クリーク・アンド・リバー社は2000年の上場来高値に接近、18年2月期2桁増益予想で上振れ余地

 クリーク・アンド・リバー社<4763>(東1)は、クリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業、プロデュース事業、ライツマネジメント事業を展開し、事業領域拡大戦略を加速している。18年2月期第1四半期は大幅増益だった。通期も2桁増益予想で上振れ余地がありそうだ。なお7月29日開催「東京VRコンテンツfes2017」に出展する。株価は2000年の上場来高値に接近している。好業績やVR関連を評価して上値を試す展開が期待される。

■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開

 クリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版等の制作)で活躍するクリエイターを対象としたエージェンシー(派遣・紹介)事業、プロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業、ライツマネジメント(著作権管理)事業を展開している。さらに電子書籍・医療・IT・法曹・会計・建築・ファッション・シェフ・プロフェッサーなど事業領域拡大戦略を加速している。

 17年2月期のセグメント別売上高構成比は、日本クリエイティブ分野64%、韓国クリエイティブ分野12%、医療分野12%、その他11%だった。収益面では医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重し、第3四半期と第4四半期は赤字となるため、全体としても上期の構成比が高い特性がある。主力の日本クリエイティブ分野は売上・営業利益とも四半期ベースで拡大基調だ。

 なお韓国クリエイティブ分野は、クリーク・アンド・リバー韓国のTVマーケット関連事業を新設会社クリーク・アンド・リバー・エンタテインメントに承継し、18年2月期第2四半期(6月~8月)からクリーク・アンド・リバー・エンタテインメントが持分法適用関連会社に異動する。18年2月期から連結売上高が剥落するが、利益への影響は小さい。クリーク・アンド・リバー韓国はTVマーケット以外の専門分野への展開を目指す。

 また医療分野はメディカル・プリンシプル(MP社)、IT分野はリーディング・エッジ、法曹分野はC&Rリーガル・エージェンシー(CRLA社)、会計分野はジャスネットコミュニケーションズ、ファッション分野はインター・ベルが展開している。

■新規分野に積極展開して事業領域拡大戦略を加速

 新規事業分野として電子書籍取次事業、および作家、オンラインクリエイター、建築、ファッションクリエイター、シェフ、プロフェッサー分野などのエージェンシー事業、さらにAI(人工知能)関連やVR(仮想現実)関連へ展開し、M&Aも積極活用している。当面は人件費などの費用が先行するが順次収益化を見込んでいる。

 15年4月広告業界特化型求人情報サイト運営のプロフェッショナルメディアを連結子会社化、15年5月データ解析のエコノミックインデックスを持分法適用関連会社化、15年6月ベトナム最大のマルチチャンネルネットワーク(MCN)であるPOPSと業務提携、15年10月オンラインクリエイター分野においてYouTuberと企業のマッチング・分析を行う新ソーシャルクリエイターマッチング・分析プラットフォーム「EUREKA(エウレカ)」をリリースした。

 16年4月CRLA社が世界中の弁護士のためのSNSプラットフォーム「JURISTERRA(ジュリステラ)」β版運用を開始、16年12月エコノミックインデックスがTwitterに掲載されたクチコミ情報をAIで解析して可視化するクラウドサービス「リアクション モニター」を開始した。

 17年1月澪標アナリティクス株式会社代表取締役社長の井原渉氏と共同でデータ分析に関するコンサルティング業務とデータ分析業務を行う新会社MCRアナリティクスを設立、17年4月プロフェッサー・エージェンシーで大学や中小・ベンチャー企業の研究・開発成果を大企業などに紹介するオープンイノベーションプロデュース事業を開始した。

 また7月20日には東芝デジタルソリューションズと、東芝コミュニケーションAI「RECAIUS(リカイアス)」を活用した製品・サービスについて、共同で事業を企画・推進する戦略的な協業関係を構築することに合意したと発表している。最初の取り組みとして「RECAIUS」の音声合成技術を活用した声のプラットフォーム「コエステーション」のエンタテインメント分野における活用を推進する。

■VR(仮想現実)関連を拡大

 16年8月、中国アイデアレンズ社および同社の筆頭株主である投資ファンドのパートナー王涵氏と共同で、VR(仮想現実)における日本市場への進出のための新会社VR Japan(当社出資比率51.0%)を設立、は、中国市場でのHMDの本命と言われ16年9月から中国で発売している。

 17年3月ハウステンボスのアトラクション施設にオリジナルVRコンテンツおよび中国アイデアレンズ社の一体型VRヘッドマウンドディスプレイ(HMD)「IDEALENS K2」の提供開始、17年4月「IDEALENS K2」日本正規版の販売開始、17年6月最新モデル「IDEALENS K2プラス」の発売を開始した。

■18年2月期第1四半期は内製率上昇などで大幅増益

 今期(18年2月期)第1四半期(3月~5月)連結業績は、売上高が前年同期比17.5%増の76億85百万円、営業利益が67.6%増の7億61百万円、経常利益が80.6%増の7億65百万円、純利益が2.0倍の4億59百万円だった。四半期ベースで過去最高の売上高、営業利益となった。

 日本クリエイティブ分野でTV・ゲーム・Web関連中心に請負事業が大幅伸長した。制作スタジオ拡張効果による内製率上昇も寄与して大幅増益だった。売上総利益は19.8%増加し、売上総利益率は37.2%で0.7ポイント上昇した。販管費は8.6%増加したが、販管費比率は27.3%で2.3ポイント低下した。営業外では持分法投資損失が減少した。

 なお新規エージェンシー(ファッション、建築、シェフ、プロフェッサー)および新規サービス(JURISTERRA、プロフェッショナルメディア、VR Japan)における先行投資負担の営業利益への影響額は、合計52百万円(前年同期は63百万円)のマイナス要因だった。

 セグメント別(連結調整前)には、日本クリエイティブ分野の売上高が23.7%増の48億25百万円で営業利益が2.2倍の3億66百万円、韓国クリエイティブ分野の売上高が23.2%増の9億85百万円で営業利益が7百万円(同1百万円の赤字)、医療分野の売上高が6.0%増の11億44百万円で営業利益が37.4%増の3億79百万円、その他事業(IT・法曹・会計他)の売上高が3.7%減の7億30百万円で営業利益が32.5%減の8百万円だった。

 日本クリエイティブ分野では請負事業が大幅伸長して粗利益率も向上した。韓国クリエイティブ分野は黒字化した。なおクリーク・アンド・リバー・エンタテインメントは第2四半期から持分法適用関連会社となる。医療分野は医師紹介事業を中心に堅調だった。その他は新規事業を積極展開して投資費用が先行している。

■18年2月期2桁増益・連続増配予想

 今期(18年2月期)連結業績予想(4月6日公表)は、売上高が前期(17年2月期)比0.3%減の265億円、営業利益が同11.8%増の18億円、経常利益が同18.4%増の17億50百万円、純利益が同12.0%増の10億円としている。配当予想は同1円増配の年間10円(期末一括)で予想配当性向は21.0%となる。

 クリーク・アンド・リバー・エンタテインメントを持分法適用関連会社化することが33億円の減収要因となるため、全体として微減収見込みだが、日本クリエイティブ分野が好調に推移し、韓国要因を除くと実質的に13%増収見込みである。

 利益面では積極的な人材投資などで販管費が増加するが、内制化進展による売上総利益率改善や、新規事業分野の収益化(建築およびファッションは収支均衡、シェフおよびプロフェッサーは赤字縮小、エコノミックインデックス社は下期収支均衡の計画)も寄与して大幅増益予想である。なお18年9月竣工予定のオフィスビル(東京都港区)にグループ拠点を統合して効率化およびシナジー効果を目指す。これに伴って日本クリエイティブ分野で償却費等の費用発生(約1億円)を見込んでいる。

 セグメント別(連結調整前)の計画は、日本クリエイティブ分野が売上高190億円で営業利益11億50百万円、医療分野が売上高34億50百万円で営業利益5億20百万円、その他が売上高41億円で営業利益2億05百万円としている。

 通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高29.0%、営業利益42.3%、経常利益43.7%、純利益45.9%である。医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重すること、韓国クリーク・アンド・リバー・エンタテインメントを第2四半期から持分法適用関連会社化することなどを考慮しても、通期予想に上振れ余地がありそうだ。戦略的投資の効果や新規事業領域の収益化で好業績が期待される。

■株価は00年の上場来高値に接近、好業績やVR関連を評価して上値試す

 株価は1000円近辺でモミ合う展開だったが、第1四半期業績を好感する形で7月20日の1538円まで急伸した。そして00年の上場来高値1800円に接近している。

 7月27日の終値1415円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS47円51銭で算出)は29~30倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は0.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS265円51銭で算出)は5.3倍近辺である。時価総額は約320億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインとなってモミ合い上放れの形となった。そして13週移動平均線が上向きに転じた。好業績やVR関連を評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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