【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジャパンフーズは16年3月期の収益改善期待で出直り、株主優待を勘案した総合利回りは高水準で低PBRも評価材料

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

飲料受託生産大手ジャパンフーズ<2599>(東1)の株価は安値圏でのモミ合い展開だが、今期(15年3月期)の減収減益見通しを織り込んで下値固めは完了した形だ。来期(16年3月期)の収益改善期待で出直り展開だろう。3月期末の株主優待を勘案した総合利回りが高水準であり、1倍割れの低PBRも評価材料だ。

伊藤忠商事<8001>系で飲料受託生産(OEM)の国内最大手である。品目別には炭酸飲料と茶系飲料を主力として、コーヒー飲料、果汁飲料、機能性飲料、酒類飲料、ファーストフード店のディスペンサーでサービスされる業務用濃縮飲料(ウーロン茶、アイスコーヒーなど)を製造している。

主要得意先はアサヒ飲料、キリンビバレッジ、伊藤園<2593>サントリー食品インターナショナル<2587>などの大手飲料メーカーである。容器別にはペットボトル飲料を主力として、缶飲料は戦略的に減少させている。

14年4月に中期経営計画「JUMP2015」のレビューと見直しを発表した。定量計画(イメージ)に15年度連結ベース売上高390億円、営業利益15億50百万円、経常利益15億円、純利益10億円、ROE11.4%を掲げている。中期成長に向けた基本戦略は、コアビジネス(国内飲料受託製造事業)の収益拡大、新規ビジネス(海外事業、水宅配事業、自社ブランド商品、その他)の着実な推進、成長戦略を支える経営基盤の強化としている。

新規ビジネス分野では、国内で水宅配事業を展開するウォーターネット、中国で飲料受託製造事業を展開する東洋飲料(常熱)有限公司(東洋製罐との合弁)への出資比率を引き上げている。東洋飲料(常熱)は中国における日系初の飲料受託製造会社で、国際的な認証規格「FSSC22000」も取得している。ウォーターネットの販売数量、東洋飲料(常熱)の受託数量とも順調に増加しているようだ。

自社ブランド商品に関しては、本社工場がある千葉県産の農林水産物を使用した商品「おいしい房総サイダー」シリーズなどを、千葉県を中心に販売している。14年9月には千葉県鴨川市産レモンを使用して、千葉県と共同開発したレモンウォーター「房総れもん」を数量限定および千葉県限定で発売した。

中期経営計画「JUMP2015」に基いて積極投資も推進し、12年7月に本社工場で世界最新鋭の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン(Eライン)が稼動した。14年3月には既存の大型ペットボトルライン(Tライン)も、リバイタライズ(機能増強)で炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン化した。

さまざまな容器(ペットボトル、瓶、缶)を世界最大級の本社1工場で生産するため、受注状況に応じてラインを組み換えることが可能であり、繁忙期には複数ラインで同一製品を同時製造する市場環境や顧客ニーズの変化に対応した効率的な生産が強みだ。容器のコストダウンなどにも積極的に取り組んでいる。

また本社工場のある千葉県長柄町は首都圏に近いロケーションという競争優位性に加えて、表層地盤のゆれやすさが0.4~0.6と安定しているため災害優位性にも優れている。

なお2月13日に代表取締役の異動を発表した。6月12日付で細井富夫現常務取締役が代表取締役社長に就任する。本所良太現代表取締役社長は新たに代表権を有さない取締役会長に就任する。6月12日開催予定の定時株主総会後の取締役会において正式決定する。12年度にスタートした4カ年中期経営計画「JUMP2015」の最終年度(15年度)に当たり、新体制のもと経営の刷新を図り、更なる業容の拡充を期すとしている。

1月28日発表の今期(15年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の業績(非連結)は、売上高が前年同期比22.0%減の202億09百万円、営業利益が同74.6%減の3億24百万円、経常利益が同74.1%減の3億28百万円、純利益が同77.3%減の1億70百万円だった。

消費増税に伴う駆け込み需要の反動、その後の消費マインド低迷による販売不振の長期化、全国的な天候不順などで飲料業界全体の販売数量が減少し、さらに缶ラインの合理化に伴う製造数量の減少も影響して受託製造数量が減少した。

通期の業績(非連結)見通しは前回予想(9月11日に減額修正)を据え置いて、売上高が前期比11.4%減の284億円、営業利益が同30.3%減の6億50百万円、経常利益が同28.0%減の6億80百万円、純利益が同21.4%減の3億80百万円としている。配当予想(4月24日公表)は前期と同額の年間27円(第2四半期末10円、期末17円)で、業績に応じた安定かつ継続的な配当を行うことを基本方針としている。

今上期(14年4月~9月)は飲料業界の販売不振が影響した形だが、今下期(14年10月~15年3月)は飲料業界の在庫調整が一巡し、新規受託案件も寄与して、前下期(13年10月~14年3月)との比較で受託数量が増加する見通しだ。

今下期の計画は売上高が127億40百万円、営業利益が1億41百万円の赤字としている。飲料業界は全体として冬場が閑散期のため下期が赤字となる収益構造だが、今下期は前下期との比較で売上高は10.3%増収となり、営業利益は赤字幅が4億90百万円縮小する見通しだ。

収益トレンドで見れば、消費増税や天候不順の影響を受けた今上期がボトムとなりそうだ。今下期以降は新規受託案件やコスト削減効果が寄与して収益改善基調だろう。来期(16年3月期)は消費増税や天候不順の影響が一巡し、新規受託案件の増加、新ラインの効率稼働によるコスト削減、減価償却費の減少なども寄与して大幅な収益改善が期待される。

なお株主優待制度については、毎年3月末時点の1単元(100株)以上所有株主に対して自社製品詰め合わせセットを贈呈している。14年3月末については「房総のおいしい水24本」「サイダー バラエティセット30本」「千葉のおいしい麦茶24本」「愛犬のためのPREMIUM MILK+10袋」の中から希望の商品を贈呈している。

株価の動きを見ると、安値圏でのモミ合い展開が続いている。ただし14年10月安値1060円から切り返して下値は着実に切り上げている。今期の減収減益見通しを織り込んで下値固めは完了した形だ。

2月13日の終値1123円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS78円79銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間27円で算出)は2.4%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS1485円56銭で算出)は0.8倍近辺である。

週足チャートで見ると、上向きに転じた13週移動平均線がサポートラインとなり、戻りを押さえていた26週移動平均線突破の動きを強めている。強基調へ転換する動きだ。来期の収益改善期待で出直り展開だろう。3月期末の株主優待を勘案した総合利回りは高水準であり、1倍割れの低PBRも評価材料だ。

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