アイリッジは調整一巡して反発期待、18年7月期大幅増収増益予想で上振れ余地

 アイリッジ<3917>(東マ)は、スマホ向けO2Oソリューション事業を展開し、電子地域通貨などFinTechソリューションも推進している。popinfo利用ユーザー数が増加基調で、18年7月期も大幅増収増益予想である。さらに上振れ余地がありそうだ。株価は水準を切り下げたが、調整一巡し、中期成長力を評価して反発が期待される。なお9月27日~10月3日の間に立会外分売を予定している。

■O2Oソリューション事業を展開

 自社開発O2Oソリューション(組み込み型プログラム)である位置情報連動型プッシュ通知ASPのpopinfo(ポップインフォ)提供から、popinfo搭載O2Oアプリ企画・開発、集客・販促を中心としたO2Oマーケティング企画・運用支援まで、企業のO2Oマーケティングを支援するO2Oソリューション事業を包括的に展開している。

 popinfoは企業や店舗のスマホアプリに組み込み、アプリユーザーのスマホ待ち受け画面に伝えたい商品・イベント・クーポンなどの情報やメッセージを、プッシュ通知によって配信できるO2Oソリューションである。位置情報・属性情報・時間を組み合わせて指定した場所・人・時間帯で配信が可能なため、実店舗への誘導・集客や販売促進に高い効果を発揮する。

 収益はアプリ利用ユーザー数に応じた従量課金型の月額報酬(popinfoサービスのライセンス収入)、およびアプリ開発・コンサル等(popinfoを組み込んだO2Oアプリ開発に係る収入、O2O促進マーケティングに係る収入)である。導入企業数増加と利用ユーザー数増加に伴って収益が積み上がるストック型ビジネスモデルだ。

 なお現在はアプリ開発・コンサル等の売上高構成比が高いため、多くの取引先の決算月(3月)を含む第3四半期の構成比が高い特性がある。ただしpopinfo利用ユーザー数が増加基調であり、今後はストック型収益の月額報酬の構成比上昇が期待される。

■導入アプリ数・利用ユーザー数は増加基調

 O2Oマーケティングやオムニチャネル化の進展も背景として、popinfo導入アプリ数およびアプリ利用ユーザー数とも増加基調である。GU、三井ショッピングパーク、三菱東京UFJ銀行、三井住友カード、阪急阪神、東急電鉄、トリンプ、朝日新聞社など、業種を問わず大企業のアプリ中心に採用され、当社の第3位株主であるNTTデータ<9613>経由の導入も増加している。O2Oソリューションを包括的に展開していることが強みだ。

 16年9月にはファミリーマートの公式アプリ「ファミリーマートアプリ」および「Famiポートアプリ」開発を支援、17年4月にはJA全農の公式アプリ「JA全農」バージョンアップの開発を支援、東急電鉄「東急線アプリ」バージョンアップの開発を支援した。また17年8月にはNTTデータと共同で日本フットサルリーグ「フウガドールすみだ」の公式アプリを開発支援し、地域活性化に向けた実証試験を開始した。

 09年サービス開始したpopinfoの利用ユーザー数(プッシュ通知配信に同意したユーザー数、アプリごとにカウント)は14年1月1000万突破、15年3月2000万突破、16年1月3000万突破、16年5月4000万突破、16年11月5000万突破、17年4月6000万突破、そして17年6月6500万突破と増加基調である。

■新規事業・サービスへの取り組み強化

 中期成長戦略として、O2O事業の進化(より効果の高いスマートフォン・マーケティングの提供)、新規事業・サービスへの取り組み(継続した新規事業・サービスの創出・育成・収益化)、組織力向上(積極的な採用活動と経営基盤の強化)、成長を加速するための積極的なM&Aの検討に取り組んでいる。

 アライアンスでは、15年12月テックビューロと業務提携している。popinfoとテックビューロのプライベート・ブロックチェーン技術「mijin」を組み合わせて、FinTechとO2Oの融合を推進する。

 16年3月にはNTTドコモのO2O戦略子会社であるロケーションバリューと業務提携している。国内最大級のO2O連携である。また16年3月にはクレディセゾン<8253>が当社株式を追加取得し、当社、クレディセゾンおよびデジタルガレージ<4819>との3社連携を強化した。FinTechソリューションの共同開発を推進する。

 新規事業・サービス関連では、17年5月に飛騨信用組合と共同で、スマートフォンアプリを活用した電子地域通貨プラットフォーム「さるぼぼコイン」の実証実験を開始した。金融機関による地域通貨の電子化は業界初となる。そして17年11月から商用化開始予定である。

 17年7月には、電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy(マネーイージー)」の技術をベースとして、企業内電子通貨「オフィスコイン」の提供開始を発表した。

 またユーザーの位置や行動履歴に基づいた最適な広告配信を提供するため、17年2月popinfoとサイバーエージェントの「AIR TRACK」の機能を連携し、17年8月にはpopinfo位置情報を活用した行動解析ソリューション「ジオリーチ」として第1号案件がスタートした。

■17年7月期は計画超の大幅増益

 17年7月期の非連結業績は、売上高が16年7月期比21.4%増の14億93百万円、営業利益が54.0%増の2億10百万円、経常利益が53.9%増の2億11百万円、純利益が64.4%増の1億51百万円だった。

 売上高は、案件の大型化に伴って開発期間が長期化し、翌期に持ち越された案件が発生したため計画をやや下回ったが、各利益は計画超の大幅増益だった。月額報酬、アプリ開発・コンサル等とも順調に推移し、増収効果や内製化進展による原価率改善も寄与した。

 売上総利益は23.9%増加し、売上総利益率は38.1%で0.8ポイント上昇した。開発の内製化進展で原価人件費比率が上昇したが、外注費比率が大幅に低下した。販管費は11.1%増加したが、販管費比率は23.9%で2.2ポイント低下した。人件費などの増加を増収効果で吸収した。17年7月末の従業員数は66名で16年7月期末比7名増加した。ROEは15.6%で4.7ポイント上昇、自己資本比率は79.7%で1.7ポイント低下した。

 サービス別売上高は月額報酬が63.9%増の4億84百万円、アプリ開発・コンサル等が7.9%増の10億08百万円だった。月額報酬の売上構成比は32.5%で8.4ポイント上昇した。月額報酬の17年7月末popinfo利用ユーザー数は6769万で、16年7月末の4500万に対して2269万増加した。アプリ開発・コンサルでは大型案件も寄与した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期3億75百万円、第2四半期2億68百万円、第3四半期4億62百万円、第4四半期3億87百万円、営業利益は65百万円、9百万円、84百万円、50百万円だった。第1四半期は大型のアプリ開発案件が寄与した。

■18年7月期も大幅増収増益予想

 今期(18年7月期)非連結業績予想(9月8日公表)は、売上高が前期(17年7月期)比33.9%増の20億円、営業利益が23.4%増の2億60百万円、経常利益が22.9%増の2億60百万円、純利益が20.1%増の1億82百万円としている。

 売上高の計画は月額報酬が34.0%増の6億50百万円、アプリ開発・コンサル等が33.9%増の13億50百万円としている。月額報酬ではpopinfo利用ユーザー数2000万~2500万ユーザー増加を見込んでいる。

 利益面では、新規事業・サービスへの経営資源の投入、採用活動の強化などで売上高営業利益率の低下を見込んでいるが、保守的な印象が強い。上振れ余地があるだろう。なお採用は22人程度で、18年7月期末の人員は88名の想定としている。

■popinfo利用ユーザー数増加基調でストック型収益拡大期待

 popinfo利用ユーザー数の目標は20年を目途に1億人超としている。顧客層の拡大、ポイントやアプリ決済などサービスラインナップ拡充による単価上昇、開発内製化進展による売上総利益率上昇、そしてpopinfo利用ユーザー数増加に伴うストック型収益(月額報酬)の構成比上昇などで、中期的にも収益拡大基調が期待される。

 配当は無配継続としている。利益配分については成長過程にあるため、人材確保・育成やサービス強化のための投資、営業強化のための広告宣伝は販売促進、その他成長投資に対して迅速に対応することが重要と考え、現在まで配当を実施していない。今後においても当面は成長投資に備えて内部留保の充実を図る方針としている。将来的には利益還元を検討するが、配当実施の可能性および実施時期等については現時点において未定としている。

■株価は調整一巡して反発期待

 9月19日に立会外分売を発表している。分売予定株式数16万5000株、分売予定期間17年9月27日~17年10月3日としている。

 株価(17年5月1日付で株式2分割)は水準を切り下げて9月11日に1940円まで調整したが、その後は切り返しの動きを強めている。調整が一巡したようだ。

 9月22日の終値2022円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想EPS32円89銭で算出)は61倍近辺、実績PBR(前期実績BPS189円64銭で算出)は10.7倍近辺である。時価総額は約112億円である。

 週足チャートで見ると52週移動平均線を割り込んだが、調整一巡し、中期成長力を評価して反発が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■純正ミラーと一体化し、左後方の視界を広げる  カーメイト<7297>(東証スタンダード)は、純正…
  2. ■西洋絵画から浮世絵、漫画まで、多彩な作品を天気と共に鑑賞  映像の企画から制作、映像編集、配信・…
  3. ■カラフルミンツ入りの新商品も発売、空き箱で「キョロガチャ」工作もできる  森永製菓<2201>(…
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. ■投資家注目の適正株価発見ツール  日銀の価格発見機能が不全になる可能性がある中、自己株式取得が新…
  2. ■「売られ過ぎシグナル」を発信の自己株式取得株は浮上余地をアピール  マーケットの現在の投資家心理…
  3. ■銀行株投資の選択肢  多くの銀行株の中から投資対象を選ぶ際には、PBR1倍割れやPER1ケタ台、…
  4. ■銀行と半導体、どちらが市場をリードする?  今週は、週明けから「タカさんチーム」の出番が続きそう…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る