【作家・吉田龍司の歴史に学ぶビジネス術】レゴランドの躓きと荘子の知恵

作家・吉田龍司の歴史に学ぶビジネス術

■高額な価格設定が裏目に出たレゴランド

 4月1日に鳴り物入りでオープンしたテーマパーク「レゴランド・ジャパン」(名古屋市港区)に早くも暗雲が漂い始めている。
 隣接地で開業された複合商業施設「メイカーズ ピア」で、テナントのレストラン1店舗が先ごろ閉店した。来場者が想定を大幅に下回ったことが理由である。サンクコスト(埋没費用)の呪縛にとらわれず、早期に「損切り」を決意した経営者は大いに評価されるべきだろう。
 先日レゴランドは最大25%という実質値下げを発表した。開業から2ヶ月足らずでの値下げは異例である。見通しが甘かったことは否定できないだろう。大人2人、子供2人の入場料は2万4400円に設定されているが、正直、高すぎる。それならば、その金額分のレゴを子供に買ってあげた方が、正しい消費行動のように思えてならない。

■意外な使い方で生まれた超ロングセラー

 レゴに類似した商品にカワダ(本社・東京都新宿区、非上場)の「ダイヤブロック」がある。ダイヤブロックは1962年より発売された趙ロングセラー商品だが、その誕生秘話は実に興味深い。
 もともとこの商品の原型はある文具メーカーが作った二股の鉛筆のキャップで、2本同時に収納できることをウリとしていた。ところが、このキャップは全然売れず、大量の在庫を抱えてしまう。
 そこで現在のブロックのように「つないで遊べる」用途を思いつき、「ブロックキャップ」として売り出したところ、飛ぶように売れた。まさに発想の転換である。
 ブロックキャップの突起は二つだけだったが、玩具としての開発研究が進み、現在のダイヤブロックが生まれることとなる。

 こうした「本来の用途と違う」発想でヒットを飛ばした例は少なくない。
 デンソーが開発したQRコードはもともと部品工場や配送センターなどでの使用が考えられていたが、今や個人のスマートフォンでデータコードとして世界中で利用されている。
 TOTOのシャワー付洗面台も、実はシンクの小物洗いなどを目的に開発されたが、今や「朝シャン」の代名詞商品となっている。他にも、絵画向けに売ろうとしたのに女性の眉書きに使われたエボニーペンシル、プラモデルの乾燥用としてモデラーに人気を集めた山善の食器乾燥機など、こうした例は枚挙に暇がない。
 商品・サービスは、想定ターゲット、想定用途とは違う「売れ筋」の可能性を持っている。マーケティングは万能ではない。もしかしたら、レゴランドも大胆に発想を転換すれば、大逆転の方策があるのかもしれない。

■荘子の唱える「無用の用」

 荘子は古代中国の戦国時代の人で、諸子百家・道家を代表する巨人だ。彼の思想を伝える「荘子」中に「瓢箪問答」というものがある。
 ある日、論理学者の恵子(けいし)は荘子に「大きなヒョウタンがなりましたが使い道がないので壊しました」といった。荘子の思想があまりに浮世離れしていて、現実の役に立たないことをヒョウタンに例え、暗に批判したのである。

 荘子は恵子にこんな話をして反論する。

 ――宋にあかぎれ防止の薬を作る人がいた。綿を水にさらす仕事をする人のための薬である。ある男がこれを聞いて、製法を100金で買い取りたいと申し込んだ。それまで薬は数金程度の収入しか得られなかったので、宋の人は喜んで製法を売った。
 男は呉で将軍となり、越の軍と戦った。呉も越も河や湖が多いので戦いは水上戦が多い。冬に戦えば凍傷となってしまう。
 男はこの戦いであか切れ防止薬を用いた。おかげで呉の兵たちは凍傷の心配がなくなり、越軍と存分に戦って勝利することができた。
 呉王は喜び、褒美として男に豊かな領地を与えた。それは数金~百金とはレベルの違うものだった。

 同じあかぎれの薬でも、利用法を変えるだけで、利益は何百、何千倍となったのである。
 荘子は続いて恵子に「大きなヒョウタンを大きな樽の代わりにして川や湖で遊ぶことをどうして思いつかないのですか」といった。

 恵子は、ヒョウタンは飲み物を入れるもの、ひしゃくに使うもの、という固定観念にとらわれていた。荘子は、「常識ではとらえられないことに物事の本当の価値がある」と諭しているのである。

 荘子には「無用の用」、つまり「役に立たないと見えるものでも実は大きな役割がある。この世に無用なものは存在しない」という教えがある。噛みしめたい言葉である。

(作家=吉田龍司 『毛利元就』、『戦国城事典』(新紀元社)、『信長のM&A、黒田官兵衛のビッグデータ』(宝島社)、「今日からいっぱし!経済通」(日本経営協会総合研究所)、「儲かる株を自分で探せる本」(講談社)など著書多数)

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