クレスコは上場来高値更新の展開、18年3月期1Q大幅増益で通期予想に増額余地

 クレスコ<4674>(東1)はビジネス系ソフトウェア開発を主力として、カーエレクトロニクス関連などの組込型ソフトウェア開発も展開している。18年3月期第1四半期は大幅増益だった。受注が高水準に推移して通期も増収増益予想・連続増配予想である。そして増額余地がありそうだ。株価は上場来高値更新の展開だ。好業績を評価して上値を試す展開が期待される。

■ビジネス系ソフトウェア開発が主力で組込型ソフトウェア開発も展開

 ビジネス系ソフトウェア開発(アプリケーション開発、基盤システム構築)事業を主力として、組込型ソフトウェア開発事業、その他事業(商品・製品販売)も展開している。

 17年3月期セグメント別売上高構成比は、ソフトウェア開発事業83%(金融・保険分野40%、公共・サービス分野22%、流通・その他分野20%)、組込型ソフトウェア開発事業17%(通信システム分野2%、カーエレクトロニクス分野7%、情報家電等・その他分野9%)、その他事業(商品・製品販売等)0%だった。

 収益面では案件別の採算性が影響し、企業のIT投資関連のため年度末にあたる第4四半期(1月~3月)の構成比が高くなる特性がある。配当に関しては、特別損益を零とした場合に算出される当期純利益の40%相当額をメドとした配当を継続的に実現することを目指している。

■中期成長に向けて先端技術への取り組み強化

 中期成長に向けた重点施策として、コア事業(システム基盤、アプリケーション開発、組み込み)を組み合わせたビジネスの推進、デジタル変革をリードする先端技術(AI、Robotics、IoT)の研究・拡大、品質・生産性の徹底的追求、サービスビジネスの推進、グループシナジー強化およびM&A・アライアンスの推進、開発体制の拡充(ニアショア、オフショア、ビジネスパートナー)、積極的な情報発信(PR、IR)などを推進している。

 オリジナル製品・サービスでは、IoTの「KEYAKI」、AIの「Minervae」、クラウドの「Creage」を3大ブランドと定義し、ソフトウェア開発・システム開発の需要喚起を推進している。

 15年7月には「IBM Watsonエコシステムプログラム」の初期エコシステムパートナーに選定され、17年4月にはWatson導入を支援する新サービス「Minervae PoCKET(ミネルヴァポケット)」の販売を開始した。

 16年10月には名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学分野と、眼科領域における画像診断の補助に活用する人工知能(AI)システムの共同研究を実施すると発表している。17年6月には、AIとLINEを連携したコールセンター支援システムの開発を発表している。

 またAIの活用ノウハウを提供するサービスブランド「ミネルヴァ」シリーズ第2弾として、9月から画像認識可能なチャットボット「ミネルヴァ ヴィボット」のサービス開始を予定している。

■M&A・アライアンスも積極活用してグループ力強化

 M&A・アライアンスも積極活用してグループ力強化を推進している。15年9月Kii社、KDDI<9433>、大日本印刷<7912>が設立した企業連合「Kiiコンソーシアム」に参加、15年10月メディア・マジックを子会社化、16年4月連結子会社再編でクレスコ・イー・ソリューションがエス・アイ・サービスを吸収合併、16年9月エヌシステムを子会社化した。17年4月にはベトナムのハノイ市に駐在事務所を開設した。なお8月1日には、カーエレクトロニクス関連の需要増加に対応するため、名古屋開発センターが営業開始した。

■18年3月期1Qは大幅増益

 今期(17年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比9.2%増の76億59百万円、営業利益が27.0%増の5億97百万円、経常利益が34.3%増の7億19百万円、純利益が34.5%増の4億95百万円だった。受注高は15.1%増の93億39百万円で、受注残高は31.6%増の70億76百万円となった。

 ソフトウェア開発・システム開発の需要が高水準であり、営業および開発体制の強化、品質管理の徹底などの施策も奏功して増収・大幅増益だった。売上高、利益とも計画を上回ったようだ。売上総利益は12.9%増加し、売上総利益率は18.3%で0.6ポイント上昇した。販管費は4.3%増加したが、販管費比率は10.5%で0.5ポイント低下した。

 ソフトウェア開発事業は、売上高が11.6%増の63億83百万円で、営業利益(連結調整前)が11.0%増の6億75百万円だった。分野別売上高は金融・保険が2.4%増の29億97百万円、公共・サービスが10.2%増の15億42百万円、流通・その他が32.4%増の18億43百万円だった。特に流通セクターにおいてベンダー経由以外の受注が牽引し、インフラ・ネットワーク系もクラウド案件やセキュリティ案件が増加した。

 組込型ソフトウェア開発事業は売上高が1.3%減の12億68百万円で営業利益が16.9%増の2億11百万円だった。分野別売上高は通信システムが24.3%減の1億17百万円、カーエレクトロニクスが0.3%増の5億20百万円、情報家電等・その他が3.2%増の6億30百万円だった。カーエレクトロニクスはプロジェクトの端境期だった。

 その他事業(商品・製品販売等)は売上高が37.1%減の7百万円で営業利益が5百万円の赤字(前年同期は15百万円の赤字)だった。

■18年3月期も増収増益・連続増配予想

 今期(18年3月期)の連結業績予想(5月9日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比7.5%増の332億円、営業利益が10.8%増の30億円、経常利益が6.6%増の32億80百万円、純利益が9.2%増の22億30百万円としている。配当予想は3円増配の年間58円(第2四半期末29円、期末29円)としている。予想配当性向は29.5%となる。

 システム開発案件の受注が高水準に推移して増収増益・連続増配予想である。国内のIT投資需要は、クラウドやモバイル端末を活用したシステムへの移行、ITシステム基盤の統合・再構築、ビジネスプロセスの可視化・最適化、ビッグデータの分析と活用、仮想化技術の導入、ソーシャル・テクノロジーのビジネス活用などで高水準に推移する見込みだ。

 通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高23.1%、営業利益19.9%、経常利益21.9%、純利益22.2%である。やや低水準の形だが、第4四半期の構成比が高い特性のためネガティブ要因とはならない。良質な案件の獲得競争が厳しいとして通期予想を据え置いたが、第1四半期が計画を上回ったことを考慮すれば、通期予想に増額余地がありそうだ。

■株価は上場来高値更新の展開、好業績評価して上値試す

 なお6月26日発表の自己株式公開買い付けは7月25日に終了した。買い付け予定数66万株に対して、応募数60万株、買い付け数60万株だった。

 株価は5月高値3935円を突破して8月17日に4115円まで上伸した。上場来高値更新の展開だ。

 8月21日の終値3980円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS196円64銭で算出)は20~21倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間58円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1224円66銭で算出)は3.2倍近辺である。時価総額は約478億円である。

 週足チャートで見ると、13週移動平均線がサポートラインとなって上昇トレンドである。好業績を評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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