「個人投資家受難」相場を分析!その対処法とは?=浅妻昭治

編集長の視点

<マーケットセンサー>

■「中二階」の高配当利回り株には「クジラ」離れの投資スタンスを選択しトライアル余地

 難しい相場である。とくに個人投資家にとっては著しく難しい。前週末6日に日経平均株価は、14年11カ月ぶりの高値をつけ、東証株価指数(TOPIX)も、7年3カ月ぶりの高値まで買い進まれ、買いさえすれば、誰でも大儲けが間違いないにもかかわらずである。これは、極く狭い個人的な観察で恐縮だが、この活況相場でも、浮かない顔をしている顔見知りが多く、株式情報番組でもコメンテーターが、ガンガンの強気を言っているのか、弱気を吐いて警戒警報を発信しているのかはっきりしないことからも明らかである。大袈裟にいえば「個人投資家受難」相場、茶化して「フーテンの寅さん」風に言えば「個人投資家はつらいよ」相場のようである。

 前週末6日の米国市場では、ニューヨーク・ダウ平均株価が、2月の雇用統計が市場予想を上回って改善し、FRB(米連邦準備制度理事会)の早期利上げの環境が整いつつあるとの観測が強まって278ドル安と急反落した。これを受けて今週週明けの東京市場が、どう反応するかとまたまた悩まされ「個人投資家泣かせ」相場が続く心配もある。

 無理もない。この活況相場は、いわゆる「官製相場」だからである。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や共済年金などの「クジラ」投資家は、相場全般がどう波乱展開し、外部環境にいかなる懸念材料が続こうと、運用方針の見直しに沿って株式の組み入れを増やし、日銀も、下値でETF(上場株式投信)を市場買い付けすれば、それで一件落着となる。ところが、個人投資家は、身ゼニを切って自己責任の相場観に基づいて買い出動しようとすると、どうしたってリスク材料が先に目に付く。それでリスクを最小化するために「押し目買い」の徹底を図るが、相場格言通りに「押し目待ちに押し目なし」の相場展開では、そのチャンスさえ到来しない。「クジラ」投資家が下値を買い支えているためで、そうなるともう個人投資家は、「クジラ」に対抗するために、ハシゴを外される覚悟で高値に飛び付き買いを敢行することも避けられず、バブリーでリスキーなことこのうえもない。要するに、個人投資家は、この活況相場に乗れていないのか、買い遅れて高値で買いぶら下がりとなっているのかのどちらかで、だから浮かない顔をしているとにらんでいる。

 個人投資家の「受難相場」の証拠は、今年年初来の相場推移にも表れていて、日経平均株価は、年初から前週末まで8.7%、TOPIXは9.4%それぞれ上昇しているのに対して、個人投資家が中心の市場といわれる東証マザーズは、株価指数が3.8%のマイナスと逆トレンドとなりアンダー・パフォームしている。今週も、前週末の米国株の急落で厄介千万な対応に追われ、この格差はさらに拡大するかもしれない。

 では視点を変えて、「クジラ」を除いた東京市場の正味の実力はどのくらいなのか?現在時点で買いなのか買い見送りなのか、それとも売りなのか大いにリサーチ余地がある。そこでここに参考にしたいのが、東証第2部市場である。東証第2部は、新興市場から東証第1部へグレードアップする際の通過市場、「中二階市場」といわれており、「クジラ」はもとより、外国人投資家の関与もないマーケットである。このため、新興市場の人気株が、東証2部に市場変更されたとたんに輝きを失って失速し一種、冬眠状態に入ってしまうケースも少なくない。このため市場全体が、投資バリュー面からも割安に放置され、PERでは東証第1部全銘柄平均の17.97倍に対して16.04倍、PBRでは同じく1.50倍に対して1.00倍、配当利回りも1.45%に対して1.59%と格差が拡大している。また、昨年大納会から前週末高値までの上昇率も、日経平均株価の8.76%、TOPIXの9.47%に対して3.78%と三分の1から半分程度にとどまっている。この格差分がすべて「クジラ」効果というわけでもないだろうが、そうした需給要因を除いた正味として、日本株はなお割安であると結論されておかしくないはずだ。

 もちろん東証2部株には流動性に問題が多い銘柄があり、買いに行くと30円も上で買わされ、売りに行くと30円も下で売らされるケースもないではない。しかし、「クジラ」とがっぷり四つに取り組むデスマッチに辟易している投資家は、まったく別の「クジラ」離れの投資スタンスで東証2部株への買いも一考余地が出てくることになる。当面の注目株としては、折からの3月期決算会社の期末接近を前に、3月期決算会社で年間配当利回りが市場平均を上回り、PER・PBRとも市場平均を下回る銘柄にアプローチしたい。(本紙編集長・浅妻昭治)

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