川崎近海汽船は年初来高値更新の展開、18年3月期第1四半期黒字化、通期も2桁増益予想

 川崎近海汽船<9179>(東2)は近海輸送と内航輸送を主力としている。内航部門における輸送量増加などで18年3月期第1四半期は黒字化した。そして通期も増収・2桁増益予想である。株価は年初来高値更新の展開だ。0.4倍近辺の低PBRも見直して上値を試す展開が期待される。なお17年10月1日付で10株を1株に併合して単元株式数を1000株から100株に変更する。

■近海輸送と内航輸送を展開

 石炭・木材・鋼材輸送などの近海部門、石炭・石灰石・紙製品・農産品輸送やフェリー輸送などの内航部門を展開している。17年3月期の売上高構成比は近海部門が30%、内航部門が70%だった。

 収益面では輸送量、運賃市況、為替、燃料油価格、および燃料油価格変動に伴う燃料調整金などが影響する特性がある。

 新規分野として13年10月オフショア・オペレーション(OOC)と均等出資で合弁会社オフショア・ジャパン(OJC)を設立し、日本近海における海洋資源開発・探査・掘削設備・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船業務に進出した。さらに17年4月OOCの株式の過半を取得して子会社化した。

■内航部門の新規航路開設を推進

 16年10月には静岡県清水港と大分県大分港を結ぶ新規航路を開設した。九州と首都圏・東海甲信地域を結ぶ物流のモーダルシフトが加速し、ドライバー不足問題の解決策の一つとして期待されている。16年10月にはバイオマス燃料用貨物(PKS、木質パレット等)輸送への取り組みを強化するべく、専任機関としてバイオマス関連輸送ワーキンググループを設置した。18年6月には岩手県宮古港と北海道室蘭港を結ぶ新たなフェリー航路(宮古~室蘭326km)を開設予定である。

■18年3月期第1四半期は黒字化

 7月31日発表した今期(18年3月期)第1四半期(4月~6月)連結業績は、売上高が前年同期比8.5%増の94億77百万円、営業利益が2億06百万円(前年同期は1億72百万円の赤字)、経常利益が2億12百万円(同2億64百万円の赤字)、純利益が6億25百万円(同5億42百万円の赤字)だった。近海部門における船隊整備への取り組み、内航部門における輸送量の増加などで黒字化した。純利益は特別損益の改善も寄与した。

 売上総利益は42.5%増加し、売上総利益率は12.3%で2.9ポイント上昇した。販管費は3.1%減少し、販管費比率は10.1%で1.3ポイント低下した。営業外収益では為替差損益が改善(前期差損87百万円、今期差益6百万円)した。特別利益ではOOCを子会社化したことに伴う負ののれん発生益4億89百万円を計上し、特別損失では用船契約解約金4億64百万円が一巡した。

 セグメント別に見ると、近海部門は売上高が3.2%減の27億95百万円で営業利益が2億77百万円の赤字(前年同期は4億04百万円の赤字)だった。木材輸送でバイオマス発電用PKS輸送が増加したが、バルク輸送全体の輸送量は減少し、市況回復に力強さを欠く状況だった。ただし輸送需要と市況に見合った船隊整備への取り組みの成果で赤字が縮小した。

 内航部門は売上高が14.2%増の66億81百万円で営業利益が2.2倍の5億円だった。不定期船輸送で石灰石専用船および電力向け石炭専用船が安定した輸送量を確保し、定期船輸送およびフェリー輸送の輸送量増加も寄与した。

■18年3月期通期増収・2桁増益予想、円安と市況改善がプラス要因

 今期(18年3月期)連結業績予想(4月28日公表)は売上高が前期(17年3月期)比9.6%増の411億円、営業利益が16.8%増の16億50百万円、経常利益が18.1%増の16億円、純利益が68.7%増の10億円としている。想定為替レートは1ドル=110円(前期実績1ドル=108円44銭)である。また想定燃料油価格(国内価格)は4万7700円/KL(同4万38円/KL)としている。

 近海部門では市況が底を打ったという認識に立ち、市況動向を慎重に見極めながら貨物獲得や船体整備を実行する。内航部門は不定期船輸送で各専用船の安定した輸送量を見込み、定期船輸送では16年10月開設した清水~大分の新規航路の集荷に注力する。

 通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高23.1%、営業利益12.5%、経常利益13.3%、純利益62.5%である。円高影響が一巡し、市況改善傾向も追い風となり、通期ベースでも収益改善が期待される。

 配当予想は第2四半期末が5円、期末が50円としている。17年10月1日付の株式併合(10株を1株に併合)を考慮して株式併合後に換算すると年間100円となり、17年3月期の換算後の年間80円との比較で実質的に20円増配となる。予想配当性向は29.4%である。

■中期経営計画で20年3月期ROE8.1%目指す

 17年4月策定した中期経営計画では、目標値として20年3月期売上高467億円(近海部門126億円、その他含む内航部門318億円、OSV部門23億円)、営業利益33億50百万円(近海部門6億50百万円の赤字、その他含む内航部門38億円、OSV部門2億円)、経常利益33億円、純利益22億円、そして自己資本比率56.5%、ROE8.1%、DER0.5倍を掲げている。前提は為替レートが1ドル=110円、燃料油価格が5万1100円/KLである。

 全体的課題として、近海部門の収支改善に注力して収益力の向上と安定配当の継続を目指す、内航部門の新鋭船投入と新規航路開設でサービス充実を図る、OSV部門はオフショア支援船事業の充実化に取り組むとしている。

 新造船建造等に対する3年間合計投資額(20年4月以降竣工の新造船建造資金含む)は154億円の計画としている。期間中の新造は近海部門の一般貨物船2隻(用船)、内航部門のRORO船1隻(社船または用船)1隻、旅客フェリー1隻(社船)、およびOSV部門のオフショア支援船1隻(社船)の予定である。

 陸上輸送におけるドライバー不足で海上輸送へのモーダルシフトが注目され、中期的には近海部門における船隊規模適正化、内航部門における新規航路開設、日本近海におけるオフショア支援船業務、コスト削減効果などで収益改善が期待される。

■株価は年初来高値更新の展開、0.4倍近辺の低PBRも見直して上値試す

 なお17年10月1日付で、10株を1株に併合して単元株式数を1000株から100株に変更する。

 株価は300円近辺でのモミ合いから上放れて年初来高値更新の展開となった。7月28日には346円まで上伸した。

 8月1日の終値340円を指標面(EPS・配当・BPSは17年10月1日付株式併合前)で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS34円06銭で算出)は10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は2.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS797円24銭で算出)は0.4倍近辺である。時価総額は約100億円である。

 週足チャートで見ると上向きに転じた13週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。0.4倍近辺の低PBRも見直して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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