生化学工業は5月の年初来高値に接近、18年3月期第1四半期大幅増益で通期も大幅増益予想

 生化学工業<4548>(東1)は関節機能改善剤アルツが主力の医薬品メーカーである。18年3月期第1四半期は大幅増益だった。通期も海外の好調が牽引して大幅増益予想である。株価は急伸して5月の年初来高値に接近している。好業績を評価して上値を試す展開が期待される。

■関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野が主力の医薬品メーカー

 糖質科学分野が主力の医薬品メーカーで、国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け単回投与関節機能改善剤Gel-One、米国向け3回投与関節機能改善剤VISCO-3、米国向け5回投与関節機能改善剤SUPARTZ-FX、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、LAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。

 17年3月期の売上構成比は、医薬品事業が82%(国内医薬品55%、海外医薬品23%、医薬品原体4%)で、LAL事業が18%だった。収益は販売数量、薬価改定、為替、研究開発費、受取ロイヤリティーなどが影響する。高齢者人口増加を背景に関節機能改善剤の需要拡大が期待される。

■新薬開発は糖質科学分野に焦点

 研究開発は糖質科学分野(糖鎖や複合糖質を研究する科学分野)に焦点を絞り、国際競争力を確立する「グローバル・カテゴリー・ファーマ」としての発展を目指している。

 開発中の新薬としては、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603(コンドリアーゼ)、変形性膝関節症改善剤SI-613(NSAID結合ヒアルロン酸)、ドライアイ治療剤SI-614(修飾ヒアルロン酸)がある。

 腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603は日本で14年1月に製造販売承認申請して審査継続中である。品質管理に関する審査対応に時間を要している。米国では第3相臨床試験段階として、二重盲検試験および安全性評価を主目的としたオープン試験が17年3月終了した。

 16年8月にはスイスのフェリング社とSI-6603の海外におけるライセンス契約を締結した。フェリング社はSI-6603の日本を除く全世界を対象とした独占開発・販売権を取得し、当社はフェリング社から契約一時金5百万米ドル、および今後の開発や販売等の進捗に応じて複数年にわたり最大で90百万米ドルのマイルストーン型ロイヤリティーを受領する。日本における独占的販売契約については12年12月に科研製薬<4521>と締結している。

 変形性膝関節症治療剤SI-613は米国を含めたグローバル展開を目指す製品と位置付けている。17年2月日本で第3相臨床試験を開始、17年5月小野薬品工業<4528>と日本における共同開発・販売提携に関する基本合意書を締結した。また17年6月米国で第2相臨床試験を開始した。

 ドライアイ治療剤SI-614は、米国・欧州で15年1月第2・3相試験が終了し、次相試験について検討中である。

■重点地域の米国におけるプレゼンスを強化

 重点地域と位置付けている米国では、高齢化に伴って関節機能剤の市場拡大が予想されるため、単回投与製品Gel-One、3回投与製品VISCO-3、5回投与製品SUPARTZ-FXによってプレゼンス強化を図っている。

 16年11月には米ジンマー・バイオメット社と、3回投与の関節機能改善剤VISCO-3の米国における独占販売契約を締結した。米ジンマー・バイオメット社は12年から単回投与の関節機能改善剤Gel-Oneを米国で販売している。

■18年3月期第1四半期は大幅増益

 7月31日発表した今期(18年3月期)第1四半期(4月~6月)連結業績は、売上高が前年同期比9.3%減の75億08百万円だが、営業利益が2.3倍の8億74百万円、経常利益が3.1倍の12億56百万円、純利益が3.2倍の9億23百万円だった。

 売上面では、国内アルツの前年同期における出荷集中の反動、一部の海外販売提携先における在庫調整の影響で減収だった。為替の円安影響は約40百万円の増収要因だった。利益面では研究開発費の一部が第2四半期(7月~9月)以降にずれ込んだことで大幅増益だった。

 売上総利益は7.9%減少したが、売上総利益率は55.7%で0.8ポイント上昇した。販管費は20.5%減少し、販管費比率は44.1%で6.2ポイント低下した。研究開発費が15億58百万円で32.0%減少した。営業外収益では投資有価証券売却益1億59百万円を計上した。

 セグメント別売上高は、医薬品事業が10.5%減の60億62百万円(国内医薬品が11.6%減の41億17百万円、海外医薬品が5.9%減の17億25百万円、医薬品原体が20.6%減の2億19百万円)で、LAL事業が4.0%減の14億45百万円だった。海外売上高は2.6%減の29億11百万円だが、海外売上比率は38.8%で2.7ポイント上昇した。

 国内アルツの医療機関納入本数は、前年同期に新容器投入(16年4月プラスチックシリンジのルアーフィットタイプ)に伴う販売増があった反動で減少した。白内障手術補助剤オペガン類は、16年7月発売したシェルガンの販促活動で市場浸透が進み、医療機関納入本数および市場シェアが拡大した。

 米国向けGel-Oneは現地販売数量が約2割増加したが、前年同期に製品ラベル変更に伴って出荷が集中した反動で微増収にとどまった。米国向けSUPARTZ-FXは現地販売が微減だったが、販売提携先への出荷タイミング要因で増収となった。

■18年3月期通期は海外が牽引して大幅増益予想

 今期(18年3月期)連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比2.4%増の303億円、営業利益が17.0%増の15億円、経常利益が51.4%増の37億50百万円、純利益が51.0%増の27億円としている。配当予想は前期から記念配当5円を落として年間26円(第2四半期末13円、期末13円)としている。予想配当性向は54.6%となる。

 国内医薬品は前期並みだが、米国向けGel-Oneの出荷増加、LAL事業の米国子会社ACC社の売上拡大が牽引して大幅増益予想である。想定為替レートは1米ドル=108円で、為替感応度(米ドル1円変動時の年間影響額)は売上高で約1億10百万円、営業利益で約45百万円としている。

 また売上総利益率は57.9%で2.7ポイント上昇、販管費比率は53.0%で2.1ポイント上昇、研究開発費は83億50百万円で6.6%増加の想定としている。営業外収益ではロイヤリティーの増加を見込んでいる。

 セグメント別売上高は、医薬品事業が1.6%増の245億50百万円(国内医薬品が0.5%増の163億50百万円、海外医薬品が6.3%増の72億円、医薬品原体が10.1%減の10億円)で、LAL事業が5.8%増の57億50百万円としている。海外売上高は7.9%増の119億円としている。

 通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高24.8%、営業利益58.3%、経常利益33.5%、純利益34.2%である。研究開発費の一部が第2四半期以降にずれ込んだため利益進捗率が高水準の形だが、通期でも好業績が期待される。

■新中期経営計画で19年3月期経常利益45億円目標

 16年5月策定の新中期経営計画(17年3月期~19年3月期)では、重点戦略として、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の確実な進展、変形性膝関節症市場におけるリーディングカンパニーとしての進化、開発パイプラインの充実、最適な生産・品質管理体制の追求を掲げている。

 腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603については、日本での上市と拡販および潜在市場規模の大きい米国での事業化を目指す。変形性膝関節症市場におけるリーディングカンパニーとしての進化では、成長ドライバーであるGel-Oneの米国売上拡大と新規市場展開、製品改良による国内アルツの販売数量維持、次世代品となる関節機能改善剤SI-613の開発を推進する。

 開発パイプラインの充実では、糖質科学分野において他社を凌駕する基盤技術の保持、探査研究の加速、持続的な開発テーマの創製を推進する。最適な生産・品質管理体制の追求では、製品の安定供給、さらなる生産効率化の推進によって原価低減を実現する。

 経営目標値には19年3月期売上高320億円、営業利益25億円、経常利益45億円を掲げている。想定為替レートは1米ドル=110円で、海外事業の拡大(海外売上高比率45%)によって国内薬価改定による減収をカバーし、研究開発費は高水準(対売上高比率25%~30%)で推移する。また各種受取ロイヤリティーを営業外収益として織り込んでいる。

■株価は5月の年初来高値に接近、好業績評価して上値試す

 株価は第1四半期業績を好感する形で急伸し、8月2日には1965円まで上伸した。そして5月の年初来高値1978円に接近している。

 8月2日の終値1935円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS47円65銭で算出)は40~41倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1248円07銭で算出)は1.6倍近辺である。なお時価総額は約1099億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返してサポートラインを確認した形だ。好業績を評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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