ラクーンは調整一巡してボックス上放れ期待、利用企業数増加基調で18年4月期も収益拡大

 ラクーン<3031>(東1)は、BtoB電子商取引スーパーデリバリー運営を主力として、クラウド受発注COREC事業、BtoB掛売り・請求書決済代行サービスPaid事業、売掛債権保証事業など周辺領域への展開を加速している。利用企業数増加基調で18年4月期も収益拡大が期待される。FinTech関連としても注目され、株価は調整一巡してボックス上放れの展開が期待される。

■企業間ECサイト「スーパーデリバリー」運営が主力

 アパレル・雑貨分野の企業間(BtoB)電子商取引(EC)スーパーデリバリー運営を主力として、クラウド受注・発注システムのCOREC(コレック)事業、BtoB掛売り・請求書決済代行サービスPaid(ペイド)事業、売掛債権保証事業など周辺領域へ事業を拡大している。

 15年8月にはスーパーデリバリーの越境ECサービス(海外販売)「SD export」を開始した。134ヶ国以上の小売店・企業への卸販売が可能となる日本最大級の輸出販売サービスである。
 16年4月期のセグメント別売上高構成比(連結調整前)は、EC事業(スーパーデリバリーとCOREC)61%、Paid事業14%、売掛債権保証事業26%だった。

■新サービスを積極投入

 16年3月越境ECサービス「SD export」の新たな決済手段としてPayPalが提供する決済サービス「ペイパル」の対応を開始、16年7月スーパーデリバリーで小売以外の事業者への販売を開始、16年8月連結子会社トラスト&グロースが中小企業を対象とした業界初のネット完結型売掛保証サービス「URIHO(ウリホ)」を開始した。

 16年10月には越境ECサービス「SD export」における海外小売店の登録数が1万件を突破した。15年8月サービス開始時約1000件から約1年での1万件達成である。取扱商品数も新規メーカーの参入によって、サービス開始時約7万点から約15万点に増加した。

 17年1月民泊物件サイト「民泊物件.com」を運営するスペースエージェントと業務提携、西武信用金庫とビジネスマッチング契約を締結、17年2月越境ECサービス「SD export」が、プラネティアが運営するアジアに特化した化粧品口コミプラットフォーム「COSMERIA」と連携した。

■Paid事業はFintech分野にも事業展開

 11年10月開始したBtoB掛売り・請求書決済代行サービスPaid事業は、サービス改良によって業種・業態を問わず、あらゆるBtoB向けサービスへの導入を推進している。

 また15年12月一般社団法人Fintech協会に加入、16年2月SBIインベストメントのFinTechファンドに1億円出資した。17年2月日本初の株式投資型クラウドファンディングサービスであるFUNDINNO(ファンディーノ)を運営する日本クラウドキャピタルへ出資した。FUNDINNOを通じて資金を調達したいベンチャー・スタートアップ企業に対して、Paidサービスの提供を推進する。

 17年4月には売掛金の請求を自動化できる新プラン「Paid定額自動請求」の開始を発表している。

■利用企業数は増加基調

 有名アパレル関連企業の出展、アライアンス戦略、越境ECサービスのSDexport開始などでスーパーデリバリー利用企業数は増加基調である。16年4月期のスーパーデリバリー流通額は15年4月期比0.6%増の95億87百万円で、16年4月期末スーパーデリバリー会員小売店数は15年4月期末比8002店舗増加の5万2372店舗、出展企業数は同73社増加の1138社、商材掲載数は同10万2923点増加の55万9272点となった。

 またクラウド受注・発注システムのCORECユーザー数は、17年2月に1万社(バイヤー6880社、サプライヤー3170社)を突破した。連携サービス増加、受注登録やレポート作成などの機能追加、サプライヤーによるバイヤー誘致増加などの成果に加えて、16年7月のPaid(ペイド)との連携や16年11月のサプライヤー有料プランの改定の効果も寄与してユーザー数が増加基調である。

 Paid加盟企業数は16年4月期末に1700社を超え、16年4月期のグループ内含む取引高は15年3月期比27.7%増加して134億04百万円となった。また16年11月には加盟企業数が2000社を突破した。

 売掛債権保証事業の16年4月期末グループ内含む保証残高は同41.0%増加の91億23百万円となった。また17年2月末時点では、サービス全体の保証残高が100億円を突破した。

■月額課金システム利用料が積み上がるストック型収益構造

 スーパーデリバリー流通に係る売上高に関して、15年4月期から商品仕入高を売上高と相殺して表示する方法(純額表示)に変更した。この変更によってスーパーデリバリー流通に係る売上高は、出展企業から徴収するシステム利用料売上となっている。従来の総額表示に比べて見掛け上の売上高は減少しているが利益に変更はない。

 収益面では、出展企業と会員小売店の増加に伴って月額課金システム利用料売上が積み上がるストック型の特性がある。配当の基本方針は、将来の事業展開と経営体質の強化に備えるための内部留保の充実等を勘案しながら、業績を反映した水準で利益還元を実施するとしている。

■17年4月期第3四半期累計は2桁営業増益

 前期(17年4月期)第3四半期累計(5~1月)連結業績は、売上高が前年同期比6.2%増の17億43百万円、営業利益が同13.2%増の3億17百万円、経常利益が同12.5%増の3億12百万円、純利益が同2.4%増の1億82百万円だった。

 Paid事業が大幅伸長し、保証事業における原価率低下も寄与して2桁営業増益だった。売上総利益は同8.5%増加し、売上総利益率は84.6%で同1.8ポイント上昇した。販管費は同7.3%増加し、販管費比率は66.4%で0.7ポイント上昇した。特別損失では減損損失32百万円を計上した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、EC事業は売上高が同2.0%増の11億94百万円で営業利益が同0.7%増の1億68百万円だった。スーパーデリバリー会員小売店数は16年4月期末比1万3652店舗増の6万6024店舗、出展企業数は26社増の1164社、商材掲載数は4万8841点増の60万8113点となった。合計流通額は前年同期比3.1%増の72億42百万円だった。国内流通額は購入客数増加で同0.4%増となり、海外流通額(SD exportと日本語版サイトでの海外向け流通額の合算)は同60.2%増と大幅伸長した。CORECユーザー数は16年11月の価格改定も寄与して9719社となった。

 Paid事業は、売上高が同21.7%増の3億09百万円となり、営業利益が同87.3%増の7百万円だった。積極的な広告投資で加盟企業が順調に増加し、取扱高増加で営業損益が改善した。加盟企業数は2100社を超え、グループ内含む取扱高は同24.2%増の119億76百万円となった。

 保証事業(第2四半期から名称変更)は、売上高が同9.3%増の5億38百万円で営業利益が同69.5%増の1億34百万円だった。売掛保証サービスの保証残高が減少したが、事業用家賃保証サービスおよび16年8月サービス開始した「URIHO」が伸長し、保証履行額減少で原価率が低下した。グループ内含む保証残高は同7.1%増の97億66百万円だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期5億69百万円、第2四半期5億76百万円、第3四半期5億98百万円、営業利益は94百万円、1億05百万円、1億18百万円だった。

■17年4月期通期は先行投資負担吸収して増益予想

 前期(17年4月期)通期の連結業績予想(6月10日公表)は、売上高が前々期(16年4月期)比12.1%増の25億円で、営業利益が同6.7%増の4億20百万円、経常利益が同14.2%増の4億20百万円、純利益が同4.4%増の2億50百万円としている。

 成長スピードを加速するための先行投資期間と位置付けて、経営基盤強化に向けた集中投資を計画しているため、人件費、広告宣伝費、開発費などが増加して小幅増益予想としている。ただしスーパーデリバリー国内流通額の復調、越境ECサービスSDexportの規模拡大、COREC、Paid事業、売掛債権保証事業の順調な拡大で、先行投資負担を吸収して増益予想である。

 配当予想(3月14日公表)は前々期と同額の年間4円50銭(期末一括)としている。予想配当性向は31.6%となる。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が69.7%、営業利益が75.5%、経常利益が74.3%、純利益が72.8%と順調である。通期ベースでも好業績が期待される。そして今期(18年4月期)も収益拡大が期待される。

■株価は調整一巡してボックス上放れ期待

 株価の動きを見ると、500円を挟むレンジでのボックス展開だが、4月17日の直近安値444円から切り返し、5月9日に539円、24日に535円まで上伸してボックスレンジ上限突破の動きを強めている。調整が一巡したようだ。

 5月24日の終値531円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS14円25銭で算出)は37~38倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間4円50銭で算出)は0.8%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS101円17銭で算出)は5.2倍近辺である。時価総額は約97億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線に続いて13週移動平均線を突破した。ボックス上放れの展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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