JPホールディングスは下値切り上げて戻り試す

 JPホールディングス<2749>(東1)は保育所運営の最大手で、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニーである。18年3月期は保育士待遇改善や新規事業投資などで営業減益予想だが、待機児童解消政策が追い風となる事業環境に変化はなく中期的に収益拡大基調だろう。株価は下値を切り上げて戻りを試す展開が期待される。

■保育所運営の最大手、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニー

 総合子育て支援カンパニーの持株会社である。保育園・学童クラブなどを運営する子育て支援事業(日本保育サービス、四国保育サービス)を主力として、保育所向け給食請負事業(ジェイキッチン)、英語・体操・リトミック教室請負事業(ジェイキャスト)、保育関連用品の物品販売事業(ジェイ・プランニング販売)、研究・研修・コンサルティング事業(日本保育総合研究所)も展開している。16年9月には横浜市で認可保育所・民間学童施設を運営するアメニティライフを子会社化した。

 17年3月期末の運営施設数(アメニティライフ含む)は、保育所172園(認可保育園・公設民営10園、認可保育園・民設民営136園、認可外園・東京都認証保育園23園、その他認可外保育園3園)、学童クラブ63施設、児童館12施設、および民間学童クラブ4施設の合計251園・施設(16年3月期比27園・施設増加)である。首都圏中心に展開し、保育所運営の売上規模で競合他社を大きく引き離す業界最大手である。
 17年2月には資生堂<4911>と共同で、事業所内保育所運営受託の合弁会社KODOMOLOGY(コドモロジー)(当社出資比率49%)を設立した。事業所内保育所などへの公的補助を認可保育所並みにした「企業主導型保育事業」で、全国の様々な企業からの事業受託を目指す。資生堂掛川工場に事業所内保育所を17年秋に新設し、新会社の受託1号とする予定だ。

■保育士確保に向けて待遇改善や職場環境整備を推進

 保育士については例年、新卒200名程度、中途200名程度を採用している。保育士資格を有する学生を即戦力に近い人材として採用するとともに、別の新規採用枠として保育士資格を持たない新卒を採用するなど、保育士確保に向けて採用手法を工夫している。16年4月には奨学金支給を開始した。

 そして17年3月期には保育士の待遇改善を国に先行して実施した。16年3月期のベースアップに続く2年連続の大幅賃上げである。18年3月期も賃金水準の引き上げを実施する予定で、社会的に評価される賃金制度の構築を目指すとしている。

 また保育士の業務負担軽減、保育士と保護者のコミュニケーション強化に向けた取り組みの一環として、日本保育サービスが運営する全国の保育園にhugmo(ハグモー)の保育クラウドサービス「hugmo」を順次導入している。

 こうした待遇改善や働きやすい職場環境の整備が奏功し、17年度はグループ総勢391名の新卒社員(うち保育士は過去最多となる247名)を採用した。資格取得コースの新卒社員は32名だった。
 
■収益は稼働率や補助金などが影響する特性

 収益は、既存施設の稼働率、新規施設の開園、保育士待遇改善に伴う人件費の増加などに加えて、補助金の増減や実行時期なども影響する。また新規施設の開園は概ね4月だが、稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する傾向もある。

■17年3月期増収だが、保育士待遇改善を先行実施したため減益

 5月9日発表した前期(17年3月期)連結業績は、売上高が前々期(16年3月期)比10.9%増の228億円、営業利益が同31.1%減の12億63百万円、経常利益が同23.3%減の14億45百万円、純利益が同43.3%減の6億77百万円だった。

 新規施設開設やアメニティライフ子会社化などで2桁増収だが、保育士の待遇改善を国に先行して実施したため減益だった。ただし2月2日付修正値(売上高を増額、利益を減額)に対しては売上高、利益とも上回った。

 新規開設は保育園13園、学童クラブ8施設、児童館3施設、民間学童クラブ1施設で、アメニティライフの保育園4園、民間学童クラブ3施設も加わり、17年3月期末運営施設数は16年3月期比27園・施設増加の合計251園・施設となった。

 売上総利益は同2.5%増加したが、売上総利益率は16.4%で同1.4ポイント低下した。販管費は同36.4%増加し、販管費比率は10.9%で同2.0ポイント上昇した。営業外では補助金収入が増加(前々期57百万円、前期86百万円)し、特別損失では園減損損失3億91百万円を計上した。

 ROEは9.9%で同9.5ポイント低下、自己資本比率は29.6%で同0.9ポイント低下した。配当は同2円50銭減配の年間2円50銭(期末一括)とした。2月2日付の減額修正で年間2円としていたが、連結業績が2月2日付修正値を上回ったため配当も50銭増額した。配当性向は31.0%である。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期54億24百万円、第2四半期55億49百万円、第3四半期57億47百万円、60億80百万円で、営業利益は99百万円、2億52百万円、3億92百万円、5億20百万円だった。

■18年3月期営業減益予想、純利益は減損損失減少して増益予想

 今期(18年3月期)連結業績予想(5月9日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比14.6%増の261億25百万円、営業利益が同8.4%減の11億57百万円、経常利益が同3.1%減の14億円、純利益が同14.8%増の7億77百万円としている。

 新規施設開設で増収だが、保育士の待遇改善、システム投資負担、さらに新規事業への先行投資などで営業減益・経常減益予想である。新規施設は認可保育園11園、学童クラブ・他9施設、合計20園・施設の計画(4月1日時点で10園、9施設を開設済み)である。なお純利益は減損損失が減少して増益予想である。

 配当予想は年間3円(期末一括)としている。前期比50銭増配で、予想配当性向は32.4%となる。利益配分については、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、配当性向30%前後の業績連動型配当の継続実施を基本方針としている。

■中期経営計画で保育士待遇改善、新学童クラブ、海外展開などを推進

 中期経営計画では、安全対策の強化および保育の質のさらなる向上、新規開設および既存施設の保育士増員による受入児童数の拡大、人材投資の拡大(採用活動強化、人材育成強化、人事評価制度見直し)、経営管理体制の再整備(事業リスク管理体制強化、グループ会社連携強化)、収益基盤拡大に向けた新規事業への着手(民間児童クラブ、既存サービスの拡販、海外展開)を掲げている。

 補助金を申請せず料金設定の面で自由度が高い新タイプの民間学童クラブは、16年9月第1号のAEL(アエル)湯島、17年4月第2号のAEL横浜ビジネスパークを開設した。また海外はベトナムにおいて、中間層の共働き世帯をターゲットに幼稚園事業を展開する方針で、18年3月期2ヶ所開設の準備中である。

■待機児童解消政策が追い風で中期的に収益拡大基調

 都市部を中心に保育サービスの需要は高水準であり、待機児童解消に向けて保育士待遇改善、保育所運営補助金拡大、各種規制緩和などの政策が進展する見込みだ。国や東京都の待機児童解消政策が追い風となる事業環境に変化はなく、中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は下値切り上げて戻り試す

 株価の動きを見ると、4月の直近安値圏270円近辺から反発し、下値を切り上げる形となった。調整が一巡したようだ。

 5月23日の終値296円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS9円25銭で算出)は32倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間配当3円で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS84円52銭で算出)は3.5倍近辺である。時価総額は約260億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線も上向きに転じて先高感を強めている。戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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