【インタビュー】パシフィックネットの上田満弘社長に聞く

「フロー型」から「ストック型」へ収益構造を大きく転換

法人向けに、IT機器の調達・導入、運用・保守、引取・回収・データ消去、リユース・リサイクルをワンストップで提供する「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」を積極展開

 パシフィックネット<3021>(東2)といえば「IT機器の引取・回収・データ消去・リユース」大手とのイメージが強いが、近年は大きく事業転換を図り、IT機器の「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」を積極的に推進している。法人のPCやタブレット、モバイル等IT機器にかかわるサービスを、調達・導入、キッティング(事前設定)、ネットワーク構築や運用・保守までを行い、入れ替え時期が来た際には使用済み機器の引取・回収・データ消去・消去証明書発行、そしてリユース・リサイクルと、その全てをワンストップ行っている。この一連の業務を一貫して提供する事業者はほとんどなく、企業・団体からの反響は予想を超え増えているという。収益的にも引取・回収・データ消去やリユース中心の「フロー型」から長期レンタル型の調達、キッティング、運用・保守を中心とした「ストック型」への大転換が進んでいる。「また、グループ企業で進めている法人向け総合通信事業も手応え十分」と語る同社・上田満弘社長(=顔写真=)に当面の展望を聞いた。

調達・導入から回収・データ消去、リユースまでをトータルで提供できる企業は比類なく、顧客の評価も高い

【上田】 当社の現在の事業構成は、大きく分けて、いわゆる使用済みIT機器の引取・回収~データ消去、リユース販売といったフロー収益事業と、新品IT機器のレンタルから始まる調達・導入~運用・保守という、ストック型事業の2つのセグメントになる。これを、前期からストック収益型の事業の方に大きく比重を移していこうと取り組んでいる。

 企業のIT機器の運用管理を担当している情報システム部門、いわゆる情シスの平均的人数は全社員数の1%以下と言われており、中堅・中小企業の場合は1名~数名で全ての関連業務にあたっている。その方たちの作業負荷をアウトソーシングで低減し、本来業務に専念していただくためのサービスこそが今、非常に望まれる時代になってきた。

 レンタル型の調達といっても、単純に機器を貸し出すだけではなく、お使いになる方のデスクにPCが設置されたら即座に使える状態にして納入している。キッティングと言いますが、個社毎に指定のOSや必要なソフトウェアをインストール、基幹システムやネットワーク環境等に合わせた個別設定などの作業も代行し、電源さえ入れれば、すぐに使える状態でお納めする。これは付加価値が高いサービスだと評価して下さるお客様が多い。さらに導入後は、故障時のセンドバック対応や、ヘルプデスク代行、セキュリティ対策などの運用・保守サービスにも対応しているので、これらも合わせてご提案している。そして、入れ替えで不要になった機器は当社で引き取り回収する。個人情報や企業機密のデータ漏洩は絶対にあってはならないので、当社で完全に消去し、最後はリユース・リサイクルまで一気通貫でお受けしている。このように、情シスの皆様の業務効率化に大きく役立っていて、その結果、企業のIT戦略推進の支援につながっていると自負している。

 これらをまるっと全てトータルで自社完結し提供できる事業者は他にはほとんどない。導入から運用・保守だけを行う会社は多いが、引取・回収・データ消去、さらにはリユース・リサイクルとなると、ほとんど見当たらない。回収だけ、リサイクルだけ、などと何段階かに分かれており、社数が多く細分化されている。このようにワンストップで提供できるのは、現段階では特に上場企業では当社だけだろう。これらの業務を一社完結で行うので、途中で別の業者に機器を移動することもないため、情報漏洩対策上も非常に安心で、かつ競合優位性も高い。

 このように当社は、できるだけお客様の立場に寄り添った形でこうしたIT機器の「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」(=図表=)を戦略的に展開していく。

これまでは環境変化による影響が大きく「ストック型」に戦略転換

【上田】 これまでの事業特性はというと、環境の変化による影響が大きかった。「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」(=図表=)の流れの中でいうと、(3)の引取・回収、データ消去、(4)のリユース・リサイクルがこれまで当社のビジネスの中心となっていた。ただ、この部分はWindowsのサポート終了による入れ替えやその反動減、景気低迷による機器の購入鈍化とそれによる排出(引取・回収の対象)減など、市場環境に非常に左右されやすい面がある。

 たとえば「Windows XP」のサポート終了が2014年にあり、このとき大量にPCの入れ替えが発生し回収量も大きく増えたのだが、この反動によって翌年以降、回収量がガクッと減り、それが業績に大きく影を落とすことになった。環境の変化が大きく、それによって売り上げも大きく左右される状態だった。

 このため当社では、環境がどんなに変化しようが、安定して成長いていくためには何をすべきかということを突き詰めて考えた結果、フロー型事業に偏ることのない、この「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」、つまりIT機器の調達・導入、運用・保守から引取・回収・データ消去、そしてリユース・リサイクルまでをワンストップで提供する事業展開にシフトした。

 環境の変化という点では、今年2017年に入って新品のPCの出荷台数は増えてきており、事業環境は回復に向かう方向性は見えてきている。入れ替え台数の増加は半年ほどタイムラグがあるので、回収という形で実際に当社売り上げに寄与してくるのは今年の秋以降ではないかと見ている。

 さらに、2020年1月の「Windows7」サポート終了を控え、企業のPC入れ替えがすでに始まり、それまでに多くの企業が「Windows10」へ移行する予定だ。このため、2018年以降出荷台数はさらに伸び、当社の回収台数も増えると予測できるが、その後に再び反動減が来るのは間違いない。このため、今から「Windows10」移行後の反動減を予測しつつ、「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」のうち、(1)調達・導入、(2)運用・保守を中心としたストック型事業に大きく舵を切り、環境の変化に負けない体質作りをしなければならない。

現在25%前後の「ストック型」を早期に50%以上に

【上田】 今後の事業戦略として大きいのは「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」の展開で、その中でもレンタル型導入を中心としたストック型事業の売り上げ構成比を現在の25%前後から早期に50%以上に持っていきたいと考えている。一方、引取・回収、データ消去、リユース・リサイクル事業はそれほど増やすつもりはない。その分のリソースをストック型事業に再配置していく。人を増やすとコスト増になりますから、人員の再配置という形でストック型事業を拡大していきたい。数年後の売り上げ構成比は大きく変わることになる。

 ただ、大型の事業転換にはやはり先行投資が必要となる。特にレンタルという業態は先行投資が大きくなりがちだ。それで、ここ2年ほどは経費先行の決算になっている。前期(2017年5月期)は、中古PCの在庫を大きく圧縮した。BS(貸借対照表)を見てもらうとわかるが、7億数千万円あった棚卸資産が4億5千万円に、つまり3億円近く落とした。これをさらに落として軽くしていきたいと思っている。

グループ企業による法人向け総合通信事業も軌道に乗る

【上田】 環境の変化に負けない体質作りの2つ目は、当社グループ企業、株式会社2B(トゥービー)の法人向け総合通信事業の拡大だ。当社のLCMサービスとのコラボレーションにより、お客様の評価が高まっている。

 とりわけ現在、企業からの反応がすこぶる良いのは、「クラウドSIM型海外Wi-Fiルーター」レンタルだ。今まで海外出張の際には、ノートPCはもちろん、通信を行うために、海外Wi-Fiルーター(滞在国がまたがる場合、複数台のルーターを持つ場合もある)、携帯電話、モバイルバッテリーと沢山のデバイスを持ち歩かなければならなかったが、これをノートPC以外、1つで済むようにした最新のALL IN ONEタイプの「クラウドSIM型海外Wi-Fiルーター」だ。これは独自の「クラウドSIM」技術によって、これまでのようなSIMカードの抜き差しが不要で、1台でアジア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカなど、世界100ヵ国以上で使用できる。入国するとすぐに、その国の最も通信状態の良い通信キャリアを自動的に選択して接続する。国を移動しても、そのまま設定も変更なく使い続けることができる。モバイルバッテリーとしての機能もあり、さらにはIP電話機能で滞在国内でも日本への通話でも使用することができる。7月からは、海外出張前の多忙さを考えて、これを成田・羽田・関西の各空港で受け取れるサービスも開始した。

 値段も安く設定している。通信料は端末のレンタル料に含まれているので非常に便利でもある。レンタルなので、たとえば通信キャリアのように2年間解約できないといった「縛り」がなく、1年間だけとか、極端な例では短期出張用に1週間だけといった使い方も可能だ。あまり他社にはないサービスである。年度予算で動いていらっしゃるところが多いのでニーズに合致したこの「クラウドSIM型海外Wi-Fiルーター」レンタルサービスは、導入企業が増えている。

 また、同じく「2B」と当社とのコラボレーションで法人向けに展開しているのは、「テレワーク」「モバイルワーク」に最適な「SIM対応ノートPC」と「通信」のセットでのレンタルサービスだ。これから「働き方改革」に対応し「在宅勤務」や「サテライトオフィス勤務」や「モバイルワーク」を導入しようとする企業は、就業規則や評価制度、勤怠管理など導入にあたり様々なルールや決まり事の変更・調整をする必要があるが、ノートPCを購入したり、通信の契約期間に縛りがあるとスモールスタートをしながらの検証が非常にしにくい。この点、当グループの「SIM対応ノートPC」と「通信」のセットであればレンタルなので、検証期間を設定し小さくスタートすることが可能となる。

 更に本格導入のタイミングでは、より一層セキュリティを強化した通信プランなども提供している。「働き方改革」の動きが拡大するにつれて、当グループの手応えも増々強まっている。

 なお、「2B」の提供する「SIM」は17年8月末までに約2,000回線と順調に拡大している。

成長市場への取り組みとして6月にM&Aのアドバイザリ子会社を設立

【上田】 成長市場への取り組みとして、今年の6月1日付で、M&Aのアドバイザリ子会社「株式会社エムエーピー(MAP)」を設立した。中小企業の経営者の年齢分布を見ると、年々高齢化が進み、引退年齢も同じように上がっており、また少子化もあり、事業承継の問題が社会問題となっている。当社の1万社を超えるお客様の中にも、後継者問題は予想以上に深刻な面がある。こうした中で、MAPがM&Aを含めたアドバイスをさせていただくことよって事業承継のお手伝いができるのではないか、ということだ。事業承継問題へのアプローチは国策にも沿う。

 M&A関連事業は、すでに大手企業が何社かあるにもかかわらず、まだまだ市場が拡大している。当グル―プは、異業種からの参入にはなるが、これまでの1万社を超えるお客様との実績やネットワーク、上場企業経営者などからのご相談などを総合すると、われわれが参入できる余地はいくらでもある。手応えもあり、想定以上に早い段階で軌道に乗る可能性が高い。

 実は、当社は「ラジオNIKKEI」で毎週火曜日と金曜日に「相場の福の神」という上場企業経営者をゲストに呼ぶ番組のスポンサーをしており、この番組を通じて、すでに130社近い上場企業経営者とのネットワークがある。こうした経営者に対してダイレクトに提案ができることも、話が早いというか、M&A関連事業を行う上での強みではないかと考えている。

 この事業が拡大すると、当社自身が必要とする事業を展開する企業を見つけやすくなる点でも大いに役立つ。当社の成長戦略にも寄与する。成長性の高い分野、参入障壁の高い分野で安定的に利益を出せる事業などで、当社もM&Aを戦略的に取り組んでいく方針だ。

 ───ありがとうございました。(聞き手・智田拓)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

最新記事

カテゴリー別記事情報

     

    新着記事

    ピックアップ記事

    1. ■作戦も重要だが、用兵も劣らず大切  いまや決算の季節である。決算は企業の通信簿であり、結…
    2.  気象庁から5月から7月までの3か月予報が発表された。結論から言うと今年の夏は6月から気温が高く、蒸…
    3. ■軽量デザイン版も国内で同時に販売予定  楽天<4755>(東1)グループのRakuten Kob…
    2017年11月
    « 10月    
     12345
    6789101112
    13141516171819
    20212223242526
    27282930  
    IRインタビュー 一覧

    協立情報通信の長谷川浩社長に聞く ピクスタの古俣大介社長に聞く メディカル・データ・ビジョンの岩崎博之社長に聞く JPホールディングスの荻田和宏社長に経営への取組みを聞く アイビーシーの加藤裕之社長に聞く 翻訳センターの東郁男社長に聞く イワキの岩城慶太郎副社長に聞く ヨシムラ・フード・ホールディングスの吉村元久社長に聞く ヨコレイの西山敏彦社長に展望を聞く 平山の平山善一社長に近況と展望を聞く アンジェス MGの山田 英社長に聞く CRI・ミドルウェアの押見正雄社長に聞く セキドの関戸正実社長に現況を聞く アルコニックスの正木英逸社長に聞く 京写の児嶋一登社長に聞く トレックス・セミコンダクターの藤阪知之社長に聞く イーグランドの代表取締役社長江口久氏に聞く ミロク情報サービスの是枝周樹社長に聞く 日本マニュファクチャリングサービスの小野文明社長に聞く 日本エム・ディ・エムの大川正男社長に聞く 建設技術研究所の村田和夫社長に聞く 東京個別指導学院の的場一成社長に聞く ビューティガレージの野村秀輝社長に聞く サンコーテクノの洞下英人社長に聞く

    アーカイブ

    「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
    また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
    ページ上部へ戻る