翻訳センターは売り一巡して反発期待、18年3月期1Q減収減益だが通期は増収増益・連続増配予想

 翻訳センター<2483>(JQ)は日本最大規模の言語サービス会社である。専門性の高い企業向け翻訳サービスを主力として、通訳や国際会議運営なども展開している。18年3月期第1四半期はコンベンション事業における大型国際会議の反動減の影響で減収減益だったが、通期は増収増益・連続増配予想である。株価は売り一巡して反発が期待される。

■企業向け翻訳サービスを主力として通訳や国際会議運営なども展開

 特許・医薬・工業・法務・金融分野など専門性の高い企業向け翻訳サービスを主力として、派遣、通訳、語学教育、コンベンションなどに業容を拡大している。

 12年9月通訳・翻訳・国際会議運営のアイ・エス・エス(ISS)を子会社化、13年6月アイタスからIT関連ローカライゼーション/マニュアル翻訳事業の一部を譲り受け、14年10月医薬品承認申請・取得に関するメディカルライティング業務を専門に受託する子会社パナシアを設立した。

 17年3月期セグメント別売上高構成比は翻訳事業69%(特許分野18%、医薬分野24%、工業・ローカライゼーション分野20%、金融・法務分野7%)、派遣事業9%、通訳事業8%、語学教育事業2%、コンベンション事業11%、その他2%だった。収益面では下期の構成比が高くなる傾向があるとしている。

 翻訳事業は専門性の高い産業翻訳に特化している。グループ全体で約6300名の登録者を確保し、対応可能言語は約75言語と国内最大規模である。また取引社数は約4400社、年間受注件数は約6万4000件に達している。翻訳サービスの需要は、企業のグローバル展開も背景として知的財産権関連、新薬開発関連、新製品開発関連、海外展開関連、IR・ディスクロージャー関連を中心に拡大基調である。

 なお米国の調査会社Commom Senese Advisory社発表「世界の語学サービス会社ランキング2016」において5年連続でアジア1位となった。

■18年3月期1Qは減収減益

 今期(18年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比6.6%減の24億20百万円、営業利益が28.9%減の1億23百万円、経常利益が28.8%減の1億25百万円、純利益が14.7%減の96百万円だった。

 コンベンション事業における前期運営した大型国際会議の反動減の影響で減収減益だった。ただし主力の翻訳事業は好調に推移した。売上総利益は1.9%増加し、売上総利益率は43.0%で3.6ポイント上昇した。販管費は8.2%増加し、販管費比率は37.9%で5.2ポイント上昇した。

 翻訳事業は売上高が12.2%増の18億18百万円で営業利益(連結消去前)が43.3%増の1億25百万円だった。売上高の内訳は、特許分野が11.1%増の4億87百万円、医薬分野が10.4%増の6億43百万円、工業・ローカライゼーション分野が15.5%増の4億78百万円、金融・法務分野が13.3%増の2億08百万円だった。

 特許分野は特許事務所からの受注が好調に推移し、企業の知的財産関連部署からの受注も堅調だった。医薬分野は外資製薬会社との安定した取引に加えて、国内製薬会社や医療機器関連企業からの受注が拡大した。工業・ローカライゼーション分野は自動車関連企業からの受注が好調に推移し、大手情報通信関連企業との取引拡大も寄与した。金融・法務分野は企業の管理系部署との取引拡大や金融機関からの受注継続が寄与した。

 派遣事業は売上高が24.0%増の2億71百万円で営業利益が4.4%減の17百万円、通訳事業は売上高が29.8%増の2億26百万円で営業利益が2.1倍の8百万円、語学教育事業は売上高が5.0%減の54百万円で営業利益が6.0%増の8百万円、コンベンション事業は売上高が97.5%減の11百万円で営業利益が28百万円の赤字(前年同期は59百万円の黒字)、その他は売上高が15.4%減の37百万円で営業利益が0百万円(同7百万円)だった。

■18年3月期通期は増収増益・連続増配予想

 今期(18年3月期)連結業績予想(5月11日公表)は売上高が前期(17年3月期)比0.7%増の103億円、営業利益が7.5%増の7億50百万円、経常利益が7.2%増の7億50百万円、純利益が17.0%増の5億20百万円としている。

 コンベンション事業は前期に大型案件が集中した反動で減少するが、主力の翻訳事業の好調が牽引して増収増益予想である。配当予想は同3円増配の年間58円(期末一括)としている。4期連続増配で予想配当性向は18.7%となる。

 通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高23.5%、営業利益16.4%、経常利益16.7%、純利益18.5%である。低水準の形だが、下期の構成比が高い収益特性であり、期初時点で下期偏重の計画であることを考慮すれば、ネガティブ要因とはならない。通期ベースでは増収増益が期待される。

■中期経営計画で18年3月期ROE10%以上目標

 第3次中期経営計画では、目標数値として18年3月期売上高110億円、営業利益7億50百万円、純利益4億50百万円、ROE10%以上を掲げている。また営業利益率については中期的に8%を目指すとしている。

 重点施策としては、顧客満足度向上のための分野特化戦略のさらなる推進、ビジネスプロセスの最適化による生産性向上、ランゲージサービスにおけるグループシナジーの最大化を推進する。中期的に収益拡大基調が期待される。

■株価は売り一巡して反発期待

 株価は第1四半期業績を嫌気する形で8月8日の年初来高値4100円から急反落し、8月23日には3615円まで調整した。

 8月23日の終値3615円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS308円69銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間58円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2064円69銭で算出)は1.8倍近辺である。なお時価総額は約61億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が拡大して売られ過ぎ感を強めている。売り一巡して反発が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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