【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ユーグレナは13年6月以来の高値水準、中期的視点の評価で一段高の展開

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

東京大学発ベンチャーのユーグレナ<2931>(東1)の株価は、14年6月の昨年来高値1750円を突破し、2月3日に13年6月以来の高値水準となる1932円まで急伸した。その後一旦反落したが9日は素早く切り返しの動きを強めている。中期的視点の評価で一段高の展開だろう。2000円台回復は射程圏のようだ。なお2月13日に第1四半期(10月~12月)の業績発表を予定している。

05年に世界で初めて微細藻類ミドリムシ(学名ユーグレナ、虫ではなく藻の一種)の屋外大量培養技術を確立した東京大学発ベンチャーで、世界で唯一ミドリムシを数十トン規模で商業屋外大量培養している。ミドリムシは植物と動物の両方の性質を併せ持ち、59種類の豊富な栄養素をバランスよく含んでいることが特徴だ。

ミドリムシを配合した機能性食品・化粧品などを製造販売およびOEM供給するヘルスケア事業で安定的なキャッシュフローを獲得しながら、次世代型バイオ燃料(ジェット燃料、ディーゼル燃料)や水質浄化などの開発・事業化を進める「バイオマスの5F」を基本戦略としている。

ミドリムシ配合の機能性食品が人気化するとともに、食糧資源や次世代バイオ燃料への活用でも注目度を高めている。各分野で日本を代表する大手企業との資本・業務提携、共同開発、コラボレーションが相次いでいることも注目点だ。

中期経営計画では18年9月期のヘルスケア事業売上高150億円を目標としている。イトーヨーカ堂との「ミドリムシカラダに委員会」など、ミドリムシ配合の商品開発で大手流通チェーン・食品メーカーとのコラボレーションが活発化している。14年10月には武田薬品工業<4502>と包括的に提携した。武田薬品工業が健康補助食品「タケダのユーグレナ 緑の習慣」を発売し、ミドリムシ特有成分「パラミロン」の注目度も高めた。

次世代型バイオ燃料では、JX日鉱日石エネルギー(JXホールディングス<5020>)および日立製作所<6501>と次世代型バイオジェット燃料の共同開発を推進し、14年6月にはいすゞ自動車<7202>と次世代型バイオディーゼル燃料の実用化を目指す「DeuSEL(デューゼル)プロジェクト」をスタートさせた。いずれも18年の低コスト生産技術確立と20年の事業化を目指している。水質浄化技術では清水建設<1803>、佐賀市、火力発電所のCO2固定化技術では住友共同火力との共同開発も進めている。

14年11月には内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)で、プログラム名「セレンディピティの計画的創出による新価値製造」の研究開発機関として選定された。スーパーユーグレナを用いた超高効率・超低コストのバイオ燃料創出を目指す。

海外では、ミドリムシの栄養素を活用して世界の貧困問題を解決することを目指し、14年4月からバングラデシュで子供たちにミドリムシ入りクッキーを無償配布する「ユーグレナGENKIプログラム」を開始している。また中国では食品登録許可「新食品原料」を取得、東南アジアイスラム圏では「ハラール認証」を取得して本格的な事業展開の準備を進めている。

そして1月23日には、台湾系の食品原料販売会社である統園企業股份有限公司の100%子会社統園国際有限公司と合弁で、中国に上海優端納生物科技有限公司(仮称)を設立(15年4月予定、当社出資比率70%)すると発表した。中国において微細藻類ユーグレナを使用した自社製品販売やOEM販売を展開する。

また2月9日には、微細藻類ユーグレナの粉末や特有成分「パラミロン」の継続摂取により、インフルエンザ症状が緩和することを示唆した研究結果を確認したと発表している。今回の研究成果は14年11月11日の第62回日本ウイルス学会にて発表した。

今期(15年9月期)の連結業績見通し(11月13日公表)は売上高が前期比55.0%増の47億22百万円、営業利益が同45.3%減の77百万円、経常利益が同34.0%増の2億56百万円、純利益が同48.8%増の1億75百万円としている。

中期成長に向けた先行投資で広告宣伝費や研究開発費が増加するため営業減益だが、売上面では収益性の高い自社ECサイト「ユーグレナ・ファーム」における食品直販が増加基調であり、OEMやコラボレーションの拡大も寄与して大幅増収見通しだ。また経常利益と純利益は助成金収入の増加が寄与して増益見通しだ。13年12月の公募増資で調達した資金を充当して、今期中に藻類由来油脂開発・生産設備の実証プラントを着工する方針も示している。

株価の動き(14年12月3日付で東証1部に変更)を見ると、1月30日に1797円を付けて14年6月の昨年来高値1750円を突破し、2月3日に13年6月以来の高値水準となる1932円まで急伸した。その後1600円台まで一旦反落したが、9日は素早く切り返しの動きを強めている。

9日の終値は前日比44円(2.60%)高の1735円だった。日足チャートで見ると25日移動平均線が接近して目先的な過熱感が解消した。また週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって水準を切り上げている。強基調を確認した形であり、中期的視点の評価で一段高の展開だろう。2000円台回復は射程圏のようだ。

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