【アナリスト水田雅展の銘柄分析】チムニーは今期増収増益見通しを評価してボックス上放れ期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 大手居酒屋チェーンのチムニー<3178>(東1)の今期(15年12月期)連結業績は増収増益見通しです。外国人旅行客のインバウンド消費も追い風となりそうです。株価は戻り高値圏2100円~2400円近辺でボックス展開の形ですが、煮詰まり感も強めています。今期増収増益見通しを評価してボックス上放れの展開が期待され、14年4月高値2675円が視野に入るでしょう。

 売上高が業界5位規模の大手居酒屋チェーンで、直営店とFC店の飲食事業の他に、受託食堂のコントラクト事業も展開しています。仕入面では子会社の魚鮮水産が愛媛県で漁業権を保有し、13年には新たに2つの買参権を取得しています。

 中期目標として18年1000店舗、売上高1000億円を掲げています。中期成長戦略としては、地域活性化・地産地消の深耕を含めて、漁業などの1次産業、食材加工などの2次産業、店舗で商品を提供する3次産業まで一括管理する「飲食業の6次産業化」確立を目指しています。

 飲食事業は居酒屋業態を直営店とFC店で展開しています。主力の「はなの舞」「さかなや道場」に加えて、軍鶏(しゃも)の「龍馬軍鶏農場」や、新鮮な肉と魚の両方を浜焼きスタイルで楽しむ「豊丸水産」の新規出店、既存店活性化に向けた業態転換も積極推進しています。13年7月には新業態を推進する子会社「めっちゃ魚が好き」を設立しています。また今後の新規出店については、競合店が少なく高ROI(投資収益率)が見込める山陰・山陽エリアや四国エリアへの出店を強化する方針としています。

 コントラクト事業は、居酒屋事業で培った店舗運営ノウハウを活用して、官公庁の施設内を中心に受託食堂を展開しています。14年4月には船橋中央病院(千葉県船橋市)の食堂事業を新規受託しました。さらに16年度の新規受託の準備も進めています。

 2月10日に発表した前期(14年12月期)連結業績は、売上高が465億64百万円(前々期の単体との比較で5.7%増)、営業利益が34億30百万円(同10.7%増)、経常利益が34億82百万円(同8.6%増)、純利益が17億96百万円(同25.5%増)となりました。グループ全体売上高は708億24百万円(同4.6%増)で、既存店売上高は前年比99.4%となりました。

 配当予想については前々期比5円増配の年間25円(第2四半期末10円、期末15円=普通配当10円+創業30周年および東証1部指定記念配当5円)としています。

 新規出店やFC店への食材売上の好調などで増収となり、店舗での販売強化商品の明確化による商品ロス低減や調理技術力向上の効果、国内回帰やメニューミックスによる円安対策の効果などで売上総利益率は0.3ポイント上昇しました。純利益については、機動的な出退店・改装・業態転換などの効果で、除却損や減損損失の減少も寄与しました。

 飲食事業での直営店新規出店29店舗、FC店新規出店3店舗、直営店閉店13店舗、FC店閉店14店舗、直営店からFC店への転換24店舗、FC店から直営店への転換6店舗、コントラクト事業での新規出店3店舗、閉店1店舗で、14年12月末時点の店舗数は直営店407店舗(コントラクト事業の100店舗を含む)とFC店舗300店舗の合計707店舗となりました。この他にグループ店舗が2社合計で27店舗あります。

 今期(15年12月期)連結業績見通し(2月10日公表)は売上高が前期比4.2%増の485億40百万円、営業利益が同4.6%増の35億90百万円、経常利益が同3.9%増の36億20百万円、純利益が同5.8%増の19億円としています。

 グループ全体売上高は同3.5%増の733億30百万円、既存店売上高は前年比99.0%の計画です。また飲食事業の新規出店は直営店35店舗、FC店3店舗、閉店は直営店10店舗、FC店10店舗、直営店からFC店への転換は10店舗の計画です。

 配当予想については、年間23円(第2四半期末11円50銭、期末11円50銭)としています。前期の記念配当5円を含む年間25円との比較では2円減配の形ですが、普通配当ベースでは3円増配となります。

 不採算店閉店、業態転換による既存店活性化、商品ロス低減、調理技術力向上、買参権活用による仕入効率化、仕入価格見直し、メニューミックスなどによる原価低減効果で売上総利益率は上昇基調です。新規出店効果も寄与して好業績が期待されます。

 増加基調の訪日外国人旅行客のインバウンド消費に対応して、日本料理、季節感のメニュー、伝統文化などを複合的に楽しめる店舗空間造りも強化する方針です。親会社となったやまや<9994>とのコラボレーションも今期から本格化するもようであり、中期的に収益拡大基調が期待されます。

 なお月次売上動向(直営店全業態、前年比)を見ると、15年1月は既存店が98.6%、全店が98.4%となりました。既存店売上高は2ヶ月ぶりに前年比マイナスに転じましたが、既存店客単価は6ヶ月連続の前年比プラスと好調を維持しています。

 1月の出店状況は新規出店0店舗、閉店3店舗(直営店2店舗、FC店1店舗)、FC店から直営店への転換1店舗で、1月末時点の合計店舗数は704店舗(直営店405店舗、FC店舗299店舗)となりました。グループ店は新規出店が1店舗で、1月末時点の2社合計店舗数は28店舗となりました。

 株主優待制度については、毎年6月末および12月末時点の株主を対象として実施しています。100株~499株所有株主に対しては「お食事ご優待券500円券×10枚」または当社オリジナル商品、500株以上所有株主に対しては「お食事ご優待券500円券×30枚」または当社オリジナル商品を贈呈(詳細は会社ホームページを参照)します。

 株価の動きを見ると、14年10月以降は戻り高値圏2100円~2400円近辺でボックス展開の形ですが、12月期末の配当・株主優待権利落ちが影響した1月安値2135円から切り返して、ボックスレンジ上限に接近しています。

 2月20日の終値2350円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS100円09銭で算出)は23~24倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間23円で算出)は1.0%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS675円17銭で算出)は3.5倍近辺です。

 週足チャートで見るとサポートラインの26週移動平均線が上向きに転じてきました。ボックス展開に煮詰まり感を強めており、今期増収増益見通しを評価してボックス上放れの展開が期待されます。14年4月高値2675円が視野に入るでしょう。

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