【アナリスト水田雅展の銘柄分析】きちりは15年6月期業績増額の可能性を評価してモミ合い上放れ期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 飲食店チェーン事業と飲食店運営プラットフォーム事業のきちり<3082>(東1)は、第2四半期累計(7月~12月)業績が大幅増収増益となりました。株価は小動きでモミ合う展開ですが煮詰まり感を強めています。自己株式取得、今期(15年6月期)業績増額の可能性、さらに中期成長力を評価して、モミ合い上放れて14年11月の戻り高値815円を目指す展開が期待されます。

 カジュアルダイニング「KICHIRI」や「いしがまやハンバーグ」を主力業態とする直営店の自社ブランド展開事業、および飲食店運営のプラットフォーム提供や他業種企業のブランド・コンテンツ活用のプラットフォームシェアリング(PFS)事業を展開しています。

 前期(14年6月期)末時点の店舗数は70店舗(関西エリア42店舗、関東エリア28店舗)で、新業態開発にも取り組みながら出店余地の大きい首都圏への新規出店戦略を強化しています。14年3月には新業態「igu&peace」を出店しました。

 PFS事業は、当社がITやクラウドを駆使して構築した外食特化型インフラ(購買・物流などのバックヤード機能、会計・労務管理・教育・デザインなどのバックオフィス機能、取引先紹介などのバックアップ機能といった本部機能)を活用する事業です。大別するとブランド・コンテンツ活用型(優れたブランド・コンテンツを持つ企業と業務提携し、当社のプラットフォームを活用して新しいレストランビジネスを創造する)、およびクラウドサービス展開型(当社が構築した外食特化型インフラを他の飲食店チェーンなどに提供してアウトソーシング受託する)を展開しています。

 ブランド・コンテンツ活用型では独自性ある新業態が開発できる、クラウドサービス展開型では参画企業・店舗数の増加に伴ってスケールメリットが得られるという特徴があります。ブランド・コンテンツ活用型では13年2月精米機トップメーカーで「ギャバライス」ブランドのサタケ、13年4月イタリアのバッグブランド「オロビアンコ」、13年5月福岡県「はかた地どり」生産者の農業組合法人福栄組合と業務提携しました。

 15年1月にはPFS事業の一環として、健康長寿県として注目されている長野県との間で、食を通じた健康長寿発信の推進に関して戦略的連携協定を締結しました。長野県の食材の魅力と健康長寿のライフスタイルと食文化を広く発信することを目的に、協業の第一弾としてJR長野駅に直結した駅ビル「MIDORI長野」内に「長野県長寿食堂」をオープン(15年3月)します。

 2月6日に発表した今期(15年6月期)第2四半期累計(7月~12月)の業績(非連結)は、売上高が前年同期比4.5%増の35億88百万円、営業利益が同32.4%増の2億91百万円、経常利益が同18.9%増の2億84百万円、純利益が同21.5%増の1億72百万円となりました。

 自社ブランド展開事業は、ブランド認知度向上効果などで既存店売上高が前年比100.8%と好調に推移し、3店舗の新規出店も寄与しました。PFS事業も順調に拡大しているようです。増収効果や効率化効果で大幅増益となりました。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)17億03百万円、第2四半期(10月~12月)18億85百万円、営業利益は第1四半期1億04百万円、第2四半期1億87百万円です。売上高、営業利益とも拡大基調です。

 通期の業績(非連結)見通しは前回予想(8月8日公表)を据え置いて売上高が前期比8.5%増の75億円、営業利益が同45.7%増の7億円、経常利益が同35.8%増の7億円、純利益が同41.9%増の4億20百万円としています。配当予想は前期から記念配当2円50銭を落として年間7円50銭(期末一括)としています。

 既存店売上高は98.5%、新規出店は10店舗の計画です。出店戦略において優先的に出店したい立地の物件が確保できる状況のため、前期の新規出店4店舗に比べて大量出店となります。PFS事業ではブランド・コンテンツ活用型で新規3案件を計画し、クラウドサービス展開型の提供店舗数は自社ブランド店舗を含めて前期末の約200店舗から今期末には約300店舗に増加する見込みです。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.8%、営業利益が41.6%、経常利益が40.6%、純利益が41.0%です。ブランド認知度向上効果などで既存店売上高が計画を上回るペースで推移し、下期は5店舗の期中新規出店も寄与します。PFS事業でのブランド・コンテンツ活用型の新規3案件や、クラウドサービス展開型の拡大も寄与することを考慮すれば、通期業績見通しに増額の可能性があるでしょう。

 月次レポート(前年同月比、速報値)を見ると、15年1月の売上高は既存店(対象68店舗)が98.5%、全店(対象71店舗)が103.5%となりました。既存店売上高は14年7月以来6ヶ月ぶりの前年比マイナスとなりましたが、客数は6ヶ月連続の前年比プラスと好調を維持しています。

 中長期ビジョンでは、自社ブランド展開事業およびPFS事業を2本柱として展開し、目標値として18年6月期売上高100億円、営業利益15億円、経常利益16億円、純利益10億円、配当性向30%(当面は20%)を掲げています。事業別には自社ブランド展開事業が100店舗で売上高94億円、PFS事業が契約店舗数500店舗(契約売上規模300億円)で営業利益6億円を目標としています。

 自社ブランド展開事業の新規出店加速に加えて、15年は長野県との戦略的連携協定を皮切りに、PFS事業における連携も加速するようです。中期的に収益拡大基調が期待されます。

 なお14年9月に発表した自己株式取得(取得株式総数の上限15万株、取得価額総額の上限1億円、取得期間14年9月8日~15年3月31日)については、1月31日時点の累計で取得株式総数7万2600株、取得価額総額4831万9700円となっています。

 株主優待制度については毎年12月31日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として実施しています。優待内容は14年12月31日現在の対象株主から「当社運営店舗で利用できる優待券3000円分、または近隣に店舗がない等の理由で優待券を利用しない方は当社事業における関連商品を選択できる」としました。

 株価の動きを見ると、14年11月の戻り高値815円から反落後は小動きとなり、1月中旬以降は概ね700円近辺でモミ合う展開です。ただし煮詰まり感を強めています。

 2月24日の終値700円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS41円44銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間7円50銭で算出)は1.1%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS157円27銭で算出)は4.5倍近辺です。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返しの動きを強めています。サポートラインを確認した形です。自己株式取得、今期業績増額の可能性、さらに中期成長力を評価して、モミ合い上放れて14年11月の戻り高値815円を目指す展開が期待されます。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■金先物と原油価格、史上最高値に迫る―地政学リスクが市場に与える影響  今週のコラムは、異例中の異…
  2. ■「虎」と「狼」の挟撃を振り切り地政学リスク関連株で「ピンチはチャンス」に再度トライ  東京市場は…
  3. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  4. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る