JSPは自律調整一巡して16年12月高値目指す、18年3月期減益予想だが高付加価値製品拡販で上振れ余地

 JSP<7942>(東1)は発泡プラスチック製品の大手である。18年3月期減益予想だが、自動車用「ピーブロック」など高付加価値製品の拡販で上振れ余地がありそうだ。株価は戻り高値圏から一旦反落したが、自律調整一巡して16年12月高値を目指す展開が期待される。

■発泡プラスチック製品大手、高機能・高付加価値製品を開発・拡販

 発泡プラスチック製品の大手である。15年3月、TOBによって三菱瓦斯化学<4182>の連結子会社となった。

 押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他事業(一般包材など)を展開している。

 17年3月期のセグメント別売上高構成比は押出事業35%、ビーズ事業60%、その他5%だった。収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する特性がある。なお16年3月期から有形固定資産の減価償却方法を「主として定率法」から「主として定額法」に変更した。
■高機能・高付加価値製品の拡販推進、自動車用「ピーブロック」が拡大

 自動車部品用発泡ポリプロピレン「ピーブロック(英名ARPRO)」や、住宅用高性能断熱材「ミラフォーム」など高機能・高付加価値製品の拡販を推進し、生産能力の増強も進めている。

 自動車用「ピーブロック」は自動車軽量化要求に対応する製品として需要が急速に拡大している。特に日系自動車メーカーのリアシートコア材への採用が広がり、搭載車種生産台数は16年度の約130万台から20年度には約520万台に拡大する見込みだ。

 国内生産は14年4月に新工場として北九州工場が生産を開始し、栃木県鹿沼市、三重県四日市市との3拠点体制を確立した。また16年11月には、三重県四日市市「ピーブロック」成型工場を増設(18年12月完工予定)すると発表している。

 海外は中国での新工場建設や欧州での設備増強などで「ピーブロック」生産能力を増強している。中国・長春は16年12月、中国・武漢は17年4月稼働した。中国・武漢は中国における「ピーブロック」製造の4拠点目となる。

 戸建住宅・マンション断熱材用発泡ポリスチレン押出ボード「ミラフォーム」については、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場を建設している。18年12月生産開始予定である。20年省エネルギー基準への適合義務化に向けて需要増加が見込まれるため、中部・西日本地区における生産体制を強化する。

■高機能新製品の開発を推進

 15年1月米国で電子線架橋法による発泡ポリエチレンシート「integxion(インテグション)」事業に参入し、米ミシガン州ジャクソン工場内の新工場で生産開始した。一般の発泡ポリエチレンシートに比べて、より均一で微細な気泡構造と表面性能が特徴であり、医療用、自動車部品用など高品質・高機能分野での需要が期待されている。

 さらに多層化技術を用いた高性能発泡ポリエチレンシート「xealogic(シーロジック)」、植物由来のポリ乳酸発泡ビーズ・発泡体「LACTIF」、各種樹脂・金属・無機機材と発泡体との複合体「ACTech(ACテック)」、極めて高い光反射率の超微細発泡シート、防蟻剤なしでシロアリに浸食されない唯一の発泡プラスチック断熱材「ミラポリカフォーム」、ポリエチレン/ポリスチレン共重合ビーズ「エレンポールNEO」などの開発・用途拡大を推進している。

 シューズメーカーの要求性能に対応した柔軟性発泡体「ARGILIX」は、17年春夏モデルのシポーツシューズのインナーソールとして販売開始した。

■17年3月期は減収だがスプレッド回復で増益

 前期(17年3月期)の連結業績は売上高が前々期(16年3月期)比5.1%減の1090億48百万円、営業利益が同3.6%増の96億12百万円、経常利益が同10.2%増の100億33百万円、純利益が同23.5%増の73億01百万円だった。

 製品価格改定の影響、円高による海外事業の円換算額減少などで減収だったが、販売数量の増加、スプレッドの回復、自動車用「ピーブロック」など高付加価値製品の好調で増益だった。

 売上総利益は同横ばいだが、売上総利益率は31.1%で同1.6ポイント上昇した。販管費は同1.4%減少したが、販管費比率は22.2%で同0.8ポイント上昇した。なお営業利益増減分析では、増益要因が変動費単価45億50百万円、数量増加・限界利益が13億円、減益要因が販売単価36億90百万円、固定費増が11億円、為替要因他が7億26百万円としている。
 
 営業外費用では為替差損益が改善(前々期は差損4億93百万円、前期は差益41百万円)した。特別利益では前々期計上の補助金収入3億01百万円が一巡したが、特別損失では前々期計上の事業構造改革費用5億41百万円が一巡した。またROEは10.4%で同1.5ポイント上昇、自己資本比率は64.1%で同5.1ポイント上昇した。配当は同10円増配の年間50円(第2四半期末20円、期末30円)とした。配当性向は20.4%である。

 押出事業は売上高が同0.9%減の379億29百万円で営業利益(連結調整前)が同10.5%増の30億45百万円だった。製品価格改定の影響で減収だが、スプレッドが回復して増益だった。製品別では液晶TV基板輸送緩衝材「ミラマット」、電子レンジ対応容器や即席麺容器向け「スチレンペーパー」、高断熱製品「ミラフォーム」などが好調だった。

 ビーズ事業は売上高が同7.8%減の653億54百万円で営業利益が同0.8%減の73億76百万円だった。販売数量は増加したが、価格改定や円高影響で減収減益だった。製品別では発泡ポリプロピレン「ピーブロック」が、バンパーコア材・内装材・シートコア材などの自動車部品、住宅設備向け部材、IT製品輸送用通い函、家電製品用緩衝材、競技用グラウンド基礎緩衝材に使用され、特に自動車向けで新規採用が拡大した。

 その他は売上高が同0.3%増の57億64百万円で営業利益が同8.5倍の1億48百万円だった。国内における合理化と中国における新製品拡販で増益だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期268億35百万円、第2四半期277億52百万円、第3四半期273億65百万円、第4四半期270億96百万円、営業利益は22億72百万円、27億28百万円、28億57百万円、17億55百万円だった。

■18年3月期減益予想だが、高付加価値製品拡販で上振れ余地

 今期(18年3月期)の連結業績予想(4月28日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比6.8%増の1165億円、営業利益が同1.2%減の95億円、経常利益が同3.3%減の97億円、純利益が同8.2%減の67億円としている。前提は為替レートが1米ドル=110円、1ユーロ=120円、1人民元=16円で、原油価格(ドバイ)が1バーレル=52米ドルとしている。販売数量増加や価格改定の効果で増収だが、国内外における原料価格の上昇などで減益予想としている。

 セグメント別の計画は、押出事業の売上高が同6.6%増の404億21百万円で営業利益(連結調整前)が同2.2%減の29億77百万円、ビーズ事業の売上高が同7.1%増の700億14百万円、営業利益が同0.1%減の73億67百万円、その他の売上高が同5.2%増の60億65百万円で営業利益が同17.6%減の1億22百万円としている。

 国内では高断熱製品や液晶TV基板輸送緩衝材などが好調に推移する。海外の販売数量は同9%増加を見込んでいる。欧米・中国で自動車関連「ピーブロック」の採用が拡大し、台湾で液晶TV基板輸送緩衝材の需要が回復する。

 配当予想は前期と同額の年間50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。予想配当性向は22.2%となる。利益配分については安定した配当を重視するとともに、各事業年度の連結業績と将来の事業展開に必要な内部留保の充実などを勘案しながら総合的に決定する方針としている。

 自動車部品用「ピーブロック」など高付加価値製品の拡販に加えて、円安進行もプラス要因となる。会社予想には上振れ余地がありそうだ。

■中期経営計画の利益目標超過達成の見込み

 新中期経営計画「Deepen&Grow2017」では、前提条件を1米ドル=110円、1ユーロ=140円、原油価格(ドバイ)1バーレル=105ドルとして、目標数値に18年3月期売上高1350億円(海外が約530億円)、営業利益88億円(売上高営業利益率6.5%以上)を掲げている。

 4月28日公表の18年3月期連結業績予想は、原油価格下落の影響などで売上高計画未達となるが、高付加価値製品へのポートフォリオ改善や原油価格安定によるスプレッド回復などで各利益は計画を超過達成する見込みだ。中期的にも収益拡大基調が期待される。

■株価は自律調整一巡して16年12月高値目指す

 株価の動きを見ると、5月上旬の戻り高値圏2800円台から利益確定売りで一旦反落したが、大きく下押す動きは見られない。自律調整の範囲だろう。

 5月24日の終値2743円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS224円75銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間50円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2433円10銭で算出)は1.1倍近辺である。時価総額は約862億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返す動きだ。自律調整一巡して16年12月高値2908円を目指す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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