JPホールディングスは18年3月期1Q大幅増益、通期は営業微減益予想だが国策が追い風の事業環境に変化なし

 JPホールディングス<2749>(東1)は保育園業界の最大手で、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニーである。18年3月期第1四半期は大幅増益だった。通期は保育士待遇改善や新規事業投資などで営業微減益予想だが、待機児童解消政策が追い風となる事業環境に変化はない。またベトナムで9月5日に幼稚園2園を開園する。株価は調整一巡してモミ合い上放れの展開が期待される。

■保育園業界の最大手、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニー

 保育園業界の最大手で、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニーである。保育園・学童クラブなどを運営する子育て支援事業(日本保育サービス、四国保育サービス)を主力として、保育所向け給食請負事業(ジェイキッチン)、英語・体操・リトミック教室請負事業(ジェイキャスト)、保育関連用品の物品販売事業(ジェイ・プランニング販売)、研究・研修・コンサルティング事業(日本保育総合研究所)なども展開している。16年9月には横浜市で認可保育所・民間学童施設を運営するアメニティライフを子会社化した。

 17年6月末の運営施設数(アメニティライフ含む)は、保育園182(認可保育園・公設民営11、認可保育園・民設民営147、認可外保育園・東京都認証保育園21、その他認可外保育園3)、学童クラブ71施設、児童館12施設、民間学童クラブ5施設の合計270園・施設(17年3月末比19園・施設増加)である。首都圏中心に展開している。

■保育士確保に向けて待遇改善や職場環境整備を推進

 保育士確保に向けて、保育士資格を有する学生を即戦力に近い人材として採用するとともに、別の新規採用枠として保育士資格を持たない新卒を採用するなど採用手法を工夫している。また16年4月には奨学金支給を開始した。

 17年3月期には保育士の待遇改善を国に先行して実施した。16年3月期のベースアップに続く2年連続の大幅賃上げである。18年3月期も賃金水準の引き上げを実施する予定で、社会的に評価される賃金制度の構築を目指す。

 また保育士の業務負担軽減、保育士と保護者のコミュニケーション強化に向けた取り組みの一環として、日本保育サービスが運営する全国の保育園にhugmo(ハグモー)の保育クラウドサービス「hugmo」を順次導入している。

 こうした待遇改善や働きやすい職場環境の整備が奏功し、17年度は保育士の新卒入社で過去最多となる247名を採用した。資格取得コースの新卒社員は32名だった。また17年6月末時点で中途入社207名を採用している。

 17年5月には夜間保育時間帯に特化したアルバイト保育士「スターライト先生」の採用を開始した。シフト制で働く保育士の負担を軽減するとともに、短時間で効率的に働きたい潜在保育士の掘り起こしを目指す。

■中期経営計画で保育士待遇改善、新学童クラブ、海外展開などを推進

 中期経営計画では、安全対策の強化および保育の質のさらなる向上、新規開設および既存施設の保育士増員による受入児童数の拡大、人材投資の拡大(採用活動強化、人材育成強化、人事評価制度見直し)、経営管理体制の再整備(事業リスク管理体制強化、グループ会社連携強化)、収益基盤拡大に向けた新規事業への着手(民間児童クラブ、既存サービスの拡販、海外展開)を掲げている。

 補助金を申請せず料金設定の面で自由度が高い新タイプの民間学童クラブは、16年9月第1号のAEL(アエル)湯島、17年4月第2号のAEL横浜ビジネスパークを開設した。

 17年2月には資生堂<4911>と共同で、事業所内保育所運営受託の合弁会社KODOMOLOGY(コドモロジー)(当社出資比率49%)を設立した。事業所内保育所などへの公的補助を認可保育所並みにした「企業主導型保育事業」で、全国の様々な企業からの事業受託を目指す。資生堂掛川工場に事業所内保育所を17年秋に新設し、新会社の受託1号とする予定だ。

 コンサルティング事業は、子育て支援施設の新規開発・運営のコンサルティングを展開する。17年3月期からの契約継続は4法人で、18年3月期新規契約は8法人の見込みである。

 海外はベトナムにおいて、中間層の共働き世帯をターゲットに幼稚園事業を展開する方針だ。8月18日には、ダナン市に100%出資現地法人が運営する「COHAS DA NANG」、およびホーチミン市に現地企業とのFC契約による「Cohas Kids」を、それぞれ9月5日に開園すると発表した。

■収益は稼働率や補助金などが影響する特性

 収益は既存施設の稼働率、新規施設の開園、保育士待遇改善に伴う人件費の増加、補助金の増減などが影響する。また新規施設の開園は概ね4月だが、稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する傾向もある。

 利益配分については将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、配当性向30%前後の業績連動型配当の継続実施を基本方針としている。

■18年3月期1Qは大幅増益

 今期(18年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比17.9%増の63億98百万円、営業利益が3.4倍の2億36百万円、経常利益が2.8倍の3億11百万円、純利益が3.0倍の1億83百万円だった。

 新規施設開設(保育園10、学童クラブ8、民間学童クラブ1)などで2桁増収となり、保育士の待遇改善などを吸収して大幅増益だった。売上総利益は26.4%増加し、売上総利益率は14.2%で1.0ポイント上昇した。販管費は3.6%増加にとどまり、販管費比率は10.5%で1.4ポイント低下した。営業外では補助金収入が増加した。

■18年3月期営業微減益予想、純利益は減損損失減少して増益予想

 今期(18年3月期)の連結業績予想(5月9日公表、伸び率は8月4日の過年度決算訂正に伴って修正)は、売上高が前期(17年3月期)比14.6%増の261億25百万円、営業利益が1.0%減の11億57百万円、経常利益が3.7%増の14億円、純利益が17.6%増の7億77百万円としている。配当予想は年間3円(期末一括)としている。前期比50銭増配で予想配当性向は32.4%となる。

 新規施設開設で増収だが、保育士の待遇改善、システム投資負担、新規事業への先行投資などで営業微減益予想である。新規施設は認可保育園11園、学童クラブ8施設、民間学童クラブ1施設、合計20園・施設の計画である。経常利益は補助金収入の増加、純利益は減損損失の減少が寄与して増益予想である。

■待機児童解消政策が追い風の事業環境に変化なく、中期的に収益拡大期待

 都市部を中心に保育サービスの需要は高水準であり、待機児童解消に向けて保育士待遇改善、保育所運営補助金拡大、各種規制緩和などの政策が進展する見込みだ。国や東京都の待機児童解消政策が追い風となる事業環境に変化はなく、中期的に収益拡大が期待される。

■株価は調整一巡してモミ合い上放れ期待

 株価はやや上値が重く280円~300円近辺でモミ合う形だ。ただし煮詰まり感も強めている。

 8月25日の終値295円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS9円25銭で算出)は32倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間配当3円で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS84円52銭で算出)は3.5倍近辺である。時価総額は約259億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺でモミ合う形だが、調整一巡して上放れの展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

 

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