が新設分割で設立した国内卸売事業会社(現コベルコ筒中トレーディング)を子会社化、15年5月コベルコ筒中トレーディングが韓国でアルミ高精度厚板の切断加工・卸売事業を展開している韓国筒中滑川アルミニウム(現ケーティーエヌ)を子会社化、15年8月ミャンマー・ヤンゴン市に神鋼商事ヤンゴン支店を開設した。

 16年1月非鉄金属材料の素材・加工品を販売する中山金属が新設分割で設立した国内外卸売事業会社の株式80%を取得し、国内外卸売事業会社および海外子会社を子会社化した。株式取得対象の国内外卸売事業会社の商号は中山金属(新)で、海外子会社は中国(上海)、タイ、インドネシアの3社である。16年4月神戸製鋼所の子会社で溶接材料、溶接機器、産業用機械などを扱う商社エヌアイウエル(現エスシーウエル)の株式80%を取得して子会社化した。

 17年3月には森本興産(大阪市)の株式40%取得を発表した。森本興産は鉄鋼製品の販売および鋼板製品の加工を展開し、建材分野に多くの優良顧客を有している。2016~2020年度中期経営計画で掲げた商社機能の強化への取り組みの一環として実行する。

 海外は14年9月メキシコにおける線材二次加工拠点となる合弁会社KCHM(出資比率は当社40%、メタルワン25%、神戸製鋼所10%、大阪精工10%、メキシコGrupo Simec10%、米O&k American5%)を設立し、16年10月開所式を開催した。

■売上総利益率は改善傾向

 四半期別推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期2140億42百万円、第2四半期2124億16百万円、第3四半期2140億78百万円、第4四半期2298億71百万円、経常利益が16億38百万円、13億59百万円、17億44百万円、18億34百万円で、16年3月期は売上高が2163億60百万円、2031億23百万円、1893億35百万円、1825億24百万円、経常利益が20億49百万円、12億46百万円、13億33百万円、12億80百万円だった。

 16年3月期は、資源価格下落や期末にかけてのドル安・円高などの影響で、鉄鋼・半導体・電機業界向け取扱数量が減少し、鋼板製品の市況低迷、輸入鉄鋼原料の販売価格下落、国内人員増加による人件費増加なども影響して15年3月期比減収減益だった。売上総利益は同2.4%増加し、売上総利益率は3.4%で同0.4ポイント上昇した。販管費は同8.3%増加し、販管費比率は2.6%で同0.4ポイント上昇した。売上総利益率は改善傾向だ。

 営業外では為替差損益が悪化したが、デリバティブ評価損益が改善した。営業外収益では受取配当金が増加し、持分投資利益も増加した。特別利益では固定資産売却益が減少した。ROEは8.2%で同2.0ポイント低下、自己資本比率は17.1%で同0.7ポイント低下した。配当性向は20.4%だった。配当については企業体質の強化と将来の事業展開に必要な内部留保等を考慮しつつ、各期の業績に応じた配当を継続していくことを基本方針としている。

 セグメント別の経常利益(連結調整前)は鉄鋼が同11.5%減益、鉄鋼原料が同53.8%増益、非鉄金属が同16.3%減益、機械・情報が同6.9%減益、溶材が同55.6%減益だった。

■17年3月期は円高影響や鋼材市況低迷などで減収減益

 4月28日発表した前期(17年3月期)の連結業績(3月31日に増額修正)は、売上高が前々期(16年3月期)比2.8%減の7694億81百万円、営業利益が同17.3%減の48億19百万円、経常利益が同11.3%減の52億48百万円、純利益が同14.7%減の29億70百万円だった。

 需要は堅調だったが、円高影響や鋼材市況低迷などで減収減益だった。売上総利益は同1.6%減少したが、売上総利益率は3.4%で同横ばいだった。販管費は同2.9%増加し、販管費比率は2.8%で同0.2ポイント上昇した。営業外では持分法投資利益が増加(前々期3億41百万円、前期9億45百万円)し、為替差損が減少(前々期9億44百万円、前期1億81百万円)したが、一方で受取配当金が減少(前々期8億25百万円、前期6億24百万円)し、デリバティブ評価損益が悪化(前々期は評価益6億37百万円、前期は評価損3億58百万円)した。

 また特別損失では減損損失10億68百万円を計上した。ROEは6.8%で同1.4ポイント低下、自己資本比率は17.6%で同0.5ポイント上昇した。配当は16年10月1日付の株式併合(10株を1株に併合)を考慮して換算すると、実質的に同20円増配の年間100円とした。配当性向は29.8%となる。

 セグメント別経常利益(連結調整前)を見ると、鉄鋼は鋼板・線材製品とも円高や市況低迷の影響を受けて同15.5%減の26億44百万円だった。鉄鋼原料は取扱数量が減少したが、価格が横ばいで33.6%増の10億42百万円だった。

 非鉄金属はハードディスク用アルミ板条などが減少したが、空調用銅管、自動車向け端子材用銅板条、半導体向け銅板条、半導体製造装置用アルミ加工品などが増加して同23.3%増の14億25百万円だった。機械・情報は国内子会社における追加原価の発生などで同83.6%減の1億12百万円だった。溶材は国内建築鉄骨向けが堅調で同28.0%増の2億71百万円だった。

 四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期1777億78百万円、第2四半期1802億45百万円、第3四半期1942億60百万円、第4四半期2171億98百万円、営業利益は7億93百万円、10億74百万円、14億10百万円、15億42百万円だった。

■18年3月期は2桁増収増益予想

 今期(18年3月期)連結業績予想(4月28日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比10.5%増の8500億円、営業利益が同10.0%増の53億円、経常利益が同10.5%増の58億円、純利益が同24.6%増の37億円としている。

 主要需要家である鉄鋼、自動車、半導体、空調などの業界向けが堅調に推移し、円安、市況回復、機械・情報における一時的コストアップ要因の一巡などで2桁増収増益予想としている。配当予想は16年10月1日付の株式併合(10株を1株に併合)を考慮して換算すると、実質的に同10円減配の年間90円としている。予想配当性向は29.8%となる。

 なおセグメント別経常利益(連結調整前)の計画は、鉄鋼が29億円(前期比2億60百万円増益)、鉄鋼原料が8億50百万円(1億90百万円減益)、非鉄金属が14億円(30百万円減益)、機械・情報が9億50百万円(8億40百万円増益)、溶材が3億円(30百万円増益)としている。

■中期経営計画で21年3月期経常利益80億円目標

 中期経営計画(16年度~20年度)では、10年後の姿をイメージした長期経営ビジョン(10年度発表)のもと、3つの全体戦略(グローバルビジネス加速、商社機能強化、経営基盤充実)を柱に諸施策を推進するとしている。

 そして経営目標数値には、21年3月期売上高8900億円、経常利益80億円(鉄鋼35億円、鉄鋼原料13億円、非鉄金属24億円、機械・情報14億円、溶材6億円)、純利益52億円、海外取引比率50%(16年3月期実績40.5%)、自己資本比率20%以上、ROE8%以上、D/Eレシオ1.0倍、期末人員1840人(16年3月期末1508人)を掲げている。

 投資計画は4年間合計300億円で、鉄鋼(80億円)は北米・メキシコ・インドにおける線材二次加工設備増強、厚板溶断設備増強、鉄鋼原料(100億円)は北米・豪州・他における原料権益への投資、非鉄金属(50億円)はメキシコ・中国・韓国・ASEANなど海外事業拠点の増強、新事業拠点の設立、機械・情報(20億円)は国内外における機械メーカー、エンジニアリング、サービス会社への出資、溶材(10億円)は流通取引先への出資、本社(IT投資他)(40億円)はM&Aの検討、業務システム改善などを推進する。

■株価は調整一巡して上値試す、指標面の割安感も見直し

 株価の動きを見ると、地合い悪化が影響した4月14日の直近安値2285円から切り返し、5月2日には年初来高値となる2550円まで上伸した。短期調整が一巡したようだ。

 5月2日の終値2547円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS417円85銭で算出)は6倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間90円で算出)は3.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS5112円18銭で算出)は0.5倍近辺である。時価総額は約226億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返してサポートラインを確認した形だ。短期調整が一巡し、指標面の割安感も見直して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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