インテリジェントウェイブは目先的な売り一巡して戻り試す、18年6月期2桁営業増益予想

 インテリジェントウェイブ<4847>(JQ)は金融分野や情報セキュリティ分野を中心にシステムソリューション事業を展開している。17年6月期は営業減益だったが、18年6月期は2桁営業増益予想である。株価は07年来高値圏から急反落したが売られ過ぎ感を強めている。目先的な売りが一巡して戻りを試す展開が期待される。

■金融システムや情報セキュリティ分野のソリューションが主力

 大日本印刷<7912>の連結子会社で、ソフトウェア開発中心にソリューションを提供する金融システムソリューション事業、情報セキュリティ分野中心にパッケージソフトウェアや保守サービスを提供するプロダクトソリューション事業を展開している。

 17年6月期セグメント別売上構成比は金融システムソリューション事業88%、プロダクトソリューション事業12%だった。収益面では金融業界のシステム投資や案件ごとの採算性が影響し、期後半の構成比が高い特性がある。

■クレジットカード決済関連システムで高シェア

 高度な専門性が要求されるクレジットカード決済のフロント業務関連システムで高シェアを持ち、クレジットカード会社、ネット銀行、証券会社など金融関連のシステム開発受託・ハードウェア販売・保守サービスを収益柱としている。

 クレジットカード利用承認や銀行ATMネットワーク接続などの決済ネットワークを支える仕組みのNET+1(ネットプラスワン)、クレジットカード不正利用検知のACEPlus(エースプラス)、情報漏えい対策システムCWAT(シーワット)などの製品を強みとしている。CWATはPCなど情報端末のファイル操作、メール送信、外部メディアへの書き込み、接続などを監視し、企業の情報を守る情報漏えい対策システムである。

■事業領域拡大に向けて新製品・新サービスを強化

 金融システムソリューション事業ではクレジットカード決済のフロント業務関連システムから、バックオフィス業務関連など基幹業務システム関連への事業領域拡大を目指している。またプロダクトソリューション事業では、サイバー攻撃や情報漏えいに対応したセキュリティ関連のソリューションを強化している。

 新製品OnCore(オンコア)は、NET+1やACEPlus等の機能を搭載し、さまざまなシステム開発におけるプラットフォームの基盤となる製品だ。16年1月から国内販売を開始し、国内第一号案件として大手クレジットカード会社のカード決済関連業務で売上を計上した。さらにハードウェアをセットにしたパッケージ型製品として、金融以外の業界向けや東南アジアでの販売も視野に入れている。

 17年3月には独自のAI技術を活用した新製品OpAI(オーピーエーアイ)を利用した開発プロジェクトを大手損害保険会社から受注した。

 クレジットカード加盟店契約業務のシステムを複数の顧客で共同利用するサービス「共同利用型サービス」については、16年10月ネット銀行、16年11月クレジットカード会社、17年1月琉球銀行のサービスを開始した。4社目および5社目も受注済みで、18年6月期サービス開始予定である。

■アライアンス戦略も積極推進

 アライアンス戦略も推進している。14年2月ジーフィー(GIFI)と個人投資家向け次世代オンライントレードシステム分野で業務提携、16年4月ソフトバンクと日本IBMの「IBM Watson エコシステムプログラム」のテクノロジーパートナー認定、16年11月米First Performanceとカード利用者が自身の決済カードの利用条件をリアルタイムにコントロールする「Budgeting Control & Alerts」クラウドプラットフォームサービス事業で提携した。

■17年6月期(非連結決算に移行)は営業減益

 8月2日発表した前期(17年6月期、非連結決算に移行)の非連結業績は、前々期(16年6月期)の個別業績との比較で、売上高が17.5%増の84億69百万円、営業利益が4.0%減の7億02百万円、経常利益が2.1%増の7億66百万円、純利益が6.6%増の5億47百万円だった。

 金融システムソリューション、プロダクトソリューションとも需要が高水準で売上高は計画を上回り上場来最高となったが、不採算案件の発生で営業減益となり、各利益は計画を下回った。

 売上総利益は7.3%増加したが、売上総利益率は25.2%で2.4ポイント低下した。販管費は13.9%増加したが、販管費比率は16.9%で0.5ポイント低下した。ROEは10.3%で0.1ポイント低下、自己資本比率は66.4%で5.8ポイント低下した。

 金融システムソリューションは売上高が16.6%増の74億47百万円(ソフトウェア開発が20.4%増の48億35百万円、ハードウェアが22.8%増の9億74百万円、その他が3.9%増の16億38百万円)で、営業利益が4.0%減の6億51百万円だった。カード系開発案件の増加などで2桁増収だったが、不採算案件の発生が影響して減益だった。

 プロダクトソリューションは売上高が24.8%増の10億22百万円で営業利益が3.8%減の51百万円だった。売上高の内訳は当社製品(CWAT)が3.3%増の4億38百万円、他社製品(Traps等)が47.6%増の5億83百万円だった。他社製品の売上構成比が上昇して減益だった。

 なお配当は期末1円増額して年間7円(期末一括)とした。配当性向は33.7%である。また8月2日には、公平な利益還元のために、株主優待制度を17年6月期末をもって廃止すると発表した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期16億53百万円、第2四半期21億39百万円、第3四半期22億63百万円、第4四半期24億13百万円、営業利益は37百万円、2億10百万円、2億75百万円、1億80百万円だった。

■18年6月期(非連結決算に移行)は増収増益予想

 今期(18年6月期)の非連結業績予想(8月2日公表)は、売上高が前期(17年6月期)比6.3%増の90億円、営業利益が21.0%増の8億50百万円、経常利益が13.5%増の8億70百万円、純利益が9.7%増の6億円としている。配当予想は前期と同額の年間7円(期末一括)で予想配当性向は30.7%となる。

 需要が高水準であり、マネジメント体制整備・強化による開発プロジェクト単位での労務管理および収支管理徹底も寄与して実質増収増益予想である。銀行やクレジットカード会社に対してクレジットカードのアクワイアリング業務(加盟店契約業務)システムをクラウド型で提供する共同利用型サービスも第2四半期から開始して増収に寄与(今期3社開始、5社まで見込む)する。

 セグメント別の計画は、金融システムソリューションの売上高が3.4%増の77億円で営業利益が19.8%増の7億80百万円、プロダクトソリューションの売上高が27.2%増の13億円で営業利益が37.3%増の70百万円としている。金融システムソリューションはカード系のシステム開発やクラウドサービス事業が伸長し、プロダクトソリューションは他社製パッケージの好調が続く見込みだ。

■中期事業計画で20年6月期営業利益10億円目標

 クレジットカード・金融業界においては中期的に、キャッシュレス社会や決済サービス多様化に対応したシステム投資や、サイバーセキュリティ対策投資が高水準に推移する見通しだ。

 8月2日発表した中期事業計画では、サイバーセキュリティ総合プロバイダーを目指している。金融システムソリューション事業では開発業務の拡大、信頼性の向上、プロジェクト管理の強化、AIを活用したシステム開発、プロダクトソリューション事業では販売強化を推進する。経営目標値には20年6月期売上高105億円(金融システムソリューション事業89億円、プロダクトソリューション事業16億円)、営業利益10億円を掲げた。

 高水準の投資需要を背景にクレジットカード・金融関連の開発案件受注増加が期待され、さらにサイバー攻撃対策や情報漏えい対策などセキュリティ関連の需要増加も期待される。中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は目先的な売り一巡して戻り試す

 株価は決算発表を機に急落し、07年来高値圏700円台でのモミ合いから下放れの形となった。8月10日には561円まで下押した。前期の利益が計画を下回ったことや、株主優待制度の廃止を発表したことが嫌気されたようだ。ただし売られ過ぎ感を強めている。

 8月14日の終値596円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS20円88銭で算出)は28~29倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間7円で算出)は1.2%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS214円51銭で算出)は2.8倍近辺である。時価総額は約157億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。また週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を一気に割り込んだが、52週移動平均線が下値を支える形だ。目先的な売りが一巡して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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