ベステラは18年1月期第1四半期減益だが計画水準、通期は大幅増益予想

 ベステラ<1433>(東マ)はプラント解体に特化したオンリーワン企業で、次世代プラント解体工法「3D解体」実現に向けたロボット開発も推進している。18年1月期第1四半期は減益だったが計画水準であり、通期は大幅増益予想である。株価は第1四半期減益を嫌気したが、通期大幅増益予想を再評価して出直りが期待される。

■鋼構造プラント設備解体のオンリーワン企業

 製鉄所・発電所・ガスホルダー・石油精製設備など鋼構造プラント設備の解体工事に特化したオンリーワン企業である。

 製鉄・電力・ガス・石油・石油化学業界(製鉄所・発電所・石油精製・石油化学設備など)向けを主力とするプラント解体工事、および特定化学物質・アスベスト・ダイオキシン・土壌汚染などの環境関連対策工事を展開している。実際の解体工事は外注先が行い、当社は施工管理を行う。主要顧客はJFEグループ、新日鐵住金グループ、戸田建設、東京エネシス、IHIグループなどである。なお16年10月には東京都から解体工事業の許可を受けた。
 関連事業として建設技能労働者不足に対応した人材派遣・紹介・育成サービス、プラント解体事業における事前調査等の強化を目的とした3D計測・データサービスも展開している。16年1月期事業別売上高構成比はプラント解体事業98%、その他(人材サービス含む)2%である。

■優良な顧客基盤や特許工法・知的財産に強み

 大手企業のエンジニアリング子会社を中心とした優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的な解体マネジメント、解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有(特許取得14件、特許申請中5件)を強みとしている。04年球形ガスホルダー解体「リンゴ皮むき工法」の特許を取得、07年火力発電所等の「ボイラ解体方法」の特許を取得、10年遠隔操作による溶断ロボット「りんご☆スター」を開発した。

■プラント解体需要は中期的に増加予想

 18年1月期~20年1月期の「中期経営計画2019」(ローリング方式で毎年改定)では、数値目標に20年1月期売上高84億円、営業利益9億75百万円、経常利益9億37百万円、純利益6億44百万円、売上高営業利益率11.6%、EPS77円、ROE20.5%以上を掲げている。配当性向の目安は40%とする。

 企業の事業再編や設備集約、産業競争力強化法やエネルギー供給構造高度化法など余剰設備の再編に向けた国の政策を背景として、1960年代の高度成長期に建造されたプラントの老朽化に伴う解体工事が増加すると予想されている。また国土交通省が43年ぶりに許可業種区分を見直し、専門業種として「解体工事」を新設(16年6月から3ヶ年で順次移行)した。1件5百万円以上の解体工事を実施する場合は許可取得が必要になる。

 こうした設備解体需要や制度見直しに対応した重点戦略として、工法(プラント解体戦略)の充実、事業領域3本柱(工事・3D・人材)の確立、パーフェクト3Dおよび3D解体といった成長戦略の推進、プラント3Dマスターを中核とした新しい社会価値の創出、大規模工事施工体制の確立や営業力の強化といった制度・仕組みの革新、M&A・アライアンス戦略によるプラントライフサイクルマネジメントへの積極参入や新たな事業領域への展開を掲げている。

■次世代解体工法「3D解体」実現に向けてロボット開発を推進

 ロボット工法については、遠隔操作による溶断ロボット「りんご☆スター」を開発して工事実績を積み上げ、新アタッチメント開発による用途拡大を進めている。また東京工業大学との産学連携による群移動体型ロボット「群龍」や、京都大学および山口大学との共同研究による監視ロボットを開発している。さらに次世代プラント解体工法「3D解体」実現に向けたロボット開発を推進する。

 16年6月には京都大学、山口大学、特定非営利活動法人国際レスキューシステム研究機構と、それぞれ「点群3D Map利用ロボット開発」を研究題目とした共同研究契約を締結した。IOTを活用し、自律作業ロボットによる自動運転(プラント監視・管理)および自動施工の実現を目指す。

 6月13日には出願した特許「三次元画像表示システム、三次元画像表示装置、三次元画像表示方法およびプラント設備の三次元画像表示システム」と「作業用ロボットおよび作業用ロボットを用いた警報システム」が出願公開されたと発表している。今後の審査を経て正式に登録される。

■工事完成時期や完成工事利益率によって四半期業績が変動

 収益面では顧客の設備投資計画の影響を受け、工事完成時期や完成工事利益率によって四半期業績が大きく変動する。

 収益認識は工事進行基準と工事完成基準があり、工事進行基準の適用要件は請負金額50百万円以上、工事期間3ヶ月超、スクラップ等の有価物売却予想額が請負金額の10%以下としている。当社がスクラップ等の有価物(売却予想額1百万円超)を引き取る契約の解体工事については、工事の収益が最終のスクラップ売却時まで確定しないため、請負金額や工事期間にかかわらず工事完成基準を採用している。

■18年1月期第1四半期減収減益だがほぼ計画水準

 6月9日発表した今期(18年1月期)第1四半期(2月~4月)の非連結業績は売上高が前年同期比5.9%減の8億43百万円、営業利益が同27.0%減の65百万円、経常利益が同26.7%減の67百万円、純利益が同26.3%減の43百万円だった。

 前期(17年1月期)から繰り越された完成基準適用工事の売上計上が第2四半期(5月~7月)となり、第1四半期は減収減益だったが、ほぼ計画水準としている。売上総利益は同5.9%減少し、売上総利益率は22.4%で同横ばいだった。販管費は同11.3%増加し、販管費比率は14.6%で同2.2ポイント上昇した。

 受注工事高は同29.9%減の3億72百万円で、第1四半期末の受注残高は18億53百万円となった。前期第1四半期末に比べて11億62百万円減少した。ただし第2四半期に大型工事(12億40百万円)を受注している。

■18年1月期は前期繰越工事を売上計上して増収増益予想

 今期(18年1月期)非連結業績予想(3月17日公表)は売上高が前期(17年1月期)比36.3%増の57億円、営業利益が同41.9%増の5億64百万円、経常利益が同31.8%増の5億33百万円、純利益が同32.8%増の3億60百万円としている。

 事業拡大に伴う人員増、3D計測事業への研究開発などで販管費が増加するが、期首の繰越工事高が高水準であり、前期の期ズレ案件の検収も寄与して大幅増収増益予想である。

 配当予想は年間15円(第2四半期末5円、期末10円)としている。17年2月1日付株式3分割を考慮して年間45円に換算すると、17年1月期の年間40円との比較で5円増配の形となる。予想配当性向は34.6%である。

■株主優待制度は17年1月期末から実施

 株主優待制度は17年1月期末から開始し、17年3月には株主優待制度の変更を発表している。毎年1月31日現在100株以上300株未満保有株主に対してクオカード1000円分、300株以上保有株主に対してクオカード2000円分に変更して、18年1月期末から実施する。

■株価は売り一巡感、通期大幅増益予想を再評価して出直り期待

 株価の動き(17年2月1日付で株式3分割)を見ると、2000円~2300円近辺でモミ合う展開だ。第1四半期減収減益を嫌気する形で水準を切り下げたが、レンジ下限の2000円近辺で売り一巡感を強めている。

 6月16日の終値1969円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS43円35銭で算出)は45倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は0.8%近辺、前期実績PBR(前期実績BPS262円89銭で算出)は7.5倍近辺である。時価総額は約164億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、売り一巡し、通期大幅増益予想を再評価して出直りが期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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