建設技術研究所は自律調整一巡して上値試す、17年12月期増収増益予想

 建設技術研究所<9621>(東1)は総合建設コンサルタント大手である。需要堅調で17年12月期増収増益予想である。中長期ビジョンでマルチインフラ&グローバル企業を目指し、英Waterman社への公開買い付けを実施している。またワーク・ライフ・バランス推進の一環として7月24日開催「テレワーク・デイ」に効果測定協力団体として参加する。株価は自律調整一巡して上値を試す展開が期待される。

■総合建設コンサルタントの大手

 総合建設コンサルタント大手で河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。収益面では案件ごとの採算性や売上計上時期によって四半期収益は変動しやすい特性がある。

 13年9月農業・農村関連ビジネスへの参入を視野に入れて子会社CTIフロンティアを設立、14年4月太陽光発電事業に着手、15年6月環境総合リサーチ(旧ユニチカ環境技術センター)を完全子会社化(非連結子会社)、15年11月組織建築設計事務所の日総建を連結子会社化、16年9月グループ企業の福岡都市技術が日本都市技術に社名変更した。
 16年11月には当社が幹事を務める社会基盤情報流通推進協議会が「G空間情報センター」の運用を開始した。G空間情報とは、空間上の特定の地点や区域の位置を示す情報、または位置情報に関連づけられた情報を総称するものである。

 なおワーク・ライフ・バランス推進の一環として、7月24日開催「テレワーク・デイ」の一斉テレワークに、効果測定協力団体として参加する。

■中期経営計画で18年連結受注高470億円目指す

 15年5月にグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」を策定し、15年11月に中期経営計画2018を発表した。中期経営計画2018では、中長期ビジョン「CLAVIS2025」の最初の3年間の計画として、企業体力を強化するとともに事業ドメインの拡大を図り、マルチインフラ&グローバル企業へ向けての基盤を築くことを基本的な考え方とした。

 そして中長期ビジョン「CLAVIS2025」目標(25年単体受注高400億円、連結受注高600億円)達成に向けて、中期経営計画2018では目標値として18年単体受注高350億円、連結受注高470億円、単体営業利益率7.0%(営業利益24億円)、連結営業利益率6.5%(営業利益30億円)を掲げている。株主還元については安定配当を維持する方針だ。

 また16年6月には、マルチインフラ&グローバル展開を担う3つの主要グループ会社の中長期ビジョンを策定した。

 建設技研インターナショナルは、アジアを中心とした拠点整備や都市インフラ部門の基幹分野の育成を進め、100億円の事業規模を目指す。福岡都市技術は、区画整理事業をコアとして周辺事業へ展開し、日総建および本体とあわせ、CTI都市・建築グループとして都市プロジェクト事業計画から設計・監理・運営までワンストップで担うことを目指す。また地圏総合コンサルタントは、土壌・地盤・地質分野の新規顧客開拓、新事業開拓へと大きく舵を切り、これらの分野の事業規模を30億円まで拡大させることを目指す。

 16年9月には、マルチインフラ企業への展開の中核として15年グループ化した日総連と環境総合リサーチの中期経営計画を策定した。日総連はインフラ関連事業、建築・都市総合事業などの新規分野へ展開して事業規模20億円を目指す。環境総合リサーチは環境コンサルタントの基礎を構築して事業規模12億円を目指す。

■英Waterman社への公開買い付けで連結子会社化方針

 17年5月発表した英Waterman社(ロンドン証券取引所上場)への公開買い付けについて、6月6日に対象会社の50.1%の株主による応募の結果、公開買い付け実行の条件が満たされたため英Waterman社を連結子会社すると発表した。なお6月22日には公開買い付け期間の延長を発表し、当初予定の「6月22日まで」から「7月6日まで」に延長した。

■17年12月期第1四半期は黒字化

 今期(17年12月期)第1四半期(1月~3月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.9%増の75億86百万円、営業利益が5百万円(前年同期は43百万円の赤字)、経常利益が5百万円(同54百万円の赤字)、純利益が5百万円(同23百万円の赤字)だった。

 需要が堅調に推移し、売上総利益率が上昇して販管費の増加を吸収した。売上総利益は同12.3%増加し、売上総利益率は28.3%で同2.9ポイント上昇した。販管費は同9.5%増加し、販管費比率は28.2%で同2.2ポイント上昇した。

■17年12月期通期増収増益予想

 今期(17年12月期)連結業績予想(2月13日公表)は売上高が前期(16年12月期)比4.7%増の440億円、営業利益が同5.1%増の25億円、経常利益が同6.9%増の26億円、純利益が同17.4%増の17億円としている。配当予想は前期と同額の年間20円(期末一括)で予想配当性向は16.6%となる。

 受注高は同3.6%増の440億円の計画としている。国土強靭化や社会インフラ整備などで建設コンサルタントの役割が高まるとしている。収益改善が期待される。

■中期的に事業環境は良好

 中期的に事業環境は良好である。20年東京夏季五輪関連、リニア新幹線関連など建設ビッグプロジェクトが目白押しであり、国土強靭化基本計画に沿って社会資本整備に対する計画的な投資が実行される。

 防災・減災関連、老朽化インフラ補修・更新関連、都市再開発関連、アベノミクス重点戦略「地方創生」関連の案件が増加し、土木コンサルタント業務の積算に用いられる技術者単価や一般管理費の比率が上昇して採算改善も期待される。そして、技術力によって契約企業を選定するプロポーザル方式において優位性を発揮している。

 中期的に良好な事業環境も背景に、CTIグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」で掲げた新分野・未参入分野・周辺分野・新業種等への事業領域拡大戦略も奏功して収益拡大が期待される。

■株価は自律調整一巡して上値試す

 株価の動きを見ると、5月の年初来高値1197円から一旦反落したが、大きく下押す動きは見られず1100円台で堅調に推移している。自律調整の範囲だろう。

 7月3日の終値1142円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS120円22銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1746円31銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約162億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形だ。国土強靭化関連のテーマ性があり、自律調整一巡して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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