【アナリスト水田雅展の銘柄分析】星光PMCはモミ合い上放れの動き、15年12月期の収益改善を評価して出直り本格化

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 製紙用薬品の星光PMC<4963>(東1)の株価は、900円近辺で下値固めが完了してモミ合い上放れの動きを強めています。2月27日と3月2日には980円まで上値を伸ばしました。今期(15年12月期)の収益改善を評価して出直りの動きが本格化しそうです。次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)のテーマ性にも変化はないでしょう。

 DIC<4631>の連結子会社で、製紙用薬品事業、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業、および化成品事業(14年4月、興人フィルム&ケミカルズの化成品事業を承継したKJケミカルズを子会社化)を展開しています。

 高付加価値製品の拡販に加えて、中国・東南アジア市場への積極展開、そして次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)、導電性ナノ材料(銀ナノワイヤー)、光学弾性樹脂(OCA)など、成長市場・新分野開拓の戦略を推進しています。

 次世代素材CNFは、すべての植物の植物細胞壁の骨格成分であるセルロースをナノサイズまで細かくほぐすことにより得られる繊維です。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上強く、熱による変形が少ないなどの特徴を持ち、樹脂の補強材として機能させることにより、自動車用樹脂の強度向上や金属部材からの置き換え、家電・モバイル機器の軽量化などでの需要が期待されています。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のCNF開発プロジェクトの中核企業として早期事業化を目指し、13年2月に経済産業省イノベーション拠点立地推進事業に採択されました。14年6月には産官学連携型コンソーシアム「ナノセルロースフォーラム」が設立され、当社を含めて100社以上が参画しました。14年11月には竜ヶ崎工場におけるCNF実証生産設備の建設工事が完了し、本格的な変性CNFサンプルの提供を開始しました。

 銀ナノワイヤーは14年9月からサンプル出荷を本格開始しました。直径がナノサイズ、長さがミクロンサイズの繊維状の銀を溶液中に分散させて透明導電性電極を形成します。ウェアラブル端末や大型ディスプレイへの利用が期待されています。

 2月12日に発表した前期(14年12月期)連結業績は、売上高が239億70百万円、営業利益が3億19百万円、経常利益が5億21百万円、純利益が18百万円の赤字となりました。前々期は13年4月~12月の9ヶ月決算のため単純比較はできませんが、前年同期間(13年1月~12月)との比較では11.5%増収、65.3%営業減益、59.4%経常減益で、純利益は赤字転落の形となりました。配当予想は前々期(9カ月決算で9円)と実質的に同額の年間12円(第2四半期末6円、期末6円)としました。

 KJケミカルズの新規連結が寄与して増収となりましたが、樹脂事業を中心に売上数量が減少して売上高が計画を下回り、原料価格高騰に対する製品価格是正のタイムラグ、減価償却費や研究開発費の増加なども影響して、営業利益が実質的に大幅減益となりました。営業外収益では為替の円安進行に伴う外貨建て資産に係る為替差益、特別利益ではKJケミカルズ子会社化に伴う負ののれん益を計上しましたが、中国事業に係る固定資産減損損失計上も影響して最終赤字となりました。

 ただし四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)53億36百万円、第2四半期(4月~6月)61億68百万円、第3四半期(7月~9月)60億64百万円、第4四半期(10月~12月)64億02百万円で、営業利益は第1四半期1億40百万円、第2四半期17百万円の赤字、第3四半期77百万円、第4四半期1億19百万円です。営業損益は第2四半期をボトムとして改善基調となりました。

 今期(15年12月期)の連結業績見通し(2月12日公表)は、売上高が前期比9.9%増の263億50百万円、営業利益が同3.1倍の10億円、経常利益が同2.0倍の10億60百万円、純利益が8億30百万円(前期は18百万円の赤字)で、配当予想が前期と同額の年間12円(第2四半期末6円、期末6円)としています。

 売上面では需要回復に伴う売上数量の増加、高付加価値商品の拡販、KJケミカルズの通期連結、利益面ではプロダクトミックスの改善、ロジンなど原材料価格上昇に対する製品価格是正のタイムラグ解消、KJケミカルズにおける減価償却費の減少、そして海外事業の収益改善などが寄与して、新規事業開発関連のコスト増加などを吸収する見通しです。なお前提として為替は1米ドル=115円、ナフサ価格は6万3000円としています。

 事業別の計画を見ると、製紙用薬品事業は拡販とコスト削減効果などで売上高が同8.1%増の167億10百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同46.9%増の11億37百万円、樹脂事業は拡販と製品価格是正のタイムラグ解消などで売上高が同3.6%増の61億64百万円、営業利益が同3.2倍の1億98百万円、化成品事業(KJケミカルズ)は減価償却負担減少などで売上高が34億76百万円(前期9ヶ月連結は25億58百万円)、営業利益が1億75百万円(同92百万円の赤字)としています。

 中期経営目標としては18年12月期売上高350億円(既存事業245億円、海外事業70億円、新規事業35億円)、営業利益35億円、売上高営業利益率10%を掲げています。中国における製紙用薬品事業の再構築、東南アジア市場への積極展開、さらに次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)や銀ナノワイヤーの事業化も寄与して中期的な収益拡大が期待されます。

 株価の動きを見ると、900円近辺で下値固めが完了し、水準を切り上げてモミ合いから上放れの動きを強めています。2月27日と3月2日には980円まで上値を伸ばしました。今期収益改善見通しを評価する動きのようです。

 3月2日の終値975円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS27円37銭で算出)は35~36倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.2%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS656円90銭で算出)は1.5倍近辺です。

 週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて、戻りを押さえていた26週移動平均線を突破しました。900円近辺で下値固めが完了してトレンドが好転する形です。今期収益改善を評価して出直りの動きが本格化しそうです。次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)のテーマ性にも変化はないでしょう。

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